▽灰牙×メイ





(灰牙×メイ)






「どこ行くの?」

背後から声を掛けられて、灰牙はゆっくりと振り返った。
声の主は予想通りメイで、まだ闇に目が慣れないのだろう、目を細めながら此方へと歩いてくる。

「……散歩に」
「最近いつもだ」

どこか咎める口調に聴こえるのは、おそらく気のせいではないのだろう。
しかし、盗み見た表情は寧ろ笑んでいるようにも見えて、またわからなくなる。
空を飛ぶ者にしては珍しく、彼はそれ程暗闇が苦では無いようであった。
しかし、元が夜行性の灰牙たちに比べれば、歩く足元はやはり頼りない。
その歩調に合わせて隣を歩きながら、灰牙は静かに空を見上げた。月は、丸い。

「月が明るくて落ち着かないんだ」
「何かそれ、銀も云ってたね」
「あいつは夜に落ち着いてたことがないだろう」
「それはそうだ」

そう云って小さく笑いながら、彼がまた言葉を紡ぐ。

「落ち着かないからって、適当な女の子に手ぇ出しちゃだめだよ」
「……」

お前がそれを云うのか、と、云ってやりたくなる気持ちを抑えて、灰牙は大きく溜め息を吐いた。
おそらくはその心中を察したのだろう。何がおかしいのかわからないが、隣で彼はまた笑ったようだった。











2007/09/03

灰牙とメイ。突発