▽メイと銀





(メイ・銀)





一体、なぜそんな話になったのかわからない。
最近ユキと共に過ごすことの多い自分を銀がからかいにきたことが始まりではあったが、自ら過去を明かそうとしない(否、本人は覚えていないのだと言い張っている)彼のことだから、まさかちゃんとした答えが返ってくるとは思わなかったのだ。

「じゃあ結局、いつも一夜限りのお遊びだったってわけ?もう何百年も?」
「さりげなく後半を強調しないでくれないかな。だいたい、そんなに何年も同じ相手と一緒にいるなんて面倒だと思わない?それに……」
「それに?」

聴き返すと彼は一瞬口籠もった後、君もそのうちわかるよ、と云って目だけで笑った。


「でもまぁ、一人だけ後から連絡をくれたやつがいたよ」

子どもが生まれたからと祝いの品をせびられたのだ、と、彼は遠く懐かしむような目をしてそう云った。
その表情が彼には珍しい穏やかな優しさを孕んでいる気がして、メイは思わず何度か瞳を瞬かせた。

「その子に会いたいとは思わなかったの?」
「さぁ、どうだったかな。もう随分と昔のことだから」

そんなものか、と思っていると、あぁ、と思い出したかのように再び彼が口を開く。

「一度だけ、彼女の孫だっていう娘が会いに来たことがあるね。……けど、それだけだ」
「祖母の恨みでもはらしにきたの?」
「……メイ、君とは少し話し合う必要がありそうだね」

それだけだ、と瞼を伏せる様子には、それ以上の詮索を拒む意思が見て取れた。
気にならない、と云えば嘘になるが、それでも無理に聴き出そうとするほど子どもでもない。
結局は常の軽口で受け流してやる自分を心の中で誉めてやりながら、肩を竦めて云い放つ。

「どうせなら、僕が“あまごい”覚えてからにしてね」







2007/07/19

メイと銀。二人は仲良し(たぶn