▽トウトウ





(トウヤ×トウコ)




ライモンシティの東に位置する遊園地は、常とは少しばかり変わった空気を漂わせていた。
至るところに飾られた南瓜に、黒地に紫の映える鮮やかな旗が翻る。
客が思い思いの仮装を身に纏っていることも相俟って、園内はいつも以上に非日常的な空間と化していた。

「思ったより混んでるなぁ、」

と、誰にともなくそう呟いて、トウヤは傍らのシャンデラを見た。
悪タイプ・ゴーストタイプのポケモンを連れているトレーナーは入場料が半額、というこの期間限定のサービスのせいで、客の多くがポケモン連れなのは見ていて楽しいが、どうやらシャンデラにとっては同族の存在よりも装飾の方が気になるらしい。
シャンデラの姿を模した南瓜のレプリカを興味津々に眺めるパートナーに、思わず頬を緩める。

「トウヤくーん!こっちこっち!」

名前を呼ばれて顔を上げると、待ち合わせの相手が大きく手を振っていた。
傍らには、最近彼女の仲間になったばかりのモノズの姿が見える。

「シャンデラ、トウコさんたちいたよ」

未だ南瓜と顔を突き合わせているシャンデラに声を掛けると、モノズの姿を確認した後、絡めていた腕をするりと離していそいそとそちらへと動き出した。
それを追うように、トウヤも待ち人のもとへと歩き出す。

「今日観覧車の向こうのステージでバトル大会やってるんだって!トウヤくんも出ようよ!」

開口一番、目を輝かせながらの誘いに押されるように頷きながら、行事など目に入っていない相変わらずの彼女に小さく笑う。そのまま足元に視線をやると、モノズが訴えるように此方を見上げていた。

「トウコさん、帽子落としてるよ」
「え?」

そう云ってモノズがくわえていた帽子を受け取って渡すと、彼女は気まずそうな様子でトウヤとモノズにそれぞれ礼を云った。
シャンデラは、ハロウィンの装飾など忘れたようにモノズとトウコの周りを飛び回っている。
鮮やかに彩られた空間の中でそんな光景だけがいつも通りで、相変わらずだなぁ、と思わず笑みがこぼれた。











遅ればせハロウィン。
ネタの一部は友人からいただきましたごち!

(111104)