▽ゲンとヒョタ(※トウ←ゲン) (ゲンとヒョタ※トウ←ゲン) 思えば昔から、目の前の彼は、答えにくい質問をよくする子供だった。 礼儀正しい口調で、戸惑い気味に。 それは、今も変わらない。 「ゲンさんは…、その、父のことが……」 好きなんですか、と、躊躇いがちに紡がれた言葉に、問われたゲンは何も云わずに微笑んで見せた。 どんな表情をするかと窺えば、そこには困ったように眉尻を下げて、泣きそうに歪む表情があって。 ――あぁ、そういえば彼もあの時、こんな表情をしていた。 いっそ裏切りとも呼べる親友の突然の告白に、優しい瞳と優しい声を、精一杯に歪ませて……。 「それでも、僕は貴方が、」 (それでも、俺はお前が、) 「父の傍に居てくれることを、」 (俺の傍に居てくれて、) 「とても、嬉しく思います」 (……嬉しく思うよ) いつかの彼と同じ優しさに瞼が熱をもったけれど、とうの昔に枯れ果てた涙は零れ落ちるはずもなく、ありがとうと微笑むことしかできやしなかった。 (残酷なまでの優しさなど、似る必要はなかったのに) 罪、亡ぼし *** まさかのトウ←ゲン。しかしながらゲンとヒョウタ。 悲恋が好きで何が悪いー。 トウガンは優しき愛妻家と信じてやまない。 091218 |