▽鉄×響(企画)





(鉄×響)
※鳩受け企画




「なぁにガキたらしこんでんだよ、」

小さな背中が見えなくなると、今度は存分に愉快がる色を含んだ声が上から降ってきた。
それが誰かなど見なくともわかる。

「変な云い方しないでくれる、」
「ちゅーされてたくせに」

眉を顰めながら振り返れば、そこには予想通り、大きな翼を広げた鉄の姿。
面白いものを見たとでも云うように笑んだ口許は、もともと良いとは云い難い目つきと相まって、獲物を見つけた悪役さながら……否、今の状況では悪役そのものか。

「しっかし、あいつはやっぱアレの息子だよな……」
「子は親に似る、ってやつかぁ」

誰も口にこそ出さないが、ユキの父親の正体については、皆が知ることであった。
それでなくとも、育ての親が彼であることには変わりない。

「で、何であーなった」

上がる口許を隠そうともせずに尋ねてくる鉄に、響は眉を顰めたまま己の右脚を指してみせた。
そこに残る僅かな腫れに、目の前の彼があからさまに顔をしかめる。

「次は守ってくれるんだって、」
「ったく、飛ぶのだって危なっかしいくせに何云ってんだか。っつーかお前もしっかりしろよ」

油断してんな、と顔をしかめたまま云い放って、鉄は大袈裟なため息をついた。
確かに油断したことは否めないが、こうも責められれば此方とて面白くはない。

「まぁ守ってやるなんて台詞、鉄には一生云えそうにないよね」

言外に、同族とは云え全く違うと非難してやれば、予想通り、機嫌を損ねて眉根を寄せる。

「何だよ、守ってほしいわけ」
「そうは云ってない」
「じゃあ何だよ、」
「少しは見習えば、って話」
「わけわかんねぇ」

突き放すようにそう云って、鉄は一つ息をついた。
そして、真っ直ぐに此方を見て云い放つ。

「云っとくけどな、俺はお前を守る気は無いし、勿論守られる気も更々無い」

此方とてそのつもりだ、と云い返そうとして開いた口は、彼が言葉を続けたことにより閉じることになった。

「だいたいな、俺はお前を認めてんだ。背中預ける奴に守るだなんて云うかよ」


「……え、」


思いも寄らぬ台詞についまじまじと彼の瞳を見返せば、舌打ちとともに目を逸らされる。
もう行く、と呟いて地面を蹴るのに我に返って、慌てて自分も翼を広げた。

遠ざかる背中はかつて出会った頃より遥かに大きいが、その分見失うことはない。
スピードだけなら此方が上だ、決して追いつけない距離ではないだろう。

「鉄!」

ずっと隣にあったその名を呼んで、思い切り地面を蹴って風を捕らえた。


空が近い。






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鳩総受け企画その三。
管理人の裏の大本命です。
親友以上恋人以下とかたまらないよね!未満じゃないよ!以下なんだよ!
この2羽の出会い話はフィクションじゃなくちゃんと書きたいですうん。


20100810