▽ユキ×響(企画)





(ユキ×響)
※鳩受け企画




「……だいじょぶ?」

背後から聞こえた声に顔を上げれば、幼い雀が此方の手元を覗き込んでいた。
視線の先には、先程の闘いで負傷した響の脚がある。

「大丈夫だよ、たいしたことないから」

運悪く火傷を負ったせいで腫れてこそいるが、痛みはそれ程ひどくはない。
明日になれば治るだろうとは思ったものの、念のため川の水で冷やしているところであった。

「ほんとに、」
「本当だよ」

そう云って笑ってみせれば、ユキはほっとしたような表情を見せた後、徐に響の隣へと座り込んだ。
まだ何か用事かと様子を伺えば、膝を両腕で抱え込んで、何をするでもなく丸くなっている。

「ユキ? どうかした?」

問い掛けても首を振るばかりで、特に用があるわけではないらしい。
正直なところを云えば、響は子どもの相手が得意ではなかった。
特に話題も見つからず、暫し無言の時間が流れる。
沈黙に耐え切れなくなった響が、どうこの場から逃げ出そうかと考え始めた時、ふと、傍らのユキが動いた。

「こんどは、」

するりと手を取られて思わず身を引きそうになったが、寸前でどうにかそれを抑え込んだ。
相手は幼子だ、突然のことで驚いたが、彼にとって誰かと手を繋ぐことは当たり前のことなのだ。
そのはずなのだが。

「ぼくが、響を守るからね」

するに任せた響の左手を、小さな両手で大切そうに包みこんで、幼子は意外なほどの強さでそう云い切った。
思わぬ台詞に思考が止まる。
止まった思考をまた動かしたのは、手の甲に触れた微かな温もりと、可愛らしい小さなリップ音であった。

「やくそく、」
「え? あ、うん」

未だ混乱しつつも頷いた響に満足したのか、ユキはにこりと笑って立ち上がった。
そのまま響に背を向けて、とたとたと走り去る。


「……何なんだよ、もう」

だんだんと小さくなっていく後ろ姿に、思わず赤くなった頬を押さえて呟いた。







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鳩総受け企画その二。
まさかのユキ×響。
ユキの将来は天然のたらし(王子系)でFAです。
いらんとこだけ父親に似ました。厄介です。


20100810