W


※二万打
※捏造前世


神代凌牙の隣にいた女、名前を一目見て俺は雷に打たれたかのようだった。あの髪、手足、そして顔。紛れもない、俺がずっと探していた女性だった。
俺と名前ははるか昔(前世と言った方が良いだろうか)愛を誓い合った仲だった。俺は彼女の全てを愛していた。それは名前もだった。穏やかな幸せな日々だった。だがその幸せは唐突に終わりを告げた。
犯人は逃げられた為に解らなかった。おびただしい量の血液は止まることなく溢れだし、命が助からないのは明白だった。そしてその灯火が消える間際に名前は美しく微笑みながらこう言ったのだった。

「来世でも、あなたと、共に」






「そう言ったのはお前だ!なのになぜ名前は他の男と居るんだ?忘れたわけなんてないだろう?なあ、なんで俺を拒否するんだ?愛しているんだ、名前」
「わ、私が知っているのは極東チャンピオンとしてのWだけです。前世とか知りません!勘違いなんじゃ、ありませんか……!」

俺が一歩距離を詰めると名前が下がる。そのうちにその背中は壁にぶつかった。行き止まりだと気付いた名前の顔色が青くなる。人気の無い路地はじめじめとして昼だというのに日はあまり入ってこない。
壁にぶつかった名前の隣に手を置き逃げられないようにする。肩にかかった髪を手で掬い上げる。

「勘違いな訳ねえ。声も髪型もその綺麗な瞳も全部同じだ、………ほら、俺のことを見ろよ」

顎を掬い逸らしていた目線を無理矢理俺と合わせる。名前の瞳に映る俺の顔は幸せそうに弛んでいるのに対して名前はずっと俺を怯えや戸惑い、軽蔑の目で見る。ああ、苛々してきた。

「いい加減に、離して……!そんな話信じるわけ無いでしょう!」
「何故だ?なんで俺を拒否する!……そうか。あいつのせいだな。凌牙のやつが名前を惑わしてやがるのか。ふざけやがって。あいつをぶちのめして名前の目を覚まさせてやらねーと」
「っ!何を、するの……!」
「何、心配するな。俺と名前の間を裂いた邪魔者には相応の罰をやるんだよ」

だから安心して名前は俺の側に居ろよ、と笑ってポケットに入れていた薬品を染み込ませておいたハンカチを名前の鼻と口に当てる。意識を失う前に見た名前の瞳には幸せなど一切無く一筋の涙と憎しみしかなかった。

「やっと、やっと見つけたってのに覚えてないなんて有り得ねえよなあ。でも心配するなよ。俺はお前が覚えていなくても名前のことを愛する気持ちは変わらねえからな。ククッ、愛してるぜ、名前」







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