☆おまけ☆
波乱を乗り越え、本当の意味で亨さんを手に入れたものの。スッキリしない部分がまだ一つ残っていた。
亨さんは「もういい」と言うけど、私はどうしてもそのままに出来なかった。だから、後日私たちの前にあの男を呼び出したのだ。
「おい村雨、きちんとお前の口から亨さんに謝罪しろ。自分の犯した罪、分かってるんだろうな?」
寮監室で亨さんの前に正座させた村雨を、上から見下ろす。悔しげな村雨の表情に思わず舌打ちが出てしまう。
(こいつ、まだ諦めてねぇな…)
私がもう一歩、村雨に近付いたその時だった。
「槙、もういい。おい村雨、お前も本気で好きだったんだよな? あんな事をする程に」
「柳瀬…寮監」
「そうだろ? お前も、槙が好きだったんだろ?」
「「えっ」」
思わず私は村雨と声を合わせてしまう。
「何をしてでも手に入れたい気持ちは分かるけどな、こんな遠回しじゃ、何も伝わらねぇんだぞ?」
「いや、あの…柳瀬寮監…」
「と、亨さんそれは…」
「怒ってねぇから心配すんな? でもな、もう槙は俺のだから次はねぇぞ。次やったら、例え生徒でもぶっ飛ばす」
こんなにストレートに襲われておいて、どうしたらそんな勘違いに発展するのだろうか。ここへ来て初めて村雨を哀れに思った。
「村雨……もう、いいから部屋に戻れ」
そう言って私は、がっくりと項垂れた村雨の肩に手を置いた。
“鈍い”と“天然”は別物だと思っているが、その二つを合わせ持つものはもしかしたら最強なのではないか。
そしてそれは時に、核兵器並みの破壊力を持つのではないか。
『柳瀬亨』と言う人物を愛しつつも、つくづく恐ろしい男だと実感した、
今日このごろ…
END
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