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続・蝶を恋う花【後編】***


「早速、聞いてもいいですか? その、私が誰かと抱き合っていたと言うのは一体…」

 ひとまず吉田は自室へと戻した。何かあったら呼んでね? と、どちらが大人なんだか分からない程に心配をかけたまま。

「今日……保健室で見たんだよ」
「今日って………ぇ、え! もしかして夕方の?」

 槙と目を合わせるのが怖くて、スッと顔を背ける。

「あれは違います! あの子は……私も良く分からないんですけど。具合が悪いと言って来たと思ったら、何やら訳の分からないことを言って休もうとしなくて。元気そうだったので寮へ帰るように言ったら、突然抱きついて来たんです」
「え、でも、保健室に迎えに来いって連絡が」
「え? 私はしていませんよ?」
「あ、槙の声じゃ無かったけどな」
「いや、私の指示無しで連絡は行かないはずなんですが…」


 やられた。


「村雨か」

 電話を取った時点で気付くべきだった。何となく声に違和感を感じたというのに。

「あの野郎、まさかここまでするとは…」
「村雨を知ってんのか?」

 槙に似合わぬ渋い顔に、俺は思わずキョトンとする。

「吉田くんに見張って貰っていたので、亨さんに何かしら纏わり付いているのは知ってました」
「吉田に?」

 思わぬところに吉田の名前が出てきて、頭の中は処理が追いつかない。

「吉田くんが一番亨さんと仲が良かったし、信頼出来ると思って。私の代わりに見ていて貰ってたんです」

 そうだ、そうだった。
 槙の気持ちを疑った理由は、何も今日の出来事だけでは無かったのだ。

「何で、人に頼むんだよ。俺のことを本気だって言うなら、何で自分でやらねぇんだよ!」

 バンッ! と激しい音を立てて揺れるテーブルの上で、先ほどいれたお茶が零れた。
 
「今日だけの事じゃない! 付き合う前は来るなと言っても来た癖に、付き合った途端にここへ来なくなった! 来ても直ぐ帰っちまうし、俺に触ろうともしねぇ…お前、一体何がしたいんだよ!」

 少々恥ずかしいことを口にしている自覚はある。だが、昔から長い時間をかけて一つのことを悩むのは苦手だった。
 それが今回珍しくクヨクヨと悩んだ結果、やはり遠回しはなことは向いていないと思い知ったのだ。
 気になったことは全部ストレートに聞け、だ。

「お前、俺に触りたくねぇの?」
「そんな訳ないでしょ!?」
「だったら何で触んねぇんだよ! キスすらしてこねぇし!」
「キッ、キス!!?」

 何だかさっきまでのシリアスな空気は何処へやら…だんだんと可笑しな喧嘩に発展してきていた。

「確かに私は、亨さんとあまり一緒にいないようにしてました」
「ほらみろ、やっぱり避けてたんじゃねぇかよっ」
「でもそれは、好きだからこそで…」
「はぁ? 意味分かんねぇし」
「理由聞いても、笑わないって、誓います?」
「…何だそれ」

 何だかよく分からないが、理由がちゃんと有るなら聞きたい。笑わないから言ってみろ、と話を促せば、槙の顔色は慌ただしく変わっていた。

 「実は…私……………
 














  童貞なんです」








 ―――は?









「初めはそりゃ、男を恋愛対象として意識してもらうのに必死でしたし、兎に角生徒を牽制することばかり考えてたから過激なことも大丈夫でしたけど、いざ自分の手に入ったとなったら…もう、理性が………いつ襲ってしまうか分からなくて距離を取ったものの、それはそれで不満だし、心配だし、本当どうしたらいいのかサッパリで…」

 ガクリと項垂れて頭を抱える槙に、俺は思わず…

「ぶはぁっ!!」

 吹き出した。

「ちょっ、ちょっと!笑わないって約束したでしょう!?」
「だってお前、その見た目で童貞って! あっはははは!!」

 は、腹が捩れるぅ…。

「あれ? でも生徒たちがお前はバリタチだって言ってたぞ…」
「あぁ、あれは生徒が勝手に流した嘘ですよ。お坊ちゃん達は見栄張りでプライドが高いですから。誘いを断ったことを根に持ったのか、勝手に言いふらしているんですよ。私は童貞です」
「くはっ! そんな堂々と!!」
「仕方ないでしょう!? 中学の頃から貴方一筋なんだから!」
「………は?」

 え? なに?? 中学????

「言ってる意味が、よく分かんねぇんだけど…」
「やっぱり、まだ気付いていないんですね。私と貴方は、この学園で会ったのが初対面ではありませんよ」
「え!?」

 さっきから驚いてばかりで申し訳ないが、許してくれ。本当に意味が分からない…。

「一番初めは私が中学二年で、貴方が高校三年だったと思います。それからも挨拶程度ですが、数回会ってます」
「どこで!?」
「亨さん、貴方の入っていたチームの総長の名前、覚えてますか?」
「当たり前だろ?」
「言ってみてください」
「薫さん」
「名字は?」
「まき」
「……」
「……」
「私の名字は?」
「槙」
「……」
「……え!?」
「薫は私の兄です。てか亨さん鈍すぎる。まぁそこも可愛いですけど」
「かわっ!? え、兄!?」

 総長の事は下の名前でばかり呼んでいたから、全く気付かなかった。しかし、薫さんに弟なんか居たっけか?

「おかしいな。確かに数回家にお邪魔してるけど、会ったのは確か妹だったは……ず…あ!!」
「妹……」

 あんまり綺麗な子だったから、ずっと妹だと思ってたぞ俺。

「学ラン着てた時もあったんですけど…」

 何だか酷く落ち込んでいる槙。

「ごめん、本当にごめん」
「いえ、慣れてるので」
「でも、薫さんからお前の話って聞いたこと無かったから…驚いた」

 幾ら男同士の会話とはいえ、女の子達の会話よりは少ないにしても多少兄弟の話になってもいいんじゃないか。

「仲悪いんですよ」
「え、何で!?」
「気が合わない、それだけです。本当に気が合わないんです、笑えるくらい」

 槙の話によれば、幼馴染である有澤にも何度かチームに入れと誘われたらしいが、どうしても薫さんの下に入るのは嫌だったとか。

「有澤も私も昔から他人に全く興味を持てない人間でした。でもその有澤が何度も、凄い人が居るって興奮して言ってたんです。だから彼奴がそれ程心酔する相手がどんな人か、ちょっと気になり始めた頃でした。兄が亨さんを家へ連れてきたのは」

 一目惚れでした。少しはにかんで言われたその言葉に、俺の顔が赤く染まる。

「貴方のその真っ直ぐな目に見られれば、全てを見透かされた気分でした」

 そっと伸ばされた長く綺麗な指は、あと僅かな距離で俺の頬に届く。しかしそれは、頬に触れる事なく降ろされてしまった。

「あの日から私には貴方しかいない。あの兄のチームに入ろうか本気で悩む程に…貴方しか見えないんです。でも、当然貴方はノーマルですし、こんな世界に引きずりこむ事など出来なくて」

 降ろされた手は、今度は強すぎる程にテーブルの上で握られている。

「この学園に来ると聞いて、いてもたってもいられなかった。こんな可笑しな学園に来てしまえば、貴方が無事でいられる筈が無いから」
「でも有澤から聞いてたんだろ? 俺は喧嘩、強いんだぜ?」

 俺のその言葉に、槙はしっかりと首を横に振った。

「さっきの、もう忘れましたか? 喧嘩で襲われるのと、性的暴行目的ではタイプが全然違います。実際、訳が分からなくなって、身体が固まってしまったでしょ?」

 その通りだった。パニクった思考はそのまま身体にも響いて、まともな抵抗すら出来なかった。俺はそんな自分自身に愕然としたのだ。

「どんな奴に襲われるか知れない場所に貴方を置くんです、先手を打つのは当然です。もう綺麗事なんて言ってられませんでした」

 だからこそ、あんなに赤ら様な行為を生徒たちに見せ付けていたのか。あの過剰とも言えるスキンシップ、もといセクハラの理由が今やっと分かった。

「はぁ、でも本当に今考えると恐ろしい。ウルト○マンよりはマシですが、私は今貴方と長時間過ごす事が難しい。もって二十分くらいでしょうか…」

 何じゃそりゃ。疑問符が頭の上に大量に出たのが分かったのだろう、槙は苦笑いしながら教えてくれた。

「今の私の理性は、中学生と同党です。だだ貴方を見ただけで、欲情出来てしまうんですよ」

 そんなことを言うから、つい。

「………あ」
「ちょっと! どこ見てるんですか!?」

 思わずテーブルの下から覗き込むと、槙の身体の中心は本当に成長してしまっていた。

「ほんと、ごめんなさい。自分でも情けないと思いますが、私は…」

 俯いた時に、さらりと流れる髪が綺麗だった。

「なぁ、情けなくなんてねぇよ。俺自身驚いてんだけどさ、何か、嬉しいんだよ」

 俺に欲情してるお前が、可愛く思えてならないんだよ。そう言って槙の俯いた顎を掬って顔を上げさせると、俺は噛み付く様にキスをした。

「お前には秘密にしてたけどな、男同士のやり方、俺調べたんだぜ」

 槙が恥を忍んで暴露してくれたなら、俺だって恥ずかしい部分を曝け出してやるよ。
 俺がどれだけ、お前にこの部屋へ来て欲しいと思っていたか。どれだお前と話をしたかったか。


 俺がどれだけお前に、触れて欲しいと思っていたか。


「なぁ、俺はもうお前の物なんだぜ? なに遠慮してんだよ」
「でも私には、経験が」
「だから何だっつーんだ、俺はそれだって嬉しいよ。お前の初めて、全部俺のもんじゃん?」

 ニカリと笑えば、槙が目を見開いた。

「触れよ、お前の好きなように。触って欲しいんだよ。抱かれたいなら抱いてやる。抱きたいなら、幾らでも抱かれてやるよ、お前になら」

 言った途端槙は椅子を蹴散らす様に立ち上がり、そこそこな身長もあると言うのに俺を軽々抱き上げた。

「そんなこと言って……どうなっても知りませんよ。もう、俺は抑えが効かない」

 それは確かに、オスの声だった。








 「早く、全部お前の物にしてくれ」














「ぅあっ、…ぁ、はぁ、あっ」
「亨さん、痛みは、平気ですか?」
「んっ、へ、へいき…あっ、くっ」
「一応三本、入ってます。そろそろ大丈夫…ですかね」

 本来出すべき器官に指を入れられ掻き混ぜられる。生徒たちに使うために置かれた救急箱の中の軟膏が、まさかこんな事に使われるハメになるとは…。
 槙は指を抜く前に、入れた三本の指で穴を広げる。その時に聞こえたニチャリという粘着質な音に、耳まで犯された気分になった。

「んぁっ、ぁ…」

 抜かれた指の感触に、感じたことのない快楽を得て背筋に痺れが走る。
 思わず声が漏れ、胸を突き出す様に背を反れば、槙がゴクリと唾を飲んだのが分かった。

「亨さん、チカラ抜いて下さいね…挿れます…」

 槙の手と自分の手で支えていた俺の足は、槙の肩へと上げられる。自分ですら直視する事の無かった秘所は、今完全に槙の目の前に晒されていた。

「ぁっ、いっ!」

 秘所の入り口に熱く猛った物が当てられ、一度閉じた入り口に食い込む。指とは比べものにならぬ質量に、痛みは堪えきれず声に出てしまう。

「亨さん、やっぱり…」
「良いっ、から…最後まで、ちゃんと…抱けよっ」

 な? と諭すように告げて、槙に口付けると、槙も観念したように口付け返す。
 本当に初めてかよ、と思える程に槙のキスは気持ちが良く、身体から思わずチカラが抜けた時だった。

「んんっ、ぃんんっ!」

 熱い杭を、一思いに全て突き入れる。

「んっ!」

 その瞬間にチカラが戻り、その強い締め付けに槙は思わず唇を離すと、顔を苦痛で歪めた。

「ふっ…はぁ、くっ、」
「ま、まき…はぁ、ぁ、我慢、すんな…出して良いから、何回でも、出して…いいから」
「と! 亨さんっ、それ反則っ! ぅっ!!」
「あっ! んんっ!!」

 ジッと耐えていた絶頂の波が崩れたのか、俺の中に欲望が放たれた。
 
「かっ、格好悪い…」
「んな、こと無いっ…て、あっ! ぁあ!」
「ごめん亨さん、我慢、出来ない」

 中に白濁を放っても尚、まだ硬さを持続した灼熱の杭が俺を突き上げた。

「ぅあっ、あっ…あっ! いうっ、んん」
「はっ、くっ、ここ、でしたよね。亨さんの…良いところっ」

 そう言って、滑りの良くなった中で擦られたのは、指で慣らす際に見つけられた秘密の場所。

「あっ!? ぁあっ! やっ、やめ! そこばっか、ぅあ…ひっ!? ダメ!! 触っ、あっ、ぁあっ!! んぁあぁっっ」
「凄い、絡みついてくるっ! んっ、くっ!」

 何度も何度もそこばかりを強く抉られ、その上男の証しまで同時に擦られればひとたまりもなく。花火が上がった様に目の前がチカチカとして、俺は凄まじい快感を味わって絶頂を迎えた。
 強く締め付けられた杭も、俺の中で再び欲望を吐き出す。それでもまだ硬さを失わないそれを中に挿れたまま、槙がドサリと俺の上に落ちてきた。
 槙のさらさらの髪に首元を撫でられ、敏感になった俺の身体はそれにすら快楽を拾い上げた。

「亨さん…身体、大丈夫ですか?」
「んっ、ぅ…大丈、夫、ぁ…」

 少し動いただけでも内壁が擦られて、刺激を生み出す。俺の声を聞いてまた少し硬さと太さを増したそれを、槙は抜き取ろうとした。

「ダメだ、まだ」

 離れようとする身体に足を絡ませて元に戻す。

「いや、でも、」
「ダメ。……俺が満足するまで、もっとお前を俺にくれよ」
「亨さんは、俺を煽るのが本当に上手い…」
「ぁ…んあっ」

 きゅっと閉まった秘所を再び激しく出入りし始めた杭は、明け方まで俺を貪った。

 


 ◇



「槙って、スイッチ入ると“俺”って言うのな」

 窓の外をみれば、もう既に空は白み始めていた。

「俺も初めて知りました」
「まだ、スイッチ入ったままだな」

 そう言って二人で笑う。
 ホッとしたのと、とんでもない程に体力を使った事からついにウトウトと微睡み始めた時、突如槙が俺の頭を掴んで変な方向へ曲げた。

「いでっ! 何すんだ!!」
「何ですか、この跡は…」

 槙が見ているのは、俺の右側の首筋。

「俺、ここには痕付けた覚えないんですけど」

 言われてよくよく考えてみると、こうなる前を思い出した。
 
「あ、もしかして…村雨?」
「あ…んの野郎ぉおっ!」
「いだぁぁああっ!!!」

 怒りを爆発させたかと思うと、何と槙はそのまま俺の首に噛み付いた。
 その上とんでも無く強く吸い付かれ、他の場所に付けられたものの比では無い痛みが走った。

「これで上書きできました」
「痛ぇわボケ!!」

 思わず槙を殴り、手で首を触れば薄っすらと血が付いた。
 全く…幾ら何でもお前……これはやり過ぎだろが。ギロリと槙を睨むと、そこには情けない顔をした男が。

「駄目だ、俺、亨さんの事になると何にも制御がきかない」

 しょぼんと落ち込む目の前の美しい男に、俺はまたも笑いが込み上げた。
 何だろうな、この感じ。全てを許してしまえる程に、愛おしいと思えるんだよ、お前には関しては。

「もう良いよ。俺の隙が生んだ、俺によるミスだし。そう言えば、俺あいつにキスもされたんだぜ?」

 告げた途端に、槙の目には再び怒りの炎が灯る。

「だからさ、もっとお前で消毒してくれよ、な?」
「亨さん…」

 噛み付かれるかと思ったキスは、思いの他甘かった。鼻から漏れる音まで甘い甘い、槙のキス。
 
「はっ、ん……なぁ、俺はお前だけの物だよ。お前の為なら、何でもしてやりたい。だからあんまり色んなこと悩むなよ。情けないとか、思うなよ。俺はお前が好きなんだよ。好きだ、依弦」

 初めて呼んだ名前は、案外しっくりと俺の声に馴染んだ。

「亨さん………愛してます。貴方だけを愛してます。ありがとう、亨さん。俺の、俺だけの、亨さん…」

 激しい繋がりは終えても、蜂蜜よりも甘いキスに終わりはまだまだ見えなかった。



 ◇


「お、吉田。昨日は悪かったな。槙を呼んでくれたの、お前なんだってな?」

 有難い事に本日は土曜日。痛む腰もなんとか昼には落ち着いてベッドから起き上がれるようになり、丁度リビングへと移動した時吉田が現れた。

「………」

 けど、現れた吉田の様子が何だかおかしい。

「おい、吉田、どうした?」

 青ざめた様な、赤らんだ様な複雑な顔色から心情は読み取れず困惑していると、ぽそりと吉田が言葉を落とす。

「昨日……」
「ん?」
「連絡無いから、揉めてないか気になって…夜ここに来たんだ」
「え、」
「亨ちゃん…ここの部屋の壁、薄いって……気付いてる?」

 言われた途端、ボッ! と音を立てて全身の熱が上がった。

「おっ、おっ、おまっ」
「聞いちゃったのは、僕のせいじゃないからね! ちゃんと、次からは気を付けてよねっ!?」

 それだけ言って吉田は、真っ赤な顔をして、真っ赤な顔をした俺一人を残して走り去って行った。


 う、う、うわあぁぁあああぁあ!!!!


 その後反省した俺たちは、人が少なくなるまでと愛の営みをなるべく我慢。そして生徒が居なくなった正月休みに大爆発。
 休みの間、ほぼ毎日求められるままに身体を繋げた。
 槙は俺の身体を後ろだけでイケる様にしたいとか、胸でも感じる様にしたいとか言って兎に角好き放題に弄り倒した。
 俺はと言うと、ただひたすら槙にされるがまま、色んな意味で乱れに乱れまくった生活をおくって居たのだが…。

「亨ちゃんっ!!」

 バンッ! と激しく開けられたドアには休み明けで寮に戻った吉田が。

(このドア、いつか壊れるな……)

「明けましておめでとう、吉田」
「おめでとうじゃないよ! ちゃんと忠告したのに、僕が居ない間に何やってんの!!」

 その後、鬼の形相の吉田の口から恐ろしい事実が明かされた。

 正月休みとはいえ、寮にも多少は生徒が残っている。その僅かな生徒たちに、俺のあられもない声を聞かれたらしいのだ。いや、寧ろわざと聞きに来ていたと言う。
 それから暫くの間、生徒たちの間で『寮監の喘ぎ声はエロい』とか何とか恐ろしい噂が色々と広がった。
 その後新学期に向けて、新聞部主催の変なランキングの模擬投票が行われたらしいのだが、その結果は何故か生徒たちに報告される事なく闇に葬られることとなった。

 まさかその原因が、『抱きたい男』のランキング上位に俺の名前が上がったことにあり、それを有澤と槙が大人の権力を振りかざした結果だという事に……鈍い俺は、気付く術を持っていなかったのだった。


END


おまけ



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