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水も滴るいい男

【あらすじ】
 翔太の親友英治は、顔良し性格良しで社交性もバツグンの色男。なのに彼女が出来ても直ぐにフラれてしまい中々長続きしない。密かに英治に想いを寄せる翔太は、ある日英治からとんでもない提案を持ちかけられて…。果たして、直ぐに英治がフラれる理由とは何なのか?


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「翔ちゃぁん! 俺またフラれちゃったよぉ〜」

 えーん、と泣き真似をする英治の肩に手を置き僕はいつものセリフを口にする。

「大丈夫だよ英治。素敵な子にまた出逢えるから」

 そんなこと、少しも願ってはいない癖に…。






 僕、間宮翔太(まみやしょうた)が倉田英治(くらたえいじ)と出会ったのは高校の入学式だった。
 それから三年生に上がった今までずっと、僕は英治の親友の座を獲得している。でも、もうずっと英治を純粋な親友としての目で見る事は出来ていない。
 明るくて、格好良くて、優しくて。男性を恋愛対象としてしまう僕が、そんな魅力的な英治に惚れるまでにはそれ程時間はかからなかった。

「昨日のデートで何かしたの?」
「ううん、ただご飯食べて話をしただけだよ?」
「またその展開でフラれたのか…何を話したの?」
「本当にたわいも無いことだよ。今日何してた、とか」
「うーん…」

 モテる英治に彼女はすぐ出来る。ただ、余りにも長続きしないのだ。それは嬉しくもあるが、複雑でもある。どうすれば長続きするかを僕が考えなくてはいけないのだから…。
 そんな葛藤を自身の中で繰り広げていると、僕では予想もつかない様な提案を英治が口にした。

「ねぇ翔ちゃん。一体何がダメなのか、今度デートを見ていてくれない?」


 
 ―――えっ!?




 ◇



(僕、何やってんだろ…)

 再び出来た英治の彼女とのデートを、一人で必死に追い回していた。
後ろからつけているだけの僕は相当な不審者で、正直始めの十分で心は折れていた。でも、大好きな英治の頼みごとなのだ。やらねばなるまい…。

 半日に及ぶデートは思っていた以上にまともで…買い物やら何やら、彼女も随分と楽しそうにしていた。ただ、そんな彼女の顔が遂に曇ったのは、きっと本日最後の寄り場所になるであろうカフェでのことだった。
 遠くからでは何が起きているのかサッパリ分からない。少し危険かもしれないが近づき調べる必要があると判断した僕は、なるべく自然な感じを装い二人の席に近い位置へと移動したのだけれど…。

「翔ちゃんは凄く空気が読めるから俺も一緒に居て凄く気楽なんだ。何だか昔から知ってるみたいに違和感が無いんだよ、凄くない?」

(えっ…?)

「それにね、翔ちゃんは凄く可愛いのに、自分では全然自覚出来てないわけ。でもそこが翔ちゃんのまた良いところでもあって俺は好きなんだけどね? 照れた顔も可愛いし、必死にその照れたところを隠そうとするのがまた堪らないって言うかさ! あ、あとこの前なんてね、翔ちゃんってば」

(ちょっ、何言ってんの!? 英治のバカ!)

 彼女が相槌を打つ暇もない程に、永遠と続けられる…多分……僕の話。それが耳に入った途端、僕の顔は真っ赤に染まった。まだまだ続くそれが聞くに堪えられなくて、思わず耳を塞ごうとしたその時。


 ―――パシャンッ


 僕は思わず振り向いてしまう。そこには、コップの水を英治の頭にぶっかけた彼女と、かけられて漸く口を止めた英治の姿が。

「バッカじゃないの!? そんなにその“ショウちゃん”とやらが好きならそいつと付き合えよっ、このホモ野郎っ!!」

 鬼のような形相をした女の子は、そのまま乱暴にバッグを掴むと店から出て行った。英治に視線を戻せばバッチリ目が合う。

「え、英治……」
「ねぇ、翔ちゃん。俺、一体何がダメなんだと思う?」

 英治は水の滴る前髪を片手で掻き上げると、にんまりと口元に悪い笑みを浮かべて言った。


END



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