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続・麻の中の蓬【後編】***


「先輩、大会まで…あと一ヶ月あります」
「? …うん?」

 俺の肩口に顔を預けたまま、突然話し始めた太一。

「でも、それまで我慢しろってのが酷だってことも、同じ男として十分分かってます。俺はそれを二ヶ月も待てと言った…」
「………」
「先輩、浮気、しちゃいました…?」
「する訳ないでしょっ!?」

 何てこと言うのこの子は!
 驚いたのと怒れたのとで、思わず太一の肩を掴んで引き剥がす。顔を覗き込んでみれば、目にはたっぷり涙を溜めて唇を噛んでいた。

「噛んじゃだめ、切れちゃうよ」

 強く掴んでいた肩の手を離し、親指で優しく唇を撫でてやると、ポロリと綺麗な涙を零した。

「さっきの、風紀の副委員長さんでしょう? 抱き合ってました…」

 ダメダメ、その言い方俺が殺されるから。

「違う違うっ! アレは俺の友達でね? え〜っと、最近太一と上手く行ってないってその…泣き付いてた恥ずかしい場面でして…決して抱き合ってたとかでは無いからっ」

 それに加藤ちゃんには、この世の何を差し置いてでも優先したい相手が既に居るのだ。
 俺が必死に否定して友達アピールしていると、太一はいつも強気につり上がっている眉をとことん下げ、ほっとため息をついて呟いた。良かった…、って。
 俺を加藤ちゃんに取られちゃったと、本当に別の誰かを見つけてしまったのかと、焦った故に先ほどの行動に出たのだと言う。
 こんなにも俺は、太一に想われていたんだと初めて知った。

「お願いですから、俺以外に触れたりしないで下さい」
「…うん、しない」
「幾ら友達でも、抱き付いてるところは見たくないです」
「うん、二度としない」
「あと一ヶ月、ちゃんと俺が相手しますから、余所見しないで下さい」
「うん、てか太一以外見れないしって、え!?」

 え? 相手をする!?

「駄目だよ太一っ、身体が…」

 俺が慌てて否定すると、太一は顔を赤くしつつもニコリと笑ってこう言った。方法は色々あるでしょ?、と。そう言って突然俺の下半身に手を伸ばし、ベルトに手を掛ける。

「わわわわ! 何してんの太一っ! ダメダメダメ!!」
「どうしてです…? もう、反応してますよ」

 やめてよそれ言わないでよぉ〜。
 久しぶりに間近で嗅いだ太一の匂いに、下半身はモロに煽られていた。

「明日も、部活が有るんです」
「だったら尚更ダメだって! 俺止められる自信無いもん!!」
「受け入れるのは無理ですが…処理を手伝うことは出来る…って、思ったんです」
「処理!??」

 パニくった俺を無視して、手の動きを再開させた太一は、制服のベルトを外しジッパーを開けると、軽々とズボンを下着ごとずり下げる。
 さすが運動部の腕力。すんなりずらされたズボンと下着の中からは、完全に臨戦態勢な自身の息子が飛び出した。
 驚いたままの俺は、ただひたすらに太一をポカンと見続けるしか出来ていないのだが…そんな俺を置き去りに、太一は少し目元を赤らめながら、俺の完勃ちしたソレにそっと指を滑らせる。

「っ! くっ…」

 堪らん…堪らんぞっ!!
 セックス禁止令が出てからというもの、溜まるものを処理するのは当然ながら我が右手。だが残念なことに俺は完全に太一にイカレてる訳で。
 自分だけではどうにもこうにも上手く達することが出来なくなっており、何とか達した後でも妙にモヤモヤとして、スッキリすることが出来なかった。
 しかしどうだ。先ほどから太一の香りと、拙い触り方だけで先走りは酷く溢れ、油断すればあっと言う間にイってしまいそうになる。

「た、太一…ヤバイって、もうイキそうだから手ぇ離して?」

 早すぎると笑われたって構うもんか、太一相手だとそんな余裕すらないのだ。恥を忍んで言ったのにも関わらず、竿に玉にと伸びる手は一向に離す素振りを見せない。慌てて離させようと手を伸ばしかけたその時、信じられないことが起きた。


 ――かぷり。


「あっっ!!」

 そっち方面にはカナリ疎い筈の、いつも俺に翻弄されてばかりだった筈の太一が…俺の息子にかぶり付いた。

「たいちっ! あ! ダメダメ!! イクってば! あっ、あっ! ぁあっ!」
「ふっ…んむ…はふっ、んん」

 ペロペロ、ぬぽっ、ぬぽっ、ぢゅっ、ぢゅるる、ぢゅぢゅぅ〜

 触り方もアレだが、口での愛撫スキルなど皆無な太一の施し。だが、どんなにプロの手練れた愛撫を受けようとも、頭がイカレちまうくらい好きな相手にされた愛撫には、絶対に勝てないだろうと思った。
 ペニスの先を強く吸われ、俺は呆気なく限界を超える。慌てて太一を離れさせようとして、前髪に指を滑らせ掴むが…

「ぅあっ」
「あっ!」

 間に合わず…寧ろ……が、顔射とか……エッロ…!
 怒ったかな、と血の気を引かせた顔で太一を伺えば、俺が吐き出しぶっかけた白濁を大きな手で拭いながらへにゃりと笑う。


(ぇぇぇえ!? もぉ何それ超可愛いっっ)

 思わずつられてへにゃりと笑えば、

 俺のでイってくれたんですね、嬉しいです。だってさ! だってさ!! 何か俺、幸せ過ぎて涙でちゃって。

「太一、どうしよぉ〜俺超幸せぇ」

 愛おしくて堪らない彼を抱き寄せる。ぎゅう〜と今までの分も込めて抱き締めれば、太一もまた抱き返してくれた。そして、ふと気付く。

「太一、何か当たってる」

 まだまだ元気な自分の息子に、何か硬いものが当たり、ゴリっと音がした。無言を貫き抱きついたままの太一。

「可愛い…俺の舐めて、興奮しちゃったんだ?」

 そう言って顔を見ようとすれば、太一は更に強く肩口へ顔を埋め、コクリと頷いた。

 どうしてやろうかね、この可愛い子。未だかつて見たことの無い、太一の甘え様と素直な反応。
 今までは、恥ずかしいが故に隠して来た本音。俺に身体を開けることで揺らぐ男としてのプライドや、葛藤。それを今俺のために全部捨てて、恥や外聞もかなぐり捨ててぶち当たって来てくれてる。

「太一も一緒に気持ち良くなろうか」

 そう優しく耳元で呟けば、少しだけ不安そうな色合いの目を見せた。

「大丈夫、挿れたりしない。ほら、少し離れて? そう、足の上に乗って」

 胡座をかいた俺の足の上に座らせ、対面座位の形を取ると、未だキッチリと着られている制服の中で主張する太一の物に手を伸ばした。多少身体をビクリと震わせたものの、大人しくされるがままの太一。
 取り出せばやはり成長しきっていたそれは、先走りでベトベトに濡れていた。

「太一、ガマン汁凄いよ? パンツがぐしょぐしょ」

 ニヤリと笑って見せると太一は潤んだ目を逸らし、意地悪…と呟いた。もっともっと虐めて泣かせたいけど、それをするのは今日じゃない。

「今度はちゃんと二人で気持ち良くなろーね」

 まだ元気に上を向いていた自身と、それに沿う様にして上を向く太一のモノを太一の手ごと一緒に握り込む。

「あっ!」

 少し触っただけで軽くイってしまった太一。相当恥ずかしかったみたいで俯いてしまうけど、

「ほら、手、動かして? 俺のと一緒に擦って?」

 グイと両頬を掴んでこちらを向かせ、唇を深く合わせる。

「はっ…ぁむ…ふぅっ、ん…んん」
「んっ、はっ、…ん」

 イったばかりで敏感になっている太一のモノは、成長が早い。上からも下からも、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がして耳からも侵されていく。

「はぁっ、ん、せんぱ、もうっ」
「うん、はぁっ…いーよ、一緒にイこう?」

 太一の手の上から俺も手を重ね、激しく上下に擦り、入り口を親指でグリグリと弄る。

「あっ、あっ! イッ、クっ!!」
「んっ、…くぅっ!!」
 
 ビュクビュクと中々止まらない互いの射精と濃い精液で、お互いがカナリ溜め込んでいたことが伺い知れた。
 クタリと俺に倒れこんできた太一を抱きかかえ、俺は考える。
 過去一度として、挿入無しでここまで心が満たされた事があっただろうかと。
 手に入れたなら、直ぐにでも繋がり合わなくてはと何処か焦ってはいなかっただろうか。心を通わせる方法が、繋がり合うことだけだと思ってはいなかっただろうか。
 太一の唇で、肩口に置かれた額の温もりで、触れられる手の感触で。荒れた心が何処までも癒されて行くのが分かる。

 俺も大概恋愛初心者だな、と思わず漏れた言葉は太一には聞こえていなかったらしい。大泣きしたことも、緊張が解れた事も合間って、酷い眠気に襲われた。
 それは太一も同じだったようで、汚れた身体を気にもせず、俺たちはただそのまま抱き合って眠りについた。

 
 次の日、今までのどんよりしていた雲が嘘のように。
 空は、綺麗に晴れ渡っていた。



 ◇



「おい、その緩んだ顔をいい加減どうにかしろ。キモいぞ」
「だぁ〜ってぇ?幸せなんだもぉ〜ん」
「復活したらしたで鬱陶しいな、お前」
「酷い!!」

 だけど、ニヤケが止まらないほどに俺は幸せだった。
 あの日から俺たちの関係は、今までより更に絆が強く結ばれ、凄くいい関係になった。
 太一は相変わらず部活が忙しくて触れ合う機会も少ないままだけど、心が満たされたあの日から、俺の異常とも思える性欲に抑えがきくようになった。これはカナリ大きな変化と言える。
 それに、我慢出来なくなると、また前の様に太一が処理を手伝ってくれる。うん、最高だ。

 俺との蟠りを解消し、調子が戻った太一は恐ろしいほどに強いらしく、剣道に関わりのない俺にすら耳に入るほど絶好調。全国で、優勝を狙えるらしい。
 最近では、こっそり練習を覗きに行っりもしている。集中力を欠いたらいけないから本人には秘密だけど、剣道をしている太一を見て、俺は二度目の恋に落ちた。
 それと共に、太一に剣道を捨てさせなくて良かったと心底思った。

 仲直りしたあの日から少し経って、太一がぽつりと教えてくれたこと。どちらも大切だけど俺を手放す方が怖いから、部活を辞めようかとも悩んだと言ったのだ。

 それを思い出し、俺はゾッとした。

 彼から、とんでもないものを奪うところだった。それ程までに俺は周りが見えて無かったのだ。今更ながらにため息が出でた。


 明日、太一は全国大会に向かう。



 学校から戻ると、太一が荷造りをしていた。大会自体は二日後なのだが、何しろ県外で行われる為飛行機で向かうのだそうだ。体調なども考慮して、一日早めに会場入りをするのだとか。
 荷物を詰め終わったのか、ボストンバッグを玄関に運んでいる。

「もう支度は終わったのぉ?」
「あ、はい。着替え程度しか用意するものがないので、直ぐに終わりました」

 大会まで後一週間という頃より、剣道部は練習時間を徐々に減らし、今日は完全にOFFとなった。久しぶりに一緒に夕食を取り、ゆったりとした時間を過ごす。

「先輩。俺、明日朝が早いのでもう寝ますね」
「そか、俺も朝は見送る。だから俺ももう寝るよ」

 太一が嬉しそうに笑う。それを見て、俺も嬉しくなる。

「俺、絶対に勝ってきます」

 力強い、綺麗な眼差し。俺は、この瞳に恋をしたんだ。
 この瞳を、護りたい。

「太一なら、絶対に勝てる。これ、持ってって? 一緒には行けないけど、俺の代わりに」
「先輩、これ…」

 俺の地元には、勝負事の神様として有名な神社がある。それは、県外からも買いに来るほどに。
 太一が遠征で寮を空けている間に実家に戻り、神社にお参りに行き、御守りを買ってきた。本当は応援に行きたいのだけど、学生の身分で飛行機に乗ってついて行くことは中々難しい。せめて何か代わりになるものを、と考えついたのがこれだった。

「あり、がとうござい、ます」

 そう言って、太一はグイと手の甲で目を拭った。こんな事で喜んでくれるなら、もっともっといろんなことをしてやりたい。

「ここから、応援してるから」

 自分の力やら運やら全部、太一に分け与えられたらいいと思って強く抱きしめた。



 それから二日後、校内に緊急放送が流れる。

『剣道部1年 麻倉太一、全国大会個人の部にて優勝』

 学校中が、歓喜で湧き上がった。



 ◇
 


 「無事、戻りました」

 数日後、表彰式まで残らねばならない為帰りの遅くなった太一がやっと戻ってきた。

 「おめでとう太一! 凄いよぉ本当に凄い! 学校中がお祭り騒ぎだったんだよっ」

 学校中の浮かれ具合を伝えると、照れたようにふっと笑う。
 そんな顔も可愛いなぁって、久しぶりな太一の顔をまじまじと見ていると、俺、誰よりも先輩に祝って欲しいです、だなんてまたまた可愛いことを言うもんだから…。太一、今日は一日中部屋でいちゃいちゃしよう? なんてデリカシーの無い言い方をしてしまった。
 だけどそんな俺の言葉にも太一は、嬉しそうに笑うんだ。

 太一と付き合うことになってから買い換えた、薄いベージュのふわふわソファにふたりでくっ付いて座る。
 もっと触りたいけど、きっと太一は疲れてるから今日は我慢。ただこうやって、肩をくっつけて座っているだけでも十分幸せ…。

「あの、先輩…」
「ん?どうしたぁ?」
「先輩に、ちょっとお願いがあって…その、今まで頑張った、ご褒美が欲しいんです」
「ご褒美?え、なになに?何が欲しいの?買ったげるよ?」
「………」
「ん? どうしたの?」
「………い……しい」
「え?」
「せん、ぱいが…欲しい」



・ ・ ・ えっ!?



 聞き間違いかと思って太一を見たら、もぉ見える肌が全部真っ赤で!

「先輩にも…今まで我慢して貰ったことへの、ご褒美に…なればって…」

 すいません、自惚れ過ぎました。なんて言って何処かに逃げようとするから、

「わっ、せん、先輩!?」

 太一の手を掴んで俺の部屋に連れ込む。そのまま乱暴とも言える強さで太一をベッドに組み敷いた。

「分かってる? あんな誘い方したら、俺…いつも以上に手加減出来ないよ」
「……し、なくていい」
「っ!?」
「手加減、しないで下さい」
「……もう無理、限界」
「んんっ!」

 兵器化した可愛い口は、塞いじゃえ。




「あっ…やぁっ、んっ、んん」
「太一、はっ、声、抑えちゃダメ。手、どけて」
「ンぅっ、ぁっ、ぁ…やだぁっ! なん、なんでぇっ」

 激しく突かれると思ったのか、浅いとことばかりをグチュグチュと出入りすれば太一からは不満な声が上がる。

「ん、はぁ、なに? どうして欲しいの?」
「や、ぃやぁ…もっと…」
「もっと? なに?」
「…じわ…るぅ」

 涙目で訴える太一に笑みが零れる。
 
 可愛い。
 虐めたい。
 泣かせたい。

 我慢しなくていいと言われ、箍が外れた様だ。もう、止まれない。
 もう直ぐそこまで絶頂が見えているのに、俺の与える刺激は物足りないものばかり。抜けてしまいそうな程浅く浅く、入り口付近を行き来させる。

「ほら、早く言わないといつまでもイケないよ?」
「んんっ、あ、はぁ…ほしっい」
「どこまで?」
「もっと…おく、までっ!」
「りょー…かいっ」

 太一の両手に指を絡ませ、抜けるギリギリまで引き抜いた自身を思い切り叩き込み、何度も何度も強く揺さぶる。

「ひゃあっ! …あっぁ、やぁあ! あっ激しっ、ひぅっ、せん、せんぱっ、あ、あぁああ」
「ふっ、くぅっ!!」

 ドプッと放たれた白濁は酷く濃厚で、量が多い。強い締め付けで同時に達したものの、俺の息子は元気なままだ。足をピンと伸ばして、まだ若干痙攣をしている太一に、休みを与えず尚揺さぶる。

「太一、んっ、濃いね。自分でも、はぁっ、抜かなかったの?」
「ぁっ…ぁうっ、せん、ぱいとが…いい…から、あっ! やらぁ、おっきく、しなっでぇ!」
「ごめ、太一が可愛いこと言うから……やっば、可愛すぎっ」

 更に硬さと大きさを増した俺の息子に太一が震えた。もちろん、快感で…。
 俺は振り続けていた腰を一旦止めて、太一を抱き起こす。角度が変わって良いところを突いたのか、太一がまたイッた。ぐったりと俺の肩にしな垂れかかる。

「ねぇ、太一。俺の名前、呼んで?」
「ぁ、…ん、で、も…名前…」
「いいの。太一に呼んで欲しい」

 昔から女みたいで嫌いだった自分の名前。
 誰にも呼ばせず来たので、噂に疎い太一の耳にもそれは入るほど学校では有名なことらしかった。そのせいで彼も俺を名前で呼ぼうとはしなかったが、太一なら、名前を呼ばれたいと初めて思えた。

「お願い。名前、呼んで?」
「……あ、まね、さん?」
「うん」
「雨音」
「うん」
「好き、です…雨音さん」
「俺も。大好きだよ、太一」

 大好き、愛してる。
 深く深く口付けて、深く深くつながって、どちらがどちらか分からなくなるまで溶け合おう。
 二度と二人が離れたりしなくて良いように…。









「おい、時田。お前気を付けろよ? 最近、麻倉狙ってる奴が多いらしいぞ」

 そう、そうなんです。
 俺たちの愛が育まれると同時に、どんどん太一が綺麗に色っぽく育っちゃって……正直困りもの。

「立場逆転、ってヤツだな」
「加藤ちゃん、どーしよぉ…俺その内振られるかも…」
「ぶふっ!!」
「ちょっとぉ〜! 何で笑うワケぇ!? 真剣な悩みなんだけどぉ!」
「いや、そこがお前の良い所だと思ってな。その、無駄に自信の無いところ」
「何それ、馬鹿にしてんの?」
「褒めてんだよ。そういう所があいつは好きなんだとよ。ホレ、来たぞ」
「へ、あいつ?」
「先輩」
「あ、太一!」

 加藤ちゃんの言うあいつがよく分からないし、結局馬鹿にされてるとしか思えなかったけど。太一の顔見たら、そんなことどっかに吹っ飛んだ。

「先輩。今日、部活休みになったんで一緒に帰りましょう」
「ほんと!? やったー! 帰ろ帰ろ! じゃ、加藤ちゃんまた明日ねぇ〜」

 普段無表情が多い太一が、何か凄いニコニコしてる。何だか機嫌の良い彼に、俺まで気分が良くなる。

「ねぇ、何か良い事あったの?」

 何か気になるので、道すがら聞いてみる。

「先輩がちゃんと約束守ってくれてるから、嬉しかったんです」
「約束?」

 何だっけ?

「副委員長さんに、抱きついてなかったから」

 そう言われてビックリする。そんな当たり前のこと!!

「もう約束でも何でもないよ? だって無理してる訳じゃないし。俺が触れたいのは太一だけ、それだけなんだよ?」

 まだ加藤ちゃんとのこと疑われてるのかなって思って、念入りに否定する。

「だから、太一も俺だけ見ててね? 俺だけに触れてね? 誰にも、渡す気なんて無いんだからね?」
「そんな心配は不要ですよ」

 ――俺、雨音さんにしか興味ないから

 
 そんな事、そんな声で耳元に囁かれたらさ? そりゃあ俺の息子も元気になるでしょうよ?
 その上「俺、明日も部活休みなんです」なんて言っちゃう太一。そんな太一をめちゃくちゃに可愛がるまで、


 あと、三十分。


END☆







おまけ↓ ↓ ↓


「はい、先輩珈琲です」
「ありがとぉ〜。あ、そう言えば太一さ、加藤ちゃんの話全然知らないの?」
「副委員長の?」
「俺とのこと心配してるみたいだから教えるけど、加藤ちゃんには恋人がいるからね?」
「えっ? そうなんですか!?」
「数ヶ月前に、二人連続で編入生が来たのは知ってる?」
「あ、はい。流石にそれは…結構な騒ぎになってたんで」
「それ、二人目が加藤ちゃんの大事な子なんだよ」
「あれ? でも噂では幼馴染って…」
「うーん、まぁ付き合ってはいないから恋人とはまだ呼ばないのかも。でも、加藤ちゃんはその子しか見えてないし、相手もね。その内嫌でもそーなるよ、あの二人は」
「そう、だったんですね…(お前はアイツのどこが好きなんだ? なんて聞くから、てっきり宣戦布告かと思った…)」
「安心した?」
「はい、凄く。どうやって彼に勝とうか、ずっと悩んでましたから…」
「たっ、太一!」
「ひゃっ! ぁっ、だめっ、だめだってばぁ、今やったばっか…あっ、ぁあ!」


今度こそEND☆



あとがき



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