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ズルイ男***



 ない。絶対に、ない。あり得ない。
 俺は目の前で顔を真っ赤に染め、シャツの裾を握りしめる幼馴染みに冷たい目を向けた。

「男同士でとか、マジでねぇーから」

 無言で、しかし潤んでこちらを見つめる瞳は、やたら何か言いたげで煩い。余計にキツくなった俺の視線に、幼馴染み…… 綿谷泉(わたやいずみ) は項垂れた。
 それは、遠い遠い昔の記憶。


 俺、高杉柊(たかすぎしゅう)と綿谷泉は幼馴染みだ。
 小さな頃は、まるで女みたいに小さくて白くて細くて、ナヨナヨとしていた泉。そんなんだから同じ男からはイジメの標的になっていて、そんな泉を守ってやるのが俺の役割りだった。
 しかし泉を守ろうとするそれは正義感からかけ離れた理由からであり、簡単に言えば気分が良かったのだ。
 別に、誰からも好かれるような性格でもなければ、整った容姿でもない。そんな俺に、泉は眩いばかりに光る瞳を向ける。

『シュウちゃんはカッコイイ!』
『シュウちゃんはやさしい!』
『シュウちゃんは、僕のヒーローだ!!』

 幼い頃に染みついたものというのは、なかなか消し難いものらしく。大学に通う歳になった今でも、泉の中で俺は『かっこよくて優しいシュウちゃん』のままなのだ。

 高校1年の夏。何を血迷ったのか泉は、俺に恋人になって欲しいと言ってきた。
 確かに熱い視線をよこしてくるとは思っていた。本当はもっと良い高校へ行けたはずなのに、俺と一緒がいいという理由だけで学校を決めた泉の行動は、少々行き過ぎていると思っていた。しかしそれは結局、憧れかなにかに分類されるものだろうと高を括っていたのに。
 そうして告白され、思わず出た言葉が冒頭のものだった。
 もしも昔のように、まるで女のような泉のままだったら、もう少し何かしら考えたかもしれないが……中学に上がってからの泉は、昔とは全くの別物になっていた。
 俺が見下ろしていた顔は、今では見上げなければならない位置についているし、ヒョロヒョロだった体格もしっかりとした男の体に変貌を遂げている。
 高校時代。車に轢かれそうになり抱き寄せられた事があるが、その時俺はすっぽりと泉の腕の中に収まってしまった。
 あの時のまま身長が伸びていない俺と、まだ伸びている泉。その差はもう、頭ひとつ分では足りなくなった。


「柊ちゃん。つぎの講義、休講だって」

 まるで飼い主に呼ばれた犬のように駆け寄ってくる泉を、何名もの生徒が遠巻きに見ている。そこに性別の垣根はなく、その上生徒どころか教授ですら時折この男に見惚れているのだから驚きだ。
 シャープな顎に、切れ長の瞳、長い睫毛、薄い唇。
 芸能人顔負けのスタイルとルックスに、目を奪われるのは分かるがコイツは男だ。男なのだ。

「そんな走ってこなくても、RAINに連絡くれりゃいいだろ?」
「だって、直接言いたかったから」
「それならまぁ、いいけどさ。ありがとな」

 俺よりもカナリ上の方にある、艶々で傷み知らずな猫っ毛をわしゃわしゃとかき混ぜ、その手をするりと頬に滑らせる。

「しゅ、柊ちゃん……」

 ほうっ、と吐息のように囁やく泉の顔は真っ赤だ。
 あの頃から……俺に告白した、あの夏から。吐露された泉の気持ちは、全くブレずにそこにある。
 あんなにも酷い振り方をしたのに、コイツは今でも俺の一歩後ろをついて歩いて、全身から俺を『好き』だと叫んでいる。そんな泉を……俺はずっと突き放さずにいる。
 高校でもそうだったが、大学までも俺を追いかけ同じところを選んだ泉。それだけで、まだ俺に気があるのだと分かる。分かりすぎる。
 男同士で付き合うなんてまっぴらごめんだが、未だに俺の後ろをついて回る泉を邪険にしないのは……そこに、強い優越を感じているからだ。
 誰もがお近づきになりたいと乞い願われる男の瞳に映るのは、こんなにも平凡な俺、ただ一人。その快感を手放せず、俺はわざと……泉が俺を諦められないように仕向けてきた。
 俺から離れ難くなればいいと、そう思って触れてきた。案の定、泉は俺を諦めきれず……今でも俺の後をついて回っているのだ。

「あっ! いたいた、ふたりとも!」

 俺と泉の後方で、元気な声が上がる。

「なんだ、和田か」
「なんだってなんだ! なあ、つぎ休講って聞いたか?」
「ああ、今ちょうど聞いたとこ」
「じゃあこの後暇だよな?」

 和田の瞳がキラキラと光る。嫌な予感がする。

「頼むっ! これから合コンなんだけど、病欠が出ちゃって! どっちか一人でいいから来てくんね!?」

 やっぱ、そんなこったろうと思った。俺は眉にシワを寄せ、和田を睨む。

「嫌だね、お前が集める女って性格悪い奴ばっかだもん」
「そりゃ中身より見た目だから!」

 入学当初、友人も彼女も欲しいとダブルゲットを狙って参加した、和田主催の飲み会でエライ目にあったのだ。
 未成年だからと酒を断ったことすら、ダサい、つまらないと詰られた。

「俺、行かない。泉が行けば?」

 泉の返答なんてわかり切ってるのに、定期的に聞きたくなって言ってしまう。

「柊ちゃんが行かないなら、俺もいかない」
「だぁぁぁあ! 綿谷は絶対そう言うんだもんなぁぁぁ! 頼むよ高杉! 明日昼飯奢るから!」
「1週間」
「ぇえ!? ふ、2日間!」
「6日」
「3日!」
「5日」
「ぐぬぬぬぬぬ、よ、よ、4日……」
「よし、手を打とう! あ、お前どうすんの?」

 地面に崩れる和田を無視して泉を伺えば、

「柊ちゃんが行くなら、俺も行く」

 わかり切った答えが、また返ってきた。


 ◇


 結局飲み会は、散々な結果で終わった。
 女の子の全員が、ターゲットを泉一本に絞ってしまったからだ。しかし、当の泉は隣に座る俺のお世話で忙しい。
 全く相手にされない上、平凡どころかその下の下な俺にイケメンを取られたことに腹が立ったのだろう。一次会の途中で、女の子が全員姿を消したのだ。

「お前らを誘ったのは失敗だったわ……」

 へこたれた和田が、カフェのテーブルに突っ伏す。

「しかし綿谷は、そんなに高杉にべったりで彼女とか大丈夫なわけ?」

 彼女という単語に、思わず俺がビクッと反応してしまう。そんなの、俺のことが好きすぎる泉にいるわけないだろ。

「大丈夫、それも納得してもらって付き合ってるから」
「えっ!?」

  その返答に驚き声をあげたのは、和田ではなく俺だった。

「高杉ってば、なに驚いてんの? こんなイケメンがフリーなわけねぇじゃん」
「いや……でも、」
「なぁなぁ、やっぱもうとっくに経験済みだろ? 初体験って幾つの時?」
「な、和田!?」
「いいじゃん、聞きたいだろ? だって綿谷、絶対経験豊富じゃん!」

 俺のことがずっと好きなのに、そんなはずねぇだろ!? そう思ったのも束の間、またしても信じられない答えが返ってきた。

「高1の時かな……」
「は……?」

 俺は飲んでいたカプチーノラテのマグカップをひっくり返した。

「わっ、バカ高杉! なにしてんだよ! てもうほとんど飲んでんじゃん」
「なんだ、それ……高1の時、女とやった……の?」

 ひっくり返ったカップを、元に戻す余裕もない。そんな俺とは対照的に、平然とした態度の泉。

「うん、先輩から告白されたから付き合って。その日のうちに」
「「その日のうち!?」」

 今度は和田が、抹茶ラテをぶちまけた。今度こそ中身はたっぷり入っていたようで、テーブルの上が湖になった。

「ぎゃあ! 俺の抹茶ラテが!」
「こ、高1の……いつ」
「秋口かな?」

 俺に告白してから、そんな経ってねぇじゃん。

「なんだ……それ、」

 だって、お前は……お前の、好きなやつは。大学まで追いかけて、住むアパートだって気づけば隣の部屋を借りていたほどに。お前は、俺のことが好きだったんじゃ……ねぇの……?

「柊ちゃん?」
「俺……帰る」
「ええ!? 拭くの手伝ってよ〜!」

 乱雑に自分の鞄を引っ掴むと、走るようにしてカフェを飛び出した。



 次の日から。いや、あの日帰った時から、俺は徹底的に泉を無視した。何度もチャイムを鳴らされたが無視をして、朝も顔を合わせないようカナリ早く部屋を出た。
 大学内は同じ学部で同じ専攻だから難しいことだったが、アイツが話しかけてきても一切目を合わせず、返事をすることもしなかった。

 ―――ムカつく、ムカつく、ムカつく!!

 俺のことを好きだと言いながら、さっさと他の女に乗り換えそいつに尻尾どころか、まさか腰を振っていただなんて!
 モテるくせに、彼女がいる気配がなかったから全く気付かなかった。高校時代も、今も。

「柊ちゃん」
「…………」
「柊ちゃん!」

 泉を無視して4日目。ついに部屋の前で泉に捕まった。

「ねえ、なんで無視するの? 俺、何か悪いことした? そうならハッキリ言って、謝りたいから」

 また無視をして、部屋の鍵を開ける。そうして黙って部屋の中に入ろうとすると、俺の腕を泉が強く掴んだ。

「痛ッてぇなぁ! なにすんだ!」
「っ、だって……」

 しゅんと項垂れるその顔が、死ぬほどムカつく。そんないじらしい顔をしてたって、いまも昔もコイツには彼女がいるし、ヤることもしっかりやっているのだ。

「分かった、ハッキリ言う」
「しゅ……」
「キモい。お前が心底、キモくなった」

 長い睫毛に縁取られた、切れ長な目が見開かれる。

「俺、昔言ったよな? 男同士なんてありえねぇって。それでも諦め悪く俺の後をついて回るお前が、哀れで、かわいそうで、今まで構ってやってきたけどさ」

 ハッ、と短い笑いが漏れる。

「なんだよお前、俺に告白した翌月には彼女作ってヤッてたって? 一途なのかと思いきや、ただのヤリチンじゃねぇか」
「好きだよ」
「は?」
「俺は今でも、柊ちゃんが好きだよ」

 コイツ、マジでなに言ってんだ? 頭の中で、ブチっと何かが切れる音がした。

「はぁ!? 何それ! お前の好きってのは、俺の後をついて回って『好きだよ〜』て言うことなわけ?」
「違うよ。俺は、柊ちゃんとセックスしたいと思ってる。本当は、柊ちゃんを抱きたい」

 部屋の外で何を言ってんだとか、恥ずかしいとか、そんなことは吹っ飛んで、ただ頭にきた。

「よくもそんなことが言えたな、告った後すぐ他の女とヤッたくせに」
「だって、俺はフラれたから」

 頭の中で、さらにまたブチブチと何かが切れる。

「だったらなんで大学まで追いかけてきやがった!? 高校だって三年間、ずっと俺にべったりだったじゃねーか! 部屋まで隣にしやがって! 俺のこと、全然諦めてねぇじゃねーか!」

 手放すのが惜しくて、引っ付いて回られる優越感が欲しくて、諦められないようにしていた自分の行動は棚に上げて。
 しかしそこまで叫んだところで、ついに他の住民が訝しんだ顔をして外へ出てきた。ヤバイと思って再度部屋に戻ろうとするが、

「ぅわ、ちょ……」

 泉は掴んだままの腕を引っ張り、自身の部屋へと俺を引き摺り込んだ。ガチャリと、鍵がかけられる。

「柊ちゃん」

 掴んだままの俺の腕に、泉がキスを落とした。

「なッ! やめ、やめろ!」
「好きだよ、柊ちゃん」
「やめろよッ!!」

 更にキスを落とそうとする泉を突き飛ばし、睨み上げる。

「汚ねぇ手で触んじゃねぇ! 何が好きだ……なにが抱きたいだ……! 他の女に突っ込んだ汚ねぇちんこ、挿れられてたまるかよ!」
「柊ちゃん」
「ちょ、離せよ!」

 振り払ったはずの手が、また伸びてきて俺を捕まえる。同じ部屋の作りなのに、どうしてか上手く外へ逃げられなかった。

「どうしてそんなに怒るの?」
「は!?」
「男同士は無理なんでしょ? ありえないって、俺を振ったよね?」

 確かに、俺はコイツを振った。男同士なんてありえないと思ってたし、それは今でも変わらない。
 側に置いていたのは、ただ人気者である泉が俺だけを見てるのが心地良くて……ただ、手放し難くて。

「俺はこの先もずっと、柊ちゃんだけが好きだよ。彼女を作っても、彼女とセックスしても」

 鏡を見なくても、自分の顔が酷く歪んでいるのが分かった。

「だから……なんなんだ、それ……」
「今までもそうだったでしょ? 俺は柊ちゃんが好き。でも柊ちゃんは俺が好きじゃない。でも、俺は柊ちゃんを一番大事にしたいし、する。彼女がいてもそれは変わらない。一番に優先するのは、柊ちゃんだ」
「だから!」
「柊ちゃんは何が気に入らないの? 今までは知らなかっただけでしょ? 知ってるか、知らないか。ただそれだけしか変わらないんだよ。それとも、なにか俺に彼女がいたらダメな理由があるの……?」

 ダメな、理由……? だって、だってお前は、俺が好きで……。

「俺を見て、柊ちゃん」

 頬に両手を添えられ、俯いていた顔を上げればそこには、人形のように綺麗な男がいて。その男の瞳には、俺しか映っていなくて。

「ダメ……だ、お前は、俺しか見ちゃ、ダメなんだよ……」
「柊ちゃんしか見てないよ」
「嘘つけ! 彼女がいるじゃねぇか! 俺以外に触ってる!」
「触るのもダメなの?」
「ダメに決まってるだろ!? ダメに決まってる!」

 俺は一体、なにを言ってるんだ……? こんなの、紛れもなく独占欲じゃねぇか。でも、もう止めることなんて出来なかった。
 俺に伸ばされる長い腕。その腕で、俺よりも先に他の女を抱きしめたのかと思うと吐き気がした。

「やだ……ヤダヤダヤダ! 触るな! 他のやつを触った手で俺に触るなぁ!!」
「柊ちゃん、柊ちゃん」

 ジタバタと暴れる俺を、ムカつくことに泉は、その長い腕ですっぽりと抱きしめ包み込んでしまう。

「もう、他の誰も触らない、映さない。約束するから、俺と恋人になって」
「……ぃやだ」

 抱きしめる力が、ぐっと強くなる。

「じゃあ、俺はまた他の誰かを抱くことになる」
「なッ、ヤダぁぁあ!」
「それ、完全に独占欲だよね? どうして俺を独占したいのか、ちゃんと考えて」

 子供の癇癪みたいに、矛盾した言葉を並べて泣き叫ぶ。でもどうしても嫌だった。俺以外に触れた体で、触られるのが。

「やだ……やだ……だって、俺のじゃない!」
「これから柊ちゃんのにしてよ。柊ちゃんが、全てを上書きして」

 上書き……? 自分を抱きしめる男を見上げれば、それはあっという間に近づいて。

「ンうっ!? んっ、ふんぅうっ」

 薄く形の良い泉の唇は、想像以上に柔らかくて熱い。それがまるで俺を喰いつくすように、重なっては深く入り込んで、俺の中を侵食していく。

「俺と恋人になって、ね? そうしたら、もう柊ちゃん以外に触れなくて済むから。全部柊ちゃんのものになるから」

 キスで酸欠になった頭で、ぼうっと考える。
 この、引く手数多な綺麗な男を、これから先俺だけのものにできるのか……? もう、誰にも触れさせずに、済むのか?
 男同士で付き合うなんて、どうしたってありえなかったのに。今はそんなこと、どうでもよかった。この綺麗な男を独り占めするには、どうしたらいいのか……ただそれしか、考えられなかった。

「上書き……なんて、どうやって……?」

 泉は互いの唾液で濡れたイヤらしい唇で、ゆっくりと弧を描く。

「全部、俺が教えてあげるから」

 俺を抱きしめていたはずの手は、何故か俺の両手首をしっかりと捕まえていた。




 ◇


 暗闇の中でも、目の周りの泣きはらした赤さが分かる。

「ん……ぅ」
「柊ちゃん?」

 赤く腫れた目元に指を滑らせると、柊が嫌そうに身を捩る。初めてを奪われた躰がカナリきついのだろう、動いた拍子に呻き声が漏れた。
 彼の中に、まだ居座っているモノがまた硬さをじわりと取り戻す。もう嫌だと泣いて、やめてくれと縋った彼の躰は……しかし、初めてとは思えぬほどの快楽をそこで拾った。
 今もまだ、物足りないとばかりに内側が蠢いている。

 漸く、漸く……手に入れた宝物。
 幼い頃からずっとそばて見てきたのだから、彼の性質など嫌というほど知りすぎている。
 だからこそ、高校時代に告白をした。振られることなど最初から分かっていた。そして俺を、告白のあとも側に置くことだって分かっていた。
 小さい頃は俺を助けることで、そして今は俺を側に置くことで優越を感じ、快感を得ていた柊。だがそこには確かに、色恋は混じっていなかった。
 だから告白をして、俺からの感情を意識させた。反発し、嫌悪に転がる可能性も少なからずあったが……柊のプライドの高さでは、すでに知ってしまった優越を手放すことは困難だと思われた。
 そうして長きに渡り植え付けた『泉にとって柊は絶対』という世界は、見事に柊の心を染め替えてくれた。
 単なる優越が執着に変わり、肉欲が混じる独占欲を生み出した。

「まだまだ、俺たちはこれからだ」

 好きな人を手に入れるためなら、なんだってやる。好きでもない女を抱くことなど、息をするより容易かった。それが、あんなにも……あんなにも甘美な想いを連れてきてくれるとは。

『やだ……ヤダヤダヤダ! 触るな! 他のやつを触った手で俺に触るなぁ!!』

 あの時、あの言葉だけでイきそうになった。ずっと、ずっと柊の口から聞きたかった言葉だったから。
 思い出しただけで、柊の中に埋まっているものが完全に力を取り戻した。少し腰を揺すると、深い眠りに落ちている柊の口から声が漏れる。

「ンぁ……ん……ぁっ、ぅぁ」

 可愛くて可愛くて堪らない。
 目覚めたら、きっと思い切り後悔して、俺を罵るだろう。男同士でなんてと、悲観して泣き喚くかもしれない。でも、それでも……一度経験した肉を伴う快楽には逆らえない。そうして絶望しながらも、俺の手に自ら堕ちてきて欲しいのだ。

「ずっと、待ってるから」

 激しく揺すり突き上げたいのを堪え、俺は目の前で眠り続ける宝物を、ぎゅっと……強く抱きしめた。


END

2020/05/21



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