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 最近、昼休みになると現れる子がいる。この間僕と斎藤くんの関係を聞いてきた、あの子だ。名前は高須くんと言う。
 斎藤くんのことが好きなはずなのに、何で僕の所に来るんだろう。少し不思議。
 でも、何か嫌味を言われる訳でもないし、余計な事を考えなくて済むから少し助かっているのが本音。

 あの日から毎日塚原くんに「お昼休みに屋上に来て欲しい」って言われてる。それでも行く気にならないのは、僕が臆病者だからが80%と、何故塚原くんが言いに来るの? っていう憤りが20%。

 割合がおかしいって? 確かに、もっと怒ってもいいのかもしれない。でも…正直まだ僕は斎藤くんが…好き。
 バカだよね、自分でも嫌になる。だけど割り切れないのが恋でしょう?
 恋心を消す為に必要な時間は、作り上げた時間の何倍もかかる気がする。だからこそもう会いたくないし、これ以上傷付きたくないんだ。

 今日も高須くんがお昼休みに現れた。
 クラスが違うから、廊下で話しをする。小さくて華奢で、目がクリッとしてて可愛い子。女の子の様な彼こそ、綺麗な斎藤くんの横に相応しいのかなって、見ててまた悲しくなってきたその時。

「宮田」

 聞きたかった、でも今は聞きたくない凛とした声が僕を呼んだ。

「斎藤くん…」

 声のした方を振り向けば、険しい顔をした彼が珍しく一人で立っていた。

「話がある」

 今の状況全てが珍しくて戸惑っていると、僕より先に動く者がいた。

「今更、宮田君に何の用?」

 それは僕の隣から聞こえてきた。え? と思って隣を見下ろすと、先ほどまでは花が綻ぶ様な笑顔だった彼の顔が、今では般若の様に歪んでいる。怖っ! と思ったのは僕だけの秘密にしておく。

「お前には話してない。用が有るのは宮田だ」

 そう言ってスタスタと僕に近寄ると、般若の彼がいる側の腕を取り、強く引っ張られた。

「え、ちょっと斎藤!!」
「さ、斎藤くんっ」
「いいから黙ってついて来い」





 高須君の静止も無視して、有無を言わさず連れて来られた屋上。そこには、彼と僕以外誰もいなかった。

 久しぶりに見た斎藤くん。やっぱり格好いいなって素直に思う。彼を見ただけで、僕は…

「っ!? おい…」

 目から止めどなく溢れる涙。

 ダメだ。
 やっぱり好きだ。

「ごめっ、ひっ、ごめんなさいっ」
「……」
「やっぱり僕はっ、君が好き」

 だから。お願いだから、ちゃんと僕を振って欲しい。諦めさせて欲しい。掴まれた腕はそのままに、僕は崩れ落ちた。
 わんわん子供の様に泣いていると、掴まれていた腕が離され自由になった。それが余計悲しくて、泣きながら彼を見上げようとすると、崩れ落ちた僕の前に彼が跪き、僕の頬を両手で包んだ。

「酷いことして、悪かった。お前が許してくれるなら…もう一度やり直させて欲しい」

 正直好きとかそういうのはまだ分からねぇけど、歩み寄る努力はしてみるから。って。つまりは、好きになる努力をしてみるから試させて欲しいってこと。
 普通なら酷い話だ。でも、彼相手だと成り立つ話。僕はこのチャンスを物にしようと頑張っていたんだから。

 だけど…だけどそれは前の話。

「僕は…もう傷付きたくない、怖いんだ。勇気を全部、使い果たしちゃったから…」
「頼む、期限付きでも良い。…一ヶ月。一ヶ月で良いから」

 斎藤くんの初めて見る必死な顔に、僕は泣きながらも思わずコクリと頷いた。

 ダメな僕。

 好きになれなかったと、一ヶ月後に言われたらどうするつもりなのかな。そのたった一ヶ月が命取りなのに。心が遂に、死んでしまうかもしれないのに。

 だけど僕は、まだ夢を見ていたかった。彼に好きになって貰えるかもしれないっていう、儚い夢を。
 彼の提案を受け入れたことが、吉と出るか凶と出るか。


 それはまだ
 誰にも分からない。


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