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後回しにできること


※攻めの浮気ネタで、受けが仕返しする話。
あまり救いの無い終わり方です。淫語も普通に口にしてます、ご注意。



「で、何か言いたいことは?」
「………ッ、」
「何で俺まで正座しなきゃなんねーの?」

 目の前のまばら髭ヅラ男が言う。
 髭さえ切ってスッキリすりゃあ、こいつ大分良い男だろうに。

「分かんねぇなら教えてやるよ。お前、髭ヅラは俺の彼氏のケツにちんこブチ込んで、んで誠一、お前は俺と言うものが有りながら他の男と…それも、よりによってタチのお前が。その男のちんこをケツに咥えこんで喘いでた。つまりお前ら二人は【間男】ってワケだ」

 二週間の出張から戻って来てみれば、同棲しているこの部屋で、それも何故か俺の部屋で恋人の誠一がガンガンに他の男とセックスしてやがった。

 言っとくが今は朝だぞこの野郎。

 んで、取り敢えず上に乗っかってる髭ヅラを誠一の中から引っこ抜き…は、生々しいが仕方ない。
 そしてそのまま今度は俺が乗っかりボッコボコに殴ってやった。んで、ふたり並べて事情聴取。

 誠一の顔は今酷いもんだ。
 はっ! どれだけ腫れ上がろうと知ったことかよ。

「あれ、もしかして俺が間男か?」
「ちっ、違うよ翠(みどり)ちゃんッ! 俺はこんなヤツ知ら無いんだってばぁ!!」
「ひっど〜い、あんなに愛し合った仲なのにぃ〜」
「うっせぇ! 黙れマジで誰だよテメェ!」
「ほぉ? 誠一、お前は誰かも分からんヤツのちんこを咥えたのか」
「ちがっ! 翠ちゃぁあん!!」

 誠一が床に泣き崩れた。




 ◇



「んで? 俺が恋しくて恋しくて潰れるまで飲んでたら、気付けば家で、それも俺の部屋でヤってたって? 随分都合の良い話だなオイ」
「本当なんだってぇえ!! 信じてよぉ! 俺っ、俺ずっと相手翠ちゃんだと思っ、思って!!」

 泣いて蹲る誠一の後ろで、髭ヅラが悠々自適に煙草をふかしている。

「おい髭ヅラ。アンタは何か言うこと無いのか? 随分と熱烈にヤってたじゃないか。アンタ、誠一と付き合ってんの?」

 足元でまた、違う違うと誠一が声を上げて泣く。髭面男はゆっくり紫煙を吐き出すと、悪びれること無く笑って言った。

「付き合う? 俺が、そいつと? まさか。俺、そいつの名前も知らねぇよ。俺は男でも女でも、穴さえありゃ何でも良いんでね」
「……アンタ」
「何ならお前も抱いてやろうか?」

 ケケケっと笑う髭男に、怒りより呆れが勝った。

「じゃあ、そうして貰おうか」
「「……は?」」

 ふたりが同時に俺を見る。
 だが、俺は誠一だけを見て言う。

「お前の元に戻る事だけを支えに、キツイ仕事こなして、いざ戻ってみれば他の男とヤってるとこを見せ付けられた。そんな俺の気持ちがお前に分かるか?酒のせいとは言え許せねぇ。だから誠一、お前も俺と同じ目に合え」

 別れることはいつだって出来る。でも、誠一に同じ気持ちを味わわせるのはそう簡単にはいかない。
 言い切ってから髭ヅラを見て笑ってやれば、その手から煙草の灰がコロッと落ちた。










「アンタ面白い奴だよなぁ。なぁ、そいつやめて俺と付き合わねぇ?」

 相性も良いし。なんて言いながら、髭ヅラがとろんとした目で俺の腰に絡み付く。
 床では簀巻きにされて転がされた誠一が、ガムテープで塞がれた口の奥で泣きながら何か叫んでた。殺す勢いで髭ヅラを睨みながら、ね。

 何となくスッキリした気もするのに、何だか胸の奥が痛い気もする。
 笑いたい気分なのに、泣きたい気分。
 後回しに出来ることを後回しにして今しか出来ない事を今やった結果、案外胸中は複雑だ。

 そのまま全裸で煙草をくゆらせれば、紫煙は不思議な揺らめきを見せて消えていった。

END



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