華麗なる宮様とその世話係(嘘から)


土曜日の放課後。今日はいつもの『おつとめ』の日だ。俺はちょっとため息をつきつつ生徒会書記部屋に向かう。いつものように、『おつとめ用』のタッパーを持って。いつものように敵対心メラメラの、生徒会棟の門番・生徒会長親衛隊にちょっと恐れ戦きつつ、俺は書記部屋をノックした。



「……すいませーん、お届けものでーす」
『あっ、白河先輩!今開けますね!』



ちょっと脱力しつつ俺がそう言うと、中から榎田くんの無邪気な声が聞こえてくる。そして扉を開けた榎田くんは、満面の笑みを浮かべながら俺に言った。



「こんにちは、白河先輩!もう僕、お腹空かせて待ってたんですよ!」
「……え、そこまで待たせたか?これでも授業終わってすぐ来たんだけど」
「いえ、僕、朝御飯は食べないんで!いつもならウェダーゼリー食べるんですけど、せっかくのランチ当番日だから、我慢してました!白河先輩のランチは土曜番の特権ですもんね!」
「……」



悪気なく言う榎田くんに俺は沈黙するしかない。最初から榎田くんはなぜか俺の料理を気に入ってくれていて、芳野宮預かりの時はおやつタイムを喜んでくれていた。それが嬉しくてつい手が込むものを作ってしまっていたが、それが高じて書記預かりを解かれた今も、書記親衛隊に特に乞われて俺は土曜放課後にはこいつの部屋を訪れて昼ご飯を振る舞うようになっていた。正直、芳野宮やその親衛隊たちはセレブなんだから、俺みたいな素人料理人じゃなくもっと上手い奴に頼めば、と常に思っているんだが、妙に期待して喜んでくれる榎田くんを見てると無下にもできない。しかし、一番のメインである芳野宮は、



「やあ、白河真言。早速だがコーヒーをお願いできるかな」
「……お前、来た早々それかよ。榎田くんがいるんだから、淹れてもらえばよかったじゃんか」
「君が来るのが分かっているのに、榎田に淹れさせる必要があるか?まだ仕事に区切りがつかないのでね、頭を柔らかくするにはそれなりのコーヒーが必須だ」
「……」



書類から目を離さず、ここの主はそんな事をぬかす。他の隊員は「ありがとう」とか「美味しかった」とストレートに誉めてくれるのに、このイヤミ王子はそんな言葉さえ遠回しだ。俺のコーヒーが旨いっていうなら素直に淹れる気にもなるのに、と心中ブツブツ文句を言いつつ、だが口には出さずに俺はカップを2つ用意する。するとそれを目ざとく見つけた榎田くんは目を輝かせた。

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