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しかしどうも人見は関賀と相性は悪いらしい。少し離れた所にいる分にはいいが、近くにいると気に障る、という感じのようだ。それでいてちょっかいを出す程度には嫌いではないので、度々無体をしてくるのだから、関賀からすればたまったものではないだろう。とはいえそれにへこたれる程関賀も繊細ではないので、余計人見もこじらせているわけだが。困ったものだ、と少し府川が思っている間にも、教練場を見下ろす部屋に二人はたどり着いた。自動ドアの向こうにあるその部屋は一面ガラス張りで、上から下の様子を見れるようになっている。わくわくした様子で人見が下を見下ろすと、そこには意外な光景が広がっていた。



「……ありゃ」
「……」



その光景に、人見はすっとんきょうな声をあげ、府川は少し眉をしかめる。二人の眼下に広がっていたのは、人見直属の精鋭隊の倒れ伏す中に、いつもの黒いジャージを着て悠然と立つ佐知、……と、らしからぬピンクのジャージを着、佐知の前に立つ関賀の姿だった。



「あれー、やだなー、さっちゃんてば!セッキーを折檻しろって言ったのにー」
「……恐らく彼らが日頃の関賀を見かねて申し出をしたんでしょうね。よく関賀の文句を言っていましたから」
「えー、あいつらでセッキーに敵うわけないじゃん!なんのと、セッキーは赤ん坊の頃から英才教育受けてんだからー」
「それも加味しての許可でしょう。関賀には薬にもなりませんが、彼らには訓練にもなりますし、改めて『関賀』の名の意味を叩き込むには言うよりは早いやり方です」
「そりゃそーだけどー、これじゃセッキーが増長するだけじゃん!アイツがデカイ顔すんのはオレは楽しくなーい!」
「……そのための佐知サンでしょうに」



ぶーぶー、と文句を言う人見に対し、府川はため息をつきながら言う。そして眼下の二人の姿を見やった。



倒れた精鋭隊の姿を見るに、まだ関賀は自身の獲物である暗器を使っていない。しかし佐知には暗器なしでは太刀打ちできないだろう。実際、今の関賀は余裕らしき笑みを浮かべてはいるが、その身から漂う緊張感は相当のものだ。……それはそうだろう、関賀はまだ佐知に勝ったことがないのだから。しかし、佐知に負けず劣らず負けず嫌いな関賀の事だ。この演習にかこつけ、佐知に勝つ瞬間を虎視眈々と狙っているに違いない。……ある意味、これは見物だ。府川は知らず、口元に笑みを浮かべながらこの模擬戦の行方を見守っていた。

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