その手に残ったのは



「ところで冷為」


 どこか暗雲を含んだ笑顔に、冷為は少したじろいだ。


「あの時、なぜあのような暴挙に?」


 敢えて笑顔で尋ねる椛のその言葉を測りかね、冷為は怪訝そうに眉を寄せる。


「かの宴での、白雪桜様への、ですよ」


 笑顔が怖い。
 それを押し隠し、冷為は顔をそむけた。


「……実を申しますと、あれにはわたくし、かなり腹を立てているのですけれど」

「……悪かった」


 謝るほかない冷為のその様子がとても珍しくて、椛は扇の影で楽しそうに笑っていたのだった。



<終わり>

2013.5.24.


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