正月の醍醐味

2 ここに残りませんか?



「あの、なんでしたら風間先輩達もここで一緒に新しい年を祝いませんか?」


 ついていくのはちょっと…と思うけど、ここでだったら皆とも一緒にお正月を過ごせるし。


「ほう、気が利くな。ならば遠慮なく上がるぞ」

「風間、家のほうは」

「気にするな。あっちは勝手にやって行くだろう。俺がいまいと問題はないはずだ」


 あ、天霧先輩。あれ、その後ろにも不知火先輩もいる。


「明けましておめでとうございます、先輩方」

「雪村君、いいのですか」

「はい、構いませんよ。人が多いほうがにぎやかになりますし。どうぞ上がってください、」


 そうですか…とどこか怪訝そうに眉を寄せる天霧先輩だったけど、それでは、と上に上がった。


「お前も物好きだなー。ま、俺は別にいいけどよ」

「不知火先輩は、どうされますか」

「上がってくに決まってんだろ」


 そう言って、不知火先輩も上に上がった。


「で、俺はここだな」


 本来家長が座るべき席に、風間先輩が座った。


「あの」

「おい風間!そこは綱道さんの席だろうが!」

「はっ、綱道ごときの席だと?ここは、風間コーポレーション跡取りの俺が座るにふさわしい場所だ」


 胡坐をかいて座る風間先輩に、天霧先輩がため息をついた。


「その原理で行くなら、そこに座るのは私でしょう」

「お千ちゃん!」


 可憐な少女が、戸口に立っていた。その後ろには、君菊さんの姿がある。


「元財閥の八瀬コーポレーション、あんたの会社の親会社の娘の私のほうが、あんたより格は上だけど?ま、私は別に席なんてどこでもいいけどね。あ、でも千鶴ちゃんの隣に座りたいかな。あんたの隣に座らせるなんて可哀想だもの」

「何を言う、我が嫁は俺の隣に座ると決まっているのだ」


 なんでそれでもめるんだろう…。


「あ、あの、お千ちゃん、私別にどこでも…」

「そうか、ならば俺の隣に座れ。でなくばこの場で連れ帰る」


 それは誘拐になると思います。

 それに、それはちょっとどころじゃなく嫌です。


「……はい…」


 そんな私を心配そうに見守るお千ちゃんに、大丈夫、と私は微笑み返した。






 そのあと、家に来たお千ちゃんが持ってきてくれたおせちも合わせて昼に食べる準備を済ませた。


 皆が準備してくれた席に各々ついて、私が作ったお雑煮を食べて。



 お昼には、皆でおせちを食べた。お千ちゃんの家の料理人さん手づくりの散らし寿司や、君菊さんお手製のおせち料理も付けると、私だけのだと淋しいおせちも豪華になった。




















「おい」

「あ、はい、昆布巻きですね、とりますから待ってて下さい」


 甲斐甲斐しく俺の傍で動く我が妻は、やはり我が嫁にふさわしい。(←妻と言っている時点で嫁と言っているということに気づいていない)


「あの、ところで何で私なんですか?」

「決まっている、俺にふさわしいのがお前だからだ」


 何を当然のことを聞くのだこの娘は。

 ああ、そうか、世に言うつんでれだからか。



 俺はそう納得した。


「え、次は黒豆ですか? …お千ちゃん、黒豆ってもうないよね?」

「ないわよ。なに、欲しいのは風間!? そんなに食べたかったら自分の屋敷で炊いてもらったやつを食べなさいよ! あんたの家なら有り余ってるでしょうが!」

「ふん、ならばよい。おい、千鶴、今すぐ作れ」

「…え?」


 目を丸くするさまは随分面白い。


「何を驚いている。さっさと作れ」

「……来年まで待ってください」


 何を言うかと思えば、来年まで待てだと?
 ふん、まあいい。





 来年でも再来年でも、待ってやろう。


 それは同時に、お前が俺のものになる日だということを楽しみにしているがいい。




風間END
《待つことの楽しみ》

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