正月の醍醐味
1 とりあえず頷いておく「は、はい……」
何だか否定しちゃいけない気がして、私はとりあえず頷いた。
「ほら、千鶴ちゃんもこう言ってるじゃないですか」
「千鶴、総司になんか遠慮しないで正直に言っていいんだぜ?」
「本当なんだな?」
平助君と土方先生にそう問われて、私はもう一度頷いた。
「……はい。あの……皆さんの口にちゃんと合うのか少し不安だったので………」
こっちをニコニコしてみている沖田先輩に、何となく逆らいがたいものを感じて、ちょっと本当に思っていたことも言った。
「……そうか」
「千鶴、もしかして総司に何か弱みでも握られてる?」
「平助、それ、どう言う意味?」
また沖田先輩対平助君の図が成りそうだったので、土方先生が止めた。
「やめろ、てめぇら。千鶴、まだ席は調ってねぇんだろ?」
二人にそう言って、土方先生は私に訊いた。
「あ、はい」
「じゃあ手伝ってやる。おい平助、こっちにきて手伝え」
「えーっ、俺!?」
「そこのうるせえ【味見係】は言ってもやらなさそうだからな」
確かにそうだけど…と平助君はぶつぶつ言いながら土方先生について行った。
「で、千鶴ちゃん、今度は何の味見ればいいかな?」
面白そうに笑う沖田先輩に、思わずため息が出た。
「何? 何でそんな顔するの?」
「……何でもありません」
でも、どれを味見してもらおうか……。
1.味に自信のない昆布巻き2.味見していない伊達巻き