正月の醍醐味

1 原田先生が持っている少し大きめの箱



「じゃあ俺達は座ってるわ!」

「多少準備の手伝いくらいならできるだろう」


 そう言って、二人が部屋に入って行った。


 私の手元に三つのものが残る。


 一番気になっていた原田先生からの箱を開けた。


 中に入っていたのは、かわいらしい簪だった。淡い紅の梅細工に、銀の飾りがしゃらしゃらと音を立てる。


「今日、一段落ついたら振袖に着替えるって言ってたろ?それに合わせてもってきたんだぜ」

「で、でも、こんな高そうなもの、いただけません…」


 すごく綺麗だとは思うけど、少し遠慮してしまう。


「気にすんな。俺がお前にやりてぇって思ったから持ってきたんだ。それとも、気に入らなかったか?」

「い、いえ! すごく綺麗ですし、可愛いです。でも、本当にいただいていいんですか?」


 当たり前だ、といわんばかりの顔で、原田先生は頷いた。


「ほら、雑煮は出来たか? さっさと作って、俺に振袖姿見せてくれや」

「はい!」


 なんだかとても嬉しくて、私は笑顔で頷いた。








 そのあと、家に来たお千ちゃんが持ってきてくれたおせちも合わせて昼に食べる準備を済ませた。


 皆が準備してくれた席に各々ついて、私が作ったお雑煮を食べて。



 お昼には、皆でおせちを食べた。お千ちゃんの家の料理人さん手づくりの散らし寿司や、君菊さんお手製のおせち料理も付けると、私だけのだと淋しいおせちも豪華になった。











「よく似合ってるぜ、千鶴」


 隣に座った着物姿の千鶴に俺はそう言った。


「その簪も、お前みてぇなやつにつけられて幸せだろうよ」

「あ、あの、原田先生………そんなに褒めないで下さい。着物に着られてるのは自分が一番分かってますから…」

「俺は心の底から言ってるんだぜ。自信持てよ」


 は、はい……と頬を染めて千鶴は俯いた。
 そんな様まで美しく見える。


 本当なら、こんなお前を周りの奴らに見せたくはないんだがな。


 まあいいさ。






 俺の隣に座っているお前のその位置が、いつか本物になるまでは、な――。




原田END
《隣の意味》

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