正月の醍醐味

1.やっぱり挨拶は大事だよね



父様はまだ帰ってきてないし……。
薫は薫で『俺はあんな奴らとつるむ気はないね』とか言ってこっちのことなんか丸無視だし……。


お客様を玄関にそのまま放置するわけにもいかないのに。

そうだ。


「平助君、ちょっと玄関に行ってくるから……」

「安心しろ! 総司にこれ以上勝手はさせねえ!」


どうやら言いたいことを察してくれたみたい。
すぐに玄関に向かった私の後ろで問答が起こる。


「なに? つまみ食いしたことに文句あるの? 僕お腹すいてるから早く何か食べたいんだけど」

「はぁ?!まだ七時になったばっかだろ! お前がいつも起きてる時間よりはるかに早いじゃんか! それくらい我慢できねえのかよ!」

「ふぅん、じゃあ君は…――」

「……確かに……――…じゃねえよ!」



ごめん、平助君。沖田さんの対処はお願いします。
聞こえづらくなる二人の声を背に、平助君に心の中でそう謝りながら、私は玄関に向かった。


「明けましておめでとうございます、いらっしゃいませ」

「おう、おめでとう」


土方先生がぶっきらぼうにそう言った。


「…おめでとう」

「あけおめだな、千鶴ちゃん!」


対照的に斎藤先輩と永倉先生が言った。


「おめでとさん、千鶴。悪いな、こんな朝っぱらから押しかけて」

「いえ。気にしないで下さい。あ、どうぞこっちに来て下さい。席の方はまだ準備できてませんが…」

「悪いな、千鶴ちゃん! 早速上がらせてもらうぜ!」

「正月早々うるせえって言ってんだろうが!」


土方先生の火山が噴火した。


「あれ、もう来たんですか、土方さん。別に来なくてよかったのに」


勝手場から出てきた沖田先輩に、再び火山が噴火し――むしろ大爆発した。


「正月早々怒鳴られてぇか総司!」

「冗談じゃないですよ、正月早々!」


ずかずかと家に入ると、土方先生は笑う沖田先輩に向かって行った。


「また始まったな。せめて邪魔するぜ、くらい言って入れよ、土方さん」

「総司もこりんな…」

「正月からこれか…。せめて心機一転してみりゃいいのに。…いや、逆に怖ぇな…」

「あ、あの、とりあえず上がりませんか?玄関先は冷えますし…」


玄関先には暖房は届かないから、冬の朝と夜は寒さが厳しい。


「部屋も温めてありますし、どうぞ」


私はそう言って三人を促した。


「おう」

「邪魔するぜ、千鶴」

「失礼する」


相変わらずの三人が廊下に上がった。


「そういえば皆さん、それは……?」


私は、三人が各々持っているものが気になった。

「おう、ちょっとした手土産だ」

永倉先生に続いて斎藤先輩や原田先生も私にそれを渡した。
一番気になったのは…。


1.原田先生が持っている少し大きめの箱
2.斎藤先輩が持っている小さな紙袋
3.永倉先生が持っている大きな瓶





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