正月の醍醐味

 年の瀬があっという間に過ぎ、初日の出があがる。


 でも、私はそれどころではなく、勝手場で忙しく動いていた。

 何故なら女手は私一人。そして他の人に任せたらどうなるか、分かったものではないから……。
 一応お客様だし……。


 ――はっきり言って、父様は新年の挨拶周りで忙しいし、薫は手伝ってくれないし。


「こんなところ、かなぁ?」


 新年、父様の知り合いとか何とかで、うちの学校の先生も何故か雪村家にくる。

 校長先生と知り合いって……。


「ある意味すごいよね……」

「なにがすごいの?」


 唐突にひょっこり現れた影に、私は小さく悲鳴を上げた。


「うわぁ、ひどいなぁ、千鶴ちゃん。悲鳴あげるほど僕って怖い?」

「おい! 待てって! 毎年今の時間千鶴が忙しいの知ってんだろ、総司!」

「沖田先輩…平助君……」


どうやら二人とも早速来たらしい。まだ準備できていないのに…。


「明けましておめでとう、千鶴ちゃん」

「あっ、そうだった。明けましておめでと、千鶴」

「うん。明けましておめでとうございます、沖田先輩、平助君」


言い忘れていた……。
そうだ、お正月の挨拶は明けましておめでとうだった…。


「それ、お雑煮だよね?新八さんが楽しみにしてたよ」

「はっきり言えば食い意地張って――」

「うっしゃー! 今年は八つに挑戦してやる!」

「新八。人ん家なんだ、静かにしろよ、でねぇと…」

「うるせぇ! 正月早々怒鳴らせんな!」

「……土方先生も苦労人だな…」


どうやら彼ら――永倉先生、原田先生、土方先生、斎藤先輩も来たらしい。玄関先でもめてるみたい。
先ずは挨拶しに行かないといかないけど…。


「うん、おいしいね」

「ちょ、沖田先輩、つまみ食いしないでください!」

「おい、総司! なくなっちまうだろ!」


どさくさに紛れて栗きんとんを一つつまんだ先輩に、思わず講義の声を上げた。
これ以上続けられたら、平助君の言う通り皆で食べる分がなくなってしまう。


わたしはどうしたらいいんだろう?


1.やっぱり挨拶は大事だよね
2.つまみ食いを阻止する





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