目的の真意
そして、それから少し後。
「……おい、総司。こりゃなんだ」
ひらりと見せられた紙を見て、沖田は予想通りだと笑った。
「……土方さんの肖像画ですよ。似てるでしょ?」
土方の後ろで小さくなっている悠日を見て、ちょっと可哀相なことしちゃったかなー……。
――などとは思わず、やっぱりそういう顔して帰ってきた、と寧ろ楽しそうだ。
「似てねぇよ。つーか、報告書にこんなもん入れるんじゃねぇ!」
「いいじゃないですか、土方さんの近況を絵に表してみたんですよ。立派な報告書じゃないですか」
揚げ足をとっては土方の青筋を一本、また一本と増やしていく沖田に、悠日はハラハラした。
これ以上土方を怒らせないでほしい。――とばっちりを食うのは、誰でも嫌だ。
「悠日ちゃん、どうかしたの?」
高い声に呼ばれて振り向くと、不思議そうな表情で千鶴が小走りでやってきた。騒動が気になったのだ。
「あ、千鶴ちゃん。うん、実は……」
かくかくしかじかで、と説明した悠日に、千鶴は目を丸くした。
「一体沖田さんが何したいのか分からなくて……」
困った表情で首を傾げる悠日に、千鶴は思った。
――たぶん、悠日ちゃんを構い倒したいんだよ……。
主に困らせて、その反応を楽しむように。
そしてそんな千鶴の心中の意見に肯定するように、にやにやと笑いながら、怒鳴る土方越しに悠日を見ている沖田がいるのだった。
<終わり>
*あとがき*
一応暦の上では秋、ということで『芸術の秋』をテーマに書き始めたんですが……。――どこが?
本編で全く甘いところのない彼らがこんなところで甘く(?)やってますが、気にしないでください。
でも絵を描く前の彼らを書いてて私はものすごくむず痒かったです←ぇ
……まあ、本編に甘い要素がないからこそ書いてみた次第。
ちなみに、沖田さんが描いたらくがき的報告書は、SSLで沖田さんが古典のテスト解答用紙に描いてあったものだと思っていただければ…。
吹き出しの中の言葉は若干違いますが(笑)
※転載がかなり遅れて申し訳ありません
2012.9.21
2013.1.29 転載