「・・・・・・」

目を覚まして感じた腹部の不快感。
ずるずると這うようにしてベッドから起き上がって薬を取り出して飲む。

「久しぶりに痛いな・・・」

普段はここまで生理痛が酷い方じゃないんだけれど・・・。
うーん・・・まぁ、仕事が出来ないくらい痛い訳じゃないし。
美術館の制服に袖を通し、髪を結う。

「四季!」

ドアの外から私を呼ぶ隣人の声が聞こえてくる。
「今行くわ」
ドアを開けて顔が見えるようになった隣人に挨拶をして並んで歩く。

「あ、館長。おはようございます」
その声に顔を上げると・・・仕事帰りの―どうやらマフィアの仕事があったようだ―ジェリコと目が合う。
「ジェリコ、おはよう」
朝から恋人の姿を見られるなんてラッキーだ。
今日も一日頑張れそうだ。
そんなことを思いながらほくほくとした気持ちで歩いて行こうとすると・・・

「四季、ちょっと待て」

ジェリコに腕を捕まれる。
そのままジェリコがじっと私を見続ける・・・んだけど。
う・・・、なんかいたたまれない。
隣人に先に言っているように言い、ジェリコに向き直る。

「具合悪いのか?顔色悪いぞ」
「え?あ・・・あー・・・っと、ちょっとお腹がね?」

薬も飲んだし、ただの生理痛だからすぐ治るだろうし。
大丈夫だと言ってもジェリコの顔は渋いまま。
難しい顔のままジェリコの手が私のお腹に触れる。

「・・・・・・まさか」
「ん?」

難しい顔だったジェリコが真剣な顔になる。
「今日は休め。いや、しばらく仕事はしなくていい」
「え!?行き成りなんで!?」
私なんか失敗しちゃったっけ・・・?
そんな私のテンパった思考回路なんてお構いなしにジェリコが話を続ける。

「いや、全然平気だよ?お腹痛いって言ってもすぐ治るだろうしさ」
「腹痛・・・?」

ジェリコが呆然と私を見た・・・と思ったら目を逸らす。
その顔がうっすらと赤いような気がする。

「何・・・どうしたの」
「いや・・・その・・・すまん、勘違いした」

その言葉に私もポカンとして・・・ハッと思い立って顔が赤くなる。

「え、もしかして子供・・・とか?」

エントランスを妙な沈黙が包む。
いい年した大人が2人、照れているというのも何というか・・・。
けれど、何だろう・・・こんな甘酸っぱい感じのもいいかもなぁ、なんて。

「だ、大丈夫なら仕事行ってこい!」

ばんっとジェリコに背中を叩かれてつんのめる。
「ちょ、呼び止めたのそっちでしょ!」
もう、なんて悪態をつくけれど頬が緩みそうになる。

勘違いの内容はアレだけど、それは・・・それだけ私のことを思ってくれているってことで。

「休憩入ったら一緒に飯食おうぜ」
「うん。じゃあまた後でね」




幸せな時間はその先に
(だって私は此処にいるもの)





―――
ジェリコのBEST ENDのその後な話。



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