「美奈!新曲が出来たんだ、聞いてくr「却下」
自室で本を読んでいる最中に、勢いよく開かれたドアから聞こえてきた声に美奈は冷たくそう返す。
「メリーの音楽は耳にも脳みそにも悪い。あぁ、ついでに胃にも心臓にも悪い。いいから病院行きなよ。今なら若干機嫌が良い私もついて行ってあげるから」
「その割にはずっと本読みっぱなしだな」
ひょいっと本を奪われ、美奈は溜息を吐きながら栞はさんどいてと言う。
「何だ、機嫌悪いな」
「いつもと同じ」
いつものように隣に座るゴーランドを横目で見る。
「何かあったか?」
「別に。・・・まぁ強いていうなら夢見が悪いくらい」
その瞬間に、ソファに押し倒される。
「おい、おっさん」
「忘れるんだ」
分かってるよ、そう返し美奈はじっとゴーランドの目を見る。
青のような翠のような、キレイな瞳が美奈の黒い瞳を覗き込む。
「前から思ってたけどさ、」
ふっと手を伸ばし、彼の頬に触れる。
「キレイな目」
「そうか?」
押し倒した体勢のまま、ゴーランドは首を傾げる。
年不相応な行動に、思わず吹き出してしまう。
「いきなりどうした」
「いや、アンタってほんと面白い」
いい年した男女が一つの部屋の中、しかも押し倒されているというあきらかに危ない状況だと言うのに色気の一つもない。
(まぁ完全に危なくないわけではない・・・が)
そしてそう言いつつ、いい年した男女なので色々あった。
「美奈」
「ん?」
ゴーランドはすっと顔を近づけると額と額を合わせて、まるで少年のようにニッと笑う。
「あんたの目も、凄くキレイだ」
「・・・初めて言われた」
やたらいろいろな人に嫌われていた美奈としては、褒め言葉はくすぐったいのと同時に違和感や疑念が浮かんでくる。
けれど、ゴーランドの言葉だけは何故かすっと心の中に入ってくる。
不思議と、疑わなくて済む。
「そうなのか?美奈の周りのヤツらは見る目がないんだな」
何故か満足そうに頷くゴーランド。
「・・・どうだろうね」
いいからどいてよ、と言うとやたらあっさりと退いてくれる。
「やたらあっさり退いたね」
「ん?あんたがいいなら・・・」
却下、ばっさり言い捨てる。
「真っ昼間っから盛ってんじゃないよおっさん」
「あのなー」
けれどゴーランドは怒った様子もなく、美奈の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
(怒らない)
ゆるゆると、溶けていく。
自分の心が、体が。
彼の言葉一つで浮き沈みする。
「・・・・・・」
この世界は、
「メリー」
「だからメリーは止めろって何回言ったら分かるんだよ」
こんなにもキレイな色があるから。
ふっと触れるだけのキス。
「好きだよ」



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -