「失礼します」

鑑識課のドアを開けると、見慣れた背中が目に入る。

「・・・・・・涼平」

誰も人が居ないのを確認して、私は恋人の名前を呼ぶ。
花梨、と名前を呼びながら涼平が振り返る。

「珍しいですね」

職場の中・・・しかも課内なのに名前を呼ぶなんて、とそんな風に目が語っている。

「人が居ないから」
こつこつとパンプスを鳴らして歩いて、涼平が勧めてくれた椅子に腰掛ける。

「何か・・・二課のみんながごめん」

本日11月22日は涼平の誕生日なんだけど、私が野村さんに呼ばれて出かけている間に二課のみんなが鑑識課に押しかけたらしい。
何やってるんだと思ってすぐさま駆けつけようかと思ったんだけど・・・。
間に合わなかったよ。何を騒いでるんだよ。


ツッコませろ!


と思っている内に色々話は進んで・・・今日はモンステ行くことに決まってるし。

「賑やかで良いじゃないですか」
「度が過ぎるでしょ・・・」

だからはみ出しとか言われるんだよ・・・。
でもまぁ、嬉しそうに見えるからいい・・・のかな?

「あ、それでね。その・・・涼平が良かったらなんだけど、モンステで飲んだ後にちょっと2人で抜けないかなー、なんて」

もじもじとまるで恋する乙女(実際そうなんだけどさ!)

「デートのお誘い、って取って良い?」
「・・・うん」

ちらりと見上げると、照れた顔をした涼平と目が合う。

「顔赤い」
「花梨こそ」

頬に手を当てると熱を持っていて、それを逃がすようにちょっと揉んでみる。

「涼平」

そろそろ二課に戻らないと不審がられるし、何より鑑識の他の人が戻ってくる。

「誕生日、おめでとう」

生まれてきてくれて、生きていてくれてありがとう。
そんな意味を込めて微笑む。

涼平はちょっと目を見開いて、口元にいつもの笑みを浮かべる。

「花梨」
「ん?」

名前を呼ばれて顔を上げると、ちゅっという軽い音と共に額に柔らかい感触。

「・・・・・・前にもあったね。また、」
「当たっちゃった」

悪戯が成功した子供のような無邪気な顔。

「また夜に」
「・・・うん」




五音に込めた想い
(伝えきれない物を全部全部詰め込んで)



―――
朝特捜のサイトを見て涼平が誕生日だと知って愕然とした。
実は涼平が本命



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