「今日俺誕生日なんだ」

廊下で野村さんと鉢合わせした瞬間ににっこり笑いながらそう言われる。
私は持っていた箱を背に隠しながら同じようににっこりと笑いながら
「そうなんですか。始めて知りました。おめでとうございます」
と言う。

「・・・」
「・・・」

そして沈黙。
「・・・やですよ」
最初に沈黙を破ったのは私。
「これは・・・このフルーツタルトだけは誕生日でも絶対にダメです。あげられません!」
わざわざ休みを潰して並んで買ったケーキなんだから!絶対に死守してやる・・・!
「いや、取らないよ」
「そうですか。それはよかった。これを取られるくらいだったら最後まで戦い抜いてやるところでした」
例え相手が年上だろうと、上司だろうと、戦わねばならないときはあるものだ。
「花梨ちゃんって面白いよね」
「・・・褒められてませんよね」
いい意味でだよ、と野村さんは言うけど・・・面白いって・・・。
「誕生日ですし一緒に飲みませんか?とか誘ってくれたらよかったのになーって」
「えー・・・。そういうのは私じゃなくてもうちょっと可愛げのある婦警さんに言えばいいじゃないですか」
何で私なんだ。
・・・おもしろさ!?おもしろさを追求しているから!?
後はからかって遊んでいるか。十中八九こっちだろう。
くそっ、二課でもからかわれまくってるのにこっちでもか!
「花梨ちゃんも可愛いから大丈夫」
「有り難うございます!でも仕事押してるのでお相手は無理です!」
色々切羽詰まってるんですよね。二課メンバー凄い殺気立ってるし。
「・・・そうだ。つまらない上に自分用だったので面白みの欠片もないラッピングですが・・・」
ジャケットのポケットに入れてたクッキーを取り出す。
「変な物は入ってないのでよかったらどうぞ。何の変哲もない普通のクッキーですけどね」
「・・・手作り?」
「そうですけど・・・。大丈夫ですよ、普通に美味しくできてますから」
元々自分用だったから変な物も混入してませんしね!
野村さんは口元にニヤリと笑みを浮かべて、それを手に取る。
「じゃ、ありがたくいただくね」
「どうぞー。じゃあ私は二課に戻りますので!」
頭を下げてから、二課に戻ろうと足を進める。


「まぁ、またの機会にでもね」


何か聞こえたような気がして、立ち止まって振り返る。
野村さんも廊下の向こうに消えていくところで首を傾げた。




主導権はどちら?
(花杜、お前もう野村には関わるなよ?)(え、何かあったんですか?)



―――
野村さんはぴば!
好きだけど難しいな野村さん!



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