4月1日。本日はエイプリルフール・・・ではなく桐沢さんの誕生日だ。
いや、エイプリルフールでもあるんだけど。

「んー・・・何かまずったかなぁ」

自販機で買ったカフェオレを飲みながら1人呟く。
二課のみんなには秘密にしているが、私と桐沢さんは付き合っている。そう、恋人同士!
何だか周囲からは『猛獣使い』だ『豪腕の猛女』だ言われているが花杜 花梨、24歳。花の乙女である。恋人の誕生日を祝いたいな、きゃはっ★なんて思っちゃうお年頃である。やべぇ、今私超気持ち悪かった。
そんなわけで「そうだ、頑張って桐沢さんが好きな物作ろうぜ」なんて思って昨日は頑張って買い物をした。
趣味が生活に役立つ物だとありがたいよね。料理ってすばらしい。
そして今日、当日。そういえばエイプリルフールだったなーなんて思っちゃって、あれ?誕生日でしたっけ?みたいなちょっとしたお茶目な発言をかました。


・・・桐沢さん不機嫌ですよ、えぇ、目に見えて。


二課の皆さんが冷や汗かきながらお仕事してますよ。ちょっと悪いことをしたような気がする。
「やっぱあれか、私のちょっとしたお茶目がまずかったか。謝ろう」
二課のみんなには今度クッキーの差し入れでも作ってこよう。ちょっとっていうか確実に私が悪いことをした。申し訳ない。一応反省はしている。
「花梨ちゃん」
「あ、野村さん。お疲れ様です」
カフェオレの缶を握りつぶしながら野村さんに挨拶をする。
「花梨ちゃんは何処へ向かおうとしてるの」
「え、今からですか?二課に戻るんですよ?」
何を面白い発言をしてるんだろうこの人は。女遊びが過ぎてちょっと頭が可哀想になったのかしら。
「花梨ちゃん、今酷いこと思ってるでしょ」
「いえいえそんな」
事実じゃなかろうかと。
「で、洋クンと何かあったの?」
「うぇあ!?野村さんってもしかしてエスパーか何かですか?宇宙人?」
そうかー・・・この口の軽さと手の早さは地球人じゃなかったからかー。・・・いやいやそんなアホな。
これこれこういうわけでして、と野村さんに言うと何だか楽しそうな笑みを口元に浮かべる。
「あはは、洋クン嫌われちゃったか」
「ちょっとしたお茶目のつもりだったんですけどねー。まさか本気に取られるとは」
桐沢さんに冗談言うのは極力控えよう、そうしよう。
「じゃあ私は二課に戻りますね」
そう言って踵を返した私の腕を野村さんがつかむ。
「ねぇ花梨ちゃん」
「はいなんでしょうか。無茶ぶりだったら絶対に嫌ですよ」
「俺明日誕生日なんだ」
「あ、そうなんですか。明日会えるか分からないので先に言わせてもらいますね。おめでとうございます」
そんな淡々と言わないでよ、と苦笑される。おっとバレたか。
「ってわけで今日何処か一緒に飲みに行かない?」
「はい、行きません」
にっこり笑って言い放つ。すいませんね、野村さん。桐沢さんから野村さんのお願いは飲むなと言われまくってるんですよ。耳タコですよ。
その時、誰かが私の腕から野村さんの手を引きはがす。
「あ、桐沢さん」
先ほどの話題の張本人が凄い怖い顔で野村さんを睨んでいる。そのまま私の腕を引いて背に隠す。
「わぁ、洋クンこわーい」
「花梨に何してる」

桐沢さーん、ここ一応職場でーす。名前気をつけてくださーい。

何か2人の間に火花が散ってて怖いから心の中で言う。
「え、洋クンとケンカしてるみたいだし?誘ってもいいかなーって」
「花梨に近寄るな。あっちに行け」
しっしっとまるで虫でも払うように手を振る。・・・扱い酷いなおい。貴方たち友達ですよね?
残念、と野村さんは肩をすくめるけれど、その顔は何処か楽しげだ―何だかこう嫌な予感がひしひしとするという意味で。
そのまま野村さんは踵を返して言ってしまう。
「あのな、花梨」
「ごめんなさい!」
桐沢さんの言葉を遮って、思い切って謝る。もうね、私が悪いよ。流石に言っちゃだめな冗談だったよあれは。
そのことを話すと、桐沢さんは気が抜けたように笑う。
「ったく、相変わらずだな」
「いや、申し訳ないことをしたなぁと」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
「じゃ、今日は定時で上がるか」
「いいですねー。あ、よかったらうちに来ませんか?桐沢さんが好きな物作ろうかなーなんて」
思ってたりしてるんですよ。
それを桐沢さんがニヤリと口元に笑みを浮かべる。
「んじゃ、色々ときっちりいただくとするか」
「そうですかー。じゃあ腕に寄りをかけないとですね」
料理好きの血が騒ぐさ。

「・・・そういう意味じゃねーよ」

「はい?何か言いました?」
何でもねぇ、と今度はぐりぐりと頭を撫でられる。それから、戻るぞと言って二課の方へ足を進めていく。
「あ、桐沢さん。・・・誕生日おめでとうございます」
そんな桐沢さんの後を追いながら、私はその背中に声をかける。

あぁ、夜が楽しみだなぁ。



嘘つき者には狼が笑う
(もしかして昨晩はお楽しみだった?)(うお!野村さんどこから沸いたんですか!!)


―――
エイプリルフールも兼ねました。桐沢さんハッピーバースデー!
まだお前本編やってねぇだろとかツッコんじゃいけない。
番外編では大変美味しくいただいておりますもぐもぐ



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