下腹部に鈍い痛みが走って、夏海は顔をしかめる。
「夏海ちゃん、どうかした?」
テーブルを拭いている手を止めてこっちを見る集に、夏海は何でもないですよ、と笑顔を向ける。

(生理痛が辛い、とか言い辛いんだよなぁ・・・)

朝に薬を飲んだのはいいものの、今回は少し重いのか先ほどからじわじわと鈍い痛みが体をむしばんでいく。
思わず息を吐く。
「夏海ちゃん」
「わ!びっくりした・・・」
いつの間にか隣に立っていた集を見て、一瞬心臓が止まりそうな感覚を覚える。
怪盗を名乗るだけあって集を含め全員気配を消すのが上手い。
正直とても心臓に悪い。
「どうかしましたか?」
夏海の言葉に何も応えず、集は彼女を横抱きにする。
「あ・・・集さん!?」
突然のことに思考がついていかず、されるがままだ。その状態のまま集は夏海を2階に連れて行くとベッドに寝かせる。
「あのー・・・」
「あのね、夏海ちゃん」
いつぶりかに聞く集の真面目な声に、思わず緊張が走る。それと同時に走った痛みに顔を歪めてしまう。
「さっきから思ってたけど・・・今日ずっと具合悪かったんでしょ?」
伸ばされた手が腹部を撫でる。
「すいません・・・ちょっと、その・・・生理痛が酷くて」
「あー・・・ごめんね。それは言い辛かったよね」
それからちょっと待っててねと言い残して部屋を出て行く。
少しして戻ってきた集の手には湯たんぽがある。
「はい。温めた方が楽になるよ」
「ありがとうございます・・・」
湯たんぽを受け取りながら申し訳ない気分でいっぱいになる。
夏海のそんな気持ちをくみ取ったのか、集は彼女の頭に手を置くと優しく撫でる。
「今日はここで休んでていいからね。辛いのに無理しなくていいよ」
「ごめんなさい・・・」
「そんな謝らないの。俺が夏海を心配するのは当たり前なんだからさ」
そこまで言うと、集は夏海にそれ以上何も言わせずにベッドに横になるように言う。
「よくなるまで寝てて大丈夫だからね。本当は側に居てあげたいんだけど、お店開けなきゃいけないし」
申し訳なさそうな表情になる集を見て夏海は苦笑を浮かべる。
「大丈夫ですよ。集さんが気づいてくれて、こんなに優しくしてくれただけでとってもうれしいですから」
「そ、そう・・・?ほんとごめんね?」
こんなに心配してくれて、本当に優しい人だ。

「集さん」

じんわりとした温かさが胸に広がって、思わず名前を呼ぶ。

「どうしたの?」

「心配してくれてありがとう・・・。集さんのそういう優しいところ、大好きですよ」

温かさがゆっくりと意識を引っ張っていく感覚がする。
眠りに落ちる直前に見たのは、優しく微笑む集の顔だった。



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生理痛が酷くてむしゃくしゃして書いた。
後悔はしていない



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