2月5日。
つい数日前にLIのみんなから聞いたばかりだが、今日は佐伯さんの誕生日だと言う。
本人から聞かされていなかったので全く知らなかったわけですが。
・・・きっと誕生日のお祝いが無かったとか言ってアレな要求(例のシャツだったりエプロンだったり)をされるのは目に見えている

ので佐伯さんにバレないようにこっそりと準備をしていました。
「じゃあ良い子にして待っててね、ハニー」
「わたし子供じゃないんですから・・・。行ってらっしゃい、お仕事頑張ってくださいね」
日曜日だというのに次のドラマの打ち合わせがあるとのことで佐伯さんは出かけていく。
「さて、と」
鞄を持って出かける準備をする。その足でLIに向かうと佐伯さん以外の面々が揃っている。
「お、杏いらっしゃい。佐伯は来てないよな?」
「えっとねー、お仕事」
昨日急に呼び出されちゃったみたい。佐伯さんには悪いけど・・・準備時間がもらえたわたしとしては有り難い。
「佐伯のやつ、誕生日なのに大変だな」
「ほんとですよねぇ」
崇生さんがしみじみ言う。
しかも今日日曜日ですよ。・・・普通だったらお休みの日ですしね。
「・・・さて、準備しましょうか!」
そう言うと大和さんがしぶしぶ立ち上がる。
「ま、佐伯の誕生日っつーのは癪だが杏の頼みだからな」
そんな風に悪態をついているけれど何だか楽しそうです。
・・・みんな本当に仲良しなんだなぁと思うと、嬉しくなってくる。
そして、わたしが発案した佐伯さんの誕生日パーティをみんなが賛成して一緒に準備してくれてるということが、とても嬉しい。
わたしも少しはみんなに認められ始めてるのかもしれない。
「・・・何ニヤニヤしてんだよ」
「してません!」
・・・つい嬉しさが顔に出てたみたい。そんなことをしてる暇があるんだったら色々準備しないと。
料理だったりなんだったりを準備しているとあっという間に佐伯さんの打ち合わせが終わる時間になる。
おじさんが佐伯さんに電話してLIに来るように言っているのを聞きながら店内をうろうろと歩き回る。
「・・・杏。何やってんだ」
「だって・・・佐伯さん喜んでくれるかなって思ったら・・・」
おじさんがぽんっとわたしの頭を撫でる。
わたしはポケットに入れたプレゼントの入った袋をぎゅっと握る。
心臓が痛い。
緊張と不安で胃の辺りが痛い。うぅ・・・喜んでもらえるかな。
「あ・・・!」
佐伯さんが来たのが見えた。
そして、佐伯さんがLIに入るのと同時に響く誕生日おめでとうの声。
あ、佐伯さん驚いた顔してる・・・ちょっと可愛いかも。
「これって俺の誕生日のお祝い?」
「おー、杏が発案者だ」
おじさんがそういうと佐伯さんは嬉しそうに笑ってありがとう、と言う。
「よ、よかったぁ・・・。喜んでもらえなかったらどうしようって心配してたんです」
ほっと息を吐きながら言うと佐伯さんは嬉しそうな笑みを浮かべたまま
「ハニーがせっかく俺のために考えたんだよ?こんなに嬉しいことはないよ」
そう言ってくれる。
それからそのままわたしに抱きつこうとして・・・大和さんと勇太君に両脇をがっちり固められる。
「よーっしせっかくのお前の誕生日ってことで色々用意してやってんだ、食え」
「そうそう。俺たちも佐伯さんを祝いたいんだからさー」
・・・ズルズル引きずられて行く。ちょっとドナドナが浮かんだのは秘密にしておこう。
「杏、よかったね」
「うん、よかった!」
何だかんだ言い合いながらも楽しそうな佐伯さんを見て、みんなに相談してよかったと心から思った。




パーティも終わり、帰り道を佐伯さんと並んで歩く。
「まさかハニーが俺のためにこんな事を考えてくれてたなんて」
「わたし1人じゃ色々出来そうになかったのでみなさんに相談してみたんです」
みんなが快く一緒に準備してくれたことを伝える。
「あ、そうだ」
みんなではしゃぎすぎて忘れていたプレゼントを取り出す。
「時間がなくてたいした物は用意できなかったんですけど・・・プレゼントです」
「ハニーが俺のために選んでくれたの?」
「・・・というかちょっと作ってみました」
袋の中から出てきたのは紫色の石がメインのストラップ。少しだけ歪なのは、手作りだから。
「この石って・・・」
「えーと、アメジストです。2月の誕生石なんですよ」
口元に笑みを浮かべたまま佐伯さんがわたしを見る。
「ね、杏。アメジストの意味、知ってる?」
えーと・・・前に聞いたことはあるんだけど・・・。
ゆっくりと首を横に振る。
「アメジストっていうのは愛の守護石なんだよ。俺とハニーにぴったりだよね」
そうなんですか?と言いながら紫色の石を見る。
「そっかぁ・・・ぴったりかぁ・・・」
何だかちょっとくすぐったいような気分になる。
喜んでもらえて良かった。心の底からそう思う。

「杏」

立ち止まった佐伯さんがわたしの手をぎゅっと握る。
「ありがとう」
嬉しさで、胸がいっぱいになる。
「来年も再来年もずーっと俺の誕生日、忘れないでお祝いしてよ?」
「ふふ、分かってますよ。忘れるわけないじゃないですか」

来年も再来年もその先もずっと、この人の隣で産まれた日に「ありがとう」って言いたい。
思わず、佐伯さんの腕にぎゅっと抱きつくと小さな声で有り難うございます、と言う。
楽しそうな笑みを浮かべた佐伯さんにどうしたの?と聞かれたがわたしは笑いながら首を横に振る。


これからも、たくさんの有り難うを伝えたい。




―――
佐伯さんハッピーバースデー!
3日にそれを知って(゚Д゚)な事になった管理人です。
心のダムからネタひねり出してきました。
ちゃんと公式サイトから愛の籠もったメッセージも送っておきました。佐伯インパクト
久しぶりに一人称視点で書いたら名前変換が少なくなりました。




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