「ダメです」

きっぱり。
笑顔で言われた言葉に佐伯は口をとがらせる。
「えー、愛しの旦那様のお願い事だよー」
「普通の旦那様は奥さんに裸エプロンを要求しません!」
そう言うと杏は持っていた白いエプロンをキレイに畳む。
(・・・と言うかまだ初日のを引きずってたのか)
佐伯の探求心(何に対してとは言わないが)にはある意味感心するばかりだ。
「ちぇ、ハニーならやってくれると思ってたのに」
「やりませんって!もー、佐伯さんの中でわたしはどんな人なんですか!」
LIで円陣を組んでいたときの発言は全力でスルーしたい。
「うーん、仕方ないな。じゃあ、はい」
ソファに座ったままの佐伯はぽんぽんと自分の隣を叩く。
「はいはい、ちょっと待っててくださいね」
畳んでいた洗濯物をタンスにしまうと杏は佐伯の隣に腰掛ける。
それと同時に佐伯は杏の腰に手を回して自分の方に引き寄せる。
「ひゃっ!?」
突然来たくすぐったさに杏は変な悲鳴を上げる。
「本当ににハニーは腰が弱いよね」
ニコニコと―杏にはニヤニヤに見えるが―笑いながら、脇腹から腰にかけてを撫でる。
「〜〜〜っ!や、やめてくださいってば!」
くすぐったさと軽い羞恥で杏の顔が赤くなるのを見て佐伯は満足そうに頷く。
「んー・・・俺はその顔好きだけどなー」
「佐伯さんってSですよね」
それを聞いた佐伯は何を今更とばかりに肩をすくめる。
(Sなんだか優しいんだか・・・)
杏はぼんやりと考えながら佐伯の肩に頭を預ける。
「どうしたの?」
佐伯の声を聞きながら杏は彼を見上げる。
「色々考えてるだけです」
目を閉じて、出会ったときのことからを思い出す。
「杏」
名前を呼ばれた直後に、額に柔らかい感触。
「さっ・・・佐伯さん!?」
更に杏の顔が赤くなる。
「ね、俺にもしてくれるよね?」
ニコニコ。
「ほ・・・頬でいいですか」
「ダメ。ちゃんとここにしてくれなきゃ」
佐伯は杏の手を掴むと、彼女の指先を自分の唇に当てる。
それから、耳に口元を近づけ囁くようにいいでしょ?と言う。
杏は口をパクパクとさせていたが、やがて意を決したかのような表情になる。
目をぎゅっと閉じ、体を乗り出す。
唇に触れる柔らかい感触に、心臓がドクドクと鳴るのが分かる。
ゆっくりと離れると同時に抱きしめられる。
「杏、好きだよ」
「・・・はい。わたしもです」
温かい体温に、杏は佐伯に体をゆだねる。
幸せだ、と素直に思う。
(この人と出会えて良かった)



→愛情の行方
(何年経っても気持ちの行方は1つだけ)





―――
佐伯さん本編スパエン記念。
若干ひy方向にネタが行きそうだったのを軌道修正してみた。
スパエン記念でひyはちょっとね!ダメだよね!
佐伯さんが可愛くて仕方ない。オープンひyだけど



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