「おねえちゃんもいっしょにねよう!」

幼い少年の無邪気な声に、ピシリと空気が固まったのが分かった。
杏はそれは出来ない、と言おうとして竜太郎が期待に満ちた目でこちらを見ていることに気付いてその言葉を飲み込む。
助けを求めるように杏は崇生を見る。
「よし分かった。竜、今日は3人で一緒に寝るか!」
(そうなるんだ・・・)
けれど、崇生に抱き上げられ嬉しそうな竜太郎を見るとそれでもいいか、という気持ちになってくる。
竜太郎を間に挟み1つのベッドに入る。
(うー・・・近い・・・)
将来結婚をして、子供が産まれたらこんな風になるのだろうか。
そう考えて、何故か少し胸が痛む。

「・・・おねえちゃんたちがママとパパだったらよかったのに」

小さく聞こえてきた竜太郎の言葉に、泣きそうになる。
杏は思わず竜太郎を抱きしめると、あやすように背中を撫でる。
それから小さな声で子守唄を歌う。
竜太郎が眠り始めた頃、崇生の手が伸びてきて杏の頭を撫でる。
「崇生さん・・・?」
「杏ちゃんはいいお母さんになるな」
そう言って笑う崇生を見て、嬉しいような微妙なようなよく分からない感情が浮かぶ。
「いつか」
「・・・はい」
「いつか結婚したら、こんな風な家族になれるのかもな」
崇生が同じことを考えていた、と言うことに嬉しさを感じる。
こんな家族になりたい、とぼんやり思う。
(わたし・・・は―)
瞼が重い。竜太郎が服の袖を掴んでくる手の力が何処か心地よい。

「終わらなければいいのにな」

(崇生・・・さん・・・?)

聞こえてきた言葉に問い返そうとするが、睡魔に負けてしまう。
(この偽物の婚約が・・・終わらなければいいのに)



永遠を願う。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -