ケンカの内容は忘れた。何だかくだらないことだったような気がする。
ちょっとしたことでケンカになって、売り言葉に買い言葉がヒートアップしていって、最終的に杏から言われた言葉は

『大和なんてだいっきらい』

だった。
言われた言葉が耳に響いて呆然としている内に杏は家を飛び出していて。
慌てて追いかけていった先はいつものメンバーが集まるLI。
杏はいつもの笑顔でくにさんの手伝いをしていたが、俺の顔を見た瞬間に不機嫌そうな顔になる。
「お、お前らどうした。ケンカか?」
「別にケンカなんてしてないよ?」
いっそのこと違和感しか感じない笑顔を浮かべて杏は言うが・・・コップを持つ手に力が入っているような気がする。
「お前な、勝手に飛び出してんじゃねぇよ」
「どこに居ようと私の勝手でしょ?大和にそんなこと言われる筋合いない」
ふいっとそっぽを向くと、俺の方を見ようともせずにコップを拭く作業を再開する。
「ああ、そうかよ」
バーチェアに座りながら吐き捨てるように言う。
沈黙が降りる。
「・・・お前らなー」
くにさんが俺と杏を交互に見ながらため息を吐く。
「杏」
「何?おじさん」
「ちょっとお使い行ってこい」
くにさんはそう言ってメモを杏に渡す。杏はちらりと俺を見たが行ってくるねと言い残してLIを出て行く。
「・・・で、何があったんだ。杏があんなに怒るなんて珍しいだろ」

・・・何。

ケンカの内容を思い出そうとする。
・・・何だったか。本当にくだらないこと。
「大和のことだ。どうせくだらないことで杏ちゃんに酷く言ったんだろう?」
佐伯の声がやたらイラッとくるのは気のせいか。けれどそれは本当のことで、言い返せない。
「ま、内容に関しては聞かないからさ。早く仲直りしろよー?じゃないと他のヤツに取られちまうぞ?」
いつものようにあっけらかんと笑うくにさんを見てから、いつもの面々を見る。
佐伯に至っては「早く別れてしまえ」と目で言っているような気がする。・・・後で覚えてろよ。
俺は荷物をつかむとLIを飛び出して、杏が向かったであろうスーパーの方へ足を進める。
杏に会ったら何を言えばいい?
・・・そんなのは決まってる。
人混みの中に見慣れた後ろ姿を見つけ、駆け出す。
「杏!」
ほとんど叫ぶように名前を呼んで腕を掴む。
「大和・・・!?」
驚いたように目を見開いたが、すぐに目を伏せる。
「・・・くにさんに頼まれたから手伝いにきた」
「そう・・・」
少しの間その状態で固まっていたが、このままでは埒があかない。

「悪かった!」「ごめんなさい!」

思い切って口を開くと、ほぼ同時に杏の謝罪が重なる。
呆けたような顔を見合わせていたが、やがて杏が吹き出す。
「私たち、何でケンカしてたんだっけ?」
「すげぇくだらないこと」
忘れてしまうくらい些細な事。
「お使い手伝ってくれるの?」
「当たり前だろ。さっさと済ませて帰るぞ」
「はーい」
杏の手を握りスーパーへの道を歩き出した。



100%の天気予報
(とりあえず後で佐伯を絞める)(何があったの)


―――
しーねぇことみかんCさんへ!
159000のキリリクです、大和夢です。
かっこいい大和を書こうと思ったはずなのに何処かで道を踏み外した感が・・・
かっこいい大和って何処に落ちてるんだ・・・

みかんCさんのみ保存転載を許可しております。名前は好きに変えて転載してください



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