夜の甲板。
並べられた料理をサクヤが驚いたような顔で見ている。
「・・・?」

「よし、サクヤの乗船を祝って宴会だ!」

船長がそう叫ぶと同時にサクヤの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。
「船長。サクヤちゃんが驚いてます」
各々勝手に座り、飲み食いするいつもの宴会風景。
サクヤは、何故か俺の隣に座って間の抜けたような顔をしてアイツらを見回している。
(みなさん、楽しそうですね)
そう言ってサクヤが目を伏せる。
どうかしたのかと声をかけるより先に、サクヤは顔を上げるとまた掌に文字を書く。
(いただいてもいいですか?)
頷いて答える。
「・・・!」
(こんなに美味しい物、初めて食べました)
嬉しそうに笑いながら掌に書かれた文字。
「・・・初めて?」
一度小さく頷く。
(あんまり食べられないから)
身なりだけを見るとあまり低い階級の人間のようには見えないが・・・。
海で溺れていたんだ、捨てられたのかもな。

とは言えコイツは女。

いつまでもこの船に乗せておくわけにはいかないだろう。
・・・船長がどう考えているかは分からないが。
その時、海の向こうから何かが鳴くような声が響いてくる。

「・・・!!」

それを聞いたサクヤが立ち上がり暗い海の向こうを見つめる。

「どうした?」

「・・・・・・」

鯨。
口の動きで、コイツがそう言ったのが分かる。
「おい」
もう一度声をかけると、ゆっくりと振り返り小さく首を横に振って見せた。

遠くから、サクヤの言う『鯨の鳴き声』が聞こえてきた。





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