船長のリュウガさん、船医のソウシさん、航海士のシンさん、剣士のハヤテさん、見習いのトワさん。

ナギさんは、コックさんなんだそうだ。

あの嵐の日にも思ったけれどやっぱり綺麗だと思う。
「・・・で、サクヤっつったか?お前、何でこんな海のど真ん中で溺れてたんだ?」
「・・・・・・?」
首を傾げて、『分からない』ということを伝える。
「しゃべれねーっつのも中々問題だな」
リュウガさんが困ったような顔になる。
うーん・・・それもそうだよね。
その後帰る場所のことやどこから来たのか等を聞かれるが、全部首を振って答える。
「・・・行く宛もないのか」
一つ頷く。
「よし、だったらしばらくこの船に乗ってろ!これも何かの縁だ!」
リュウガさんが豪快に笑ってわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
うぅ・・・髪の毛グチャグチャ・・・。
(いいんですか?)
掌に文字を書くと、細かいことは気にするなともう一回笑う。
わぁ・・・海賊って怖い人ばかりなのかと思ったけどいい人だなぁ。
ぺこりと頭を下げる。
それから顔を上げるとナギさんと目が合う。
どきっと胸が鳴る。
「・・・よし、誰か1人サクヤについててやれ。そうだな・・・トワ、面倒見てやれ」
「は、はい!よろしくお願いしますね。サクヤさん」
頷いて、また頭を下げる。

これから、ナギさんと一緒に居られる。
そう思うだけで海を泳ぎ回りたいような気分になった。








トワさんに甲板掃除を教わってからわたしは船内に入る。
人間が乗ってる船ってこんな風になってるんだ・・・。
陸に上がったことなんてもちろんないから、全てが新鮮だ。
「・・・」
わたしたち人魚じゃ絶対に考えつかないこと。
海を泳ぐことが出来ない人間が、海を渡るために考えた方法。
「何してるんだ」
振り返るとそこに立っていたのはナギさんで。
思考が止まる。
「・・・おい」
(船を見てました)
掌に文字を書くと、船?とナギさんが怪訝そうな顔をする。
(珍しいから)
「・・・まあ、海賊船なんて普通に生きてれば乗るようなもんじゃないからな」
本当はそういう意味ではないんだけれど、とりあえず頷いておく。
(みんないい人ですね)
そう書くと、ナギさんが不思議な物を見るような目で私を見る。
「そうか?」
にっこりと笑って頷く。
仲良くなれるといいな、と思うのと同時にわたしには1ヶ月しか時間が無いことを思い出す。

(それでもいい)

この人と、この人たちと居られる時間を大切にしよう。



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