"彼女"から届くカモメ便。
それが私の楽しみになっていた。

『レオナルドさんへ』

いつもと同じ書き出しの手紙を手に取ると思わず口元に笑みが浮かぶ。
窓の外に広がる海原の何処かにサクヤは居るのだろう。

『ようやく風が暖かくなってきましたが、そちらも暖かくなってきたころでしょうか?
 最近は外で掃除をしていると少し暑いくらいです』

そんな何てこと無い日常の話ですら嬉しく感じるのは何故だろうか。

『少し前に無人島に立ち寄ったときに、綺麗なお花畑がありました
 ソウシさんから聞いたのですが、この島は四季ごとに色んなお花が咲く島なんだそうです。』

(あの船医か)
仕方ないこととは言え、サクヤの手紙に他の男の名前が出てくるとどうにも落ち着かない。
苦笑を浮かべて手紙を読み進める。
花畑に咲いていたという花の話、最近シリウス号であったこと、私の体調を心配する旨。
特に、私の心配をする辺りはサクヤらしい。

『そういえば、さっき書いたお花畑で四つ葉のクローバーを見つけたので押し花にして栞を作ってみました。』

栞・・・?
封筒をよく見ると中に手作りの栞が入っている。
それを手にとって見ていると、どこか温かい気持ちになってくる。
次にノラネ島でサクヤに会う日に思いを馳せた。






幸福の在処






ノラネ島の森にはたくさんの野良猫が住んでいる。
「わぁ、久しぶりだねー」
しゃがみ込んで手を差し出すと黒い斑の猫がわたしの手に体を寄せる。
(レオナルドさん、もう来てるかな)
猫の頭を撫でてから立ち上がる。
今日は久しぶりにレオナルドさんに会うためにノラネ島に来ている。
カモメ便での手紙のやりとりももう慣れたものだけど、手紙を送った後は返信がくるまでいつもそわそわしてしまう。
いつもそれを見たハヤテさんやシンさんにからかわれているけれど。
それでも・・・レオナルドさんからの手紙は楽しみだし、特別だ。
「サクヤ」
久しぶりに聞こえてきた優しい声にわたしは思わずレオナルドさんに駆け寄る。
「あ」
木の根っこに躓いて転びかけた所をレオナルドさんが抱き留めてくれて、こんな時なのに何だか嬉しくなってくる。
腕を伸ばしてレオナルドさんに思い切り抱き付く。
「今のはわざとか?」
「そんな器用なこと出来ませんよ・・・」
素で転びました。
「・・・会いたかったです」
レオナルドさんに聞こえないように小さく呟くと・・・もしかしたら聞こえていたのかもしれない、レオナルドさんがわたしを抱きしめる。
「四つ葉のクローバーは幸せをくれるんですよ」
レオナルドさんはそうだな、と言って微笑む。
わたしは、そっと目を閉じてキスを受け入れた。



きっと、幸せはここにある。




―――
レオ様本編スパエン記念!
色々と萌えすぎて最終的にやっぱり先読み使用してしまったとかね。

四つ葉のクローバーの花言葉は「幸福」が有名ですが、他に「私のものになって」っていうのもあるんで、そんな意味も込めて。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -