「サクヤ!」
「はーい、今行きまーす」
甲板でトワと掃除をしていたサクヤは、中から自分を呼ぶナギの声にそう返し、モップを持ったまま走り出す。
手違いでサクヤがシリウス号に乗ってから半年が過ぎ、最初の頃はびくびくとしていた彼女だが今となっては立派な(?)海賊の一員となっている。
「あ、ソウシさん!おはようございます!」
「おはよう、今日も朝から頑張ってるね」
良い子だね、とソウシに頭を撫でられサクヤは嬉しそうに笑う。
その直後にまたナギに呼ばれ、サクヤはハッと我に返ると
「ナギさんのお手伝いしてきます!」
と慌てたように走り出す。

ソウシが見ている限り、サクヤの一日はほとんどそんな感じだ。

トワと甲板掃除をしていたり、
ナギの料理の手伝いをしていたり、
ハヤテの話し相手になっていたり、
何やらシンの逆鱗に触れたのか弄られていたり、
リュウガに捕まって酒飲み相手にさせられていたり

サクヤの恋人という立場としては少しばかり面白くない。
「たまには私に構って欲しいんだけどね」
ソウシ先生?とトワが不思議そうな声を出すのにソウシは何でもないよといつもの笑顔で返す。

「そ、ソウシさん・・・」
困ったように笑いながらサクヤが甲板に顔を出したのはそれから少ししてのことだった。
「わ、サクヤさんどうしたんですか!?」
服の袖が赤い色―血で汚れている。
「ちょっとその・・・包丁で切っちゃって・・・」
「見せて・・・傷が深いね。手当するから医務室に行こう」
「あ、僕も付き添い・・・」
そこまで言って、トワの動きが止まる。
「トワ君?どうしたの?」
だが、トワに答えさせずソウシは
「手当てするだけだから私1人で大丈夫だよ」
と笑って言う。
サクヤは少し首を傾げたが、特に気にせずにソウシに連れられて医務室に向かう。
ソウシはサクヤをベッドに座らせると消毒をし手に包帯を巻く。
「はい、これで終わり。よく我慢できたね」
「わたし、子供じゃないんですから・・・」
口をとがらせるサクヤにソウシは苦笑しながらごめんね?と謝る。
「サクヤちゃん」
「はい?」
「もしかして、疲れてる?」
サクヤはうーん・・・と考えてから、
「そんなことはないと思いますけど・・・」
と答える。
「でも、ちょっと働き過ぎかな?」
「そうですか?」
包帯の巻かれた手を取り、ソウシは苦笑を見せる。
「普段だったらこんな怪我しないよね」
「ちょっとぼーっとしちゃって・・・」
心配かけてごめんなさい、と謝るサクヤを見てソウシは彼女の頭を撫でる。
「私はキミの恋人なんだよ?心配するのは当たり前」
恋人、という単語にサクヤの頬に朱が差す。
「は、はい」
「しばらくみんなのお手伝いはなし。いいね?」
「え・・・でも・・・」
それを聞いてサクヤは困ったようにおろおろし出す。
「だってお手伝いしないとみんな大変だし・・・」
「いいのいいの、少しくらい大変な思いさせないと」
「・・・?」
首を傾げるサクヤに、何でもないよとまた頭を撫でる。
「頑張るのは良いことだけど、何事もほどほどに、ね?」



My little lover
(私の大切な、小さな恋人)



「最近ソウシ先生が怖いです・・・」
「俺この前やたらでかい注射打たれそうになったんだけど」
「・・・笑顔で威圧された」
「ナギもか」
「はははっ、おもしれぇ事になってんじゃねぇか!」






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