「・・・・・・」
「・・・・・・?」

サクヤが不思議そうな顔をして見上げてくる。

「準備手伝え」
「あれ、サクヤさんは夕方から・・・」
「うるせぇ」

サクヤは首を傾げながら立ち上がる。
それからハヤテの掌に何か文字を書いている。

「あんまナギ兄の邪魔はすんなよ?」

ハヤテの言葉にサクヤがむっとした顔をする。
だが、本気で怒っているわけではないのはすぐに分かる。

「怪我しないように注意してくださいね」

トワの言葉に笑いながら頷くサクヤを見て、少し苛つく。
「行くぞ」
腕を引っ張るとサクヤはバランスを崩しかける。
そのまま引っ張ってキッチンへ向かう。

後ろでサクヤが戸惑っているのが分かる。

(くそ)

訳わかんねぇ。
立ち止まって腕を放す。

サクヤの方を見ると、じっと俺が掴んだ腕を見つめていた。

(今日のご飯はなんですか?)

けれど、何もなかったようにサクヤは笑うと俺の手に文字を書く。
「にんじんの皮むき。少しは慣れてきただろ?」

サクヤは得意げに笑うと頷く。

「任せて、ください・・・か。ま、あんま気負うなよ」

ぽんぽんと頭を撫でてやると、いつもこいつは嬉しそうに笑う。
俺の後ろを着いて歩くサクヤに、さっき感じた苛つきは何処かへと消えていた。




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