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またシリウス号は航海を続けている。
シリウスのみんなは良くも悪くも有名だから狙われても仕方ないって言っていた。
1人甲板で空を見上げる。
かけ始めた満月が暗い海を照らしている。
タイムリミットを示す月。
月が欠けて、また満ちる夜。
ため息を吐いて、医務室に戻ろうと踵を返すと・・・
「!?」
そこにはナギさんが立っていた。
「何してんだ」
(海を見てました)
そうか、と言ってナギさんがわたしの隣に立つ。
(ごめんなさい)
「何がだ」
(捕まったから)
走って逃げられないとき、わたしが人間じゃないと痛感する。
人間になりたいな。
でも、なれるのかな。
ナギさんの顔を盗み見ようとするけれど、それが怖くて出来ない。
思わず俯くと、ナギさんがわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「明日」
何が言いたいのか分からなくて顔を上げる。
「朝飯の準備手伝え。いいな、サクヤ」
多分、それで許してくれるって言うこと。
大きく頷くと、ナギさんは早いからさっさと寝ろよと言い残して去っていく。
呼んで貰った名前が、何だか宝物みたいに思えて。
撫でられた頭に触れると、どこか温かくて。
恋してるって、単純だと思った。