(迷った)

高くそびえる壁を見上げる。
陸の上から見る太陽は少しだけ色が違うような気がする。

(大きい道に出よう)

海の匂いは分かるから、そっちに行けばきっとみんなに会えるはず。
少しだけ痛む足を庇いながら歩き出すと同時に腕を捕まれて、後頭部に走る衝撃。
一瞬だけ息が詰まる。

「お前、シリウス海賊団と一緒に居たな」

拳銃を持った男がわたしを壁に押しつけたまま首に手を当てる。

「・・・っ!」

息苦しくて首を絞めるように掴む手を外そうと必死になるけれど体格差もあってたいした抵抗にならない。

わたし、殺されちゃうのかな。

思わず目をつぶった瞬間。
鈍い悲鳴と何か重い物が倒れる音。
それから、喉を通る新鮮な空気。

「・・・・・・!」

おそるおそる目を開けるとそこに居たのはナギさん。
「お前・・・」
ナギさんは何か言いかけて、足下の男がうめいたのを見て舌打ちする。
「行くぞ!」
「!?」
ナギさんがわたしの腕を掴んで走り出す。
突然の事に足がもつれそうになるけれど、ギリギリで倒れないで済む。
必死に走っても、ナギさんの足の長さとわたしの足の長さは全然違うから何度も転びそうになる。

「ったく」

その声と同時に担ぎ上げられる。

「―――!?」

ふわりと体が浮く感覚、地面から足が離れる。

わたし、何やってるのかな。
ナギさんに迷惑かけてる。

港に続く道を眺めながらわたしはぎゅっと拳を握った。



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