「・・・・・・!」
数日の航海を経て、シリウス号は小さな港町に着いた。
人がいっぱい居る・・・。
物珍しく見回していると、シンさんが頭を叩く。
あんまり痛くはないけど、頭を抑えてシンさんを見ると・・・に、睨まれた・・・!
何で!?わたし何もしてないよ!?
「あんまりうろちょろしてんじゃねえ」
ハッと気付くとみんな何処かへ行こうとしているところで。

(ごめんなさい)

と口をパクパクとさせると・・・伝わったのかシンさんが鼻を鳴らす。
うう、悪い人じゃないんだけどシンさん怖い・・・。
「そうだな、サクヤちゃんは誰かの買い物の手伝いしてもらえる?絶対に1人になっちゃダメだよ」
頷いて返すとソウシさんは安心したように微笑んで・・・トワさんの買い物に付き添うように言う。
トワさんの所に駆け出そうとした瞬間、足がもつれて倒れ込む。
「サクヤさん!大丈夫ですか?」
トワさんが手を差しだそうとするより早く、ナギさんがわたしの腕を掴んで立ち上がらせる。
「・・・」
ありがとうを伝えようとしたけれど、ナギさんはそのまま行ってしまう。
(お礼言いそびれちゃった)
捕まれた腕が少しだけ熱い。
「サクヤちゃん、足は大丈夫?」
少し痛むけどたいしたことはなさそうなので頷く。

わたしの足は二本足じゃないから。

尾びれだったから。

人間と違って歩くための足じゃないから。

(いたい)

人間の形をしてても、わたしは『人魚』。

(せめて歩けるようにならなきゃ)
トワさんに並んで歩きながら、わたしはぼんやりとそう考えた。



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