■ブラック本丸にて:三日月宗近の場合

オッス、オラ木村!
・・・とかふざけてないとやってやれない26歳(♀)。
生まれてこの方人間関係に恵まれておらず、人間関係のラック値ゼロどころかマイナスにぶっちぎっている。
両親の離婚に始まり母親からの虐待。学校に行けば苛められて担任に助けを求めた所「気のせいじゃないか」と嘲笑われた結果苛めは更に悪化した。とりあえず自分で何とかしようと思ってやられたらやりかえした。
学生生活は大体そんな感じ。大学時代はさすがにボッチではあったけど苛めはなかった。よかった。
社会人になったら絵に書いたようなブラック企業に就職。何が気に食わないのか新卒入社の中で私だけ無意味にいびられる。物を隠されたり茶に何かしこまれたりトイレに閉じ込められたので気合で脱出したり、っざけんなごるぁという出来事しかなかった。
お局様は上司の愛人(笑)なのでどうしようもない。死ねばいいのにね(笑)。
しかしまあその程度なら死にはしないのでよかったさ。放っておいたけどね。
流石にカッターで切りつけられたのはいただけないよね。めちゃくちゃニヤニヤしてるし。
何かに使えるかなって思ってたその時の流血を拭ったハンカチがここで役に立つとは思わなかった。

政府の黒服さんについていくために立ち上がった私こと木村は、事務所を見渡して言い放ちました。



「死んだらここに戻ってきてやる。人型の生物は皆呪い殺す」



ハンカチは戻る為時の目印になるかなって思ったので会社の敷地内に埋めておきました。
健康診断で審神者としての能力があるからと半強制的に審神者にならされました。
というか後二人ほど素質がある人がいたんだけど、会社的にも損失になるからと一人にしてくれ!→じゃあ木村(私)でいいんじゃね?要らないし(笑)→人身御供決定★という流れがありました。
流石に私もキレたので呪い殺す発言だけ残して颯爽と去りました。
お局様の顔色が悪かったのを見てざまあと思った私はとても性格が悪いんだと思う。

「ほら!!お前らが嫌いな人間様だよ!殺せよ!!」

何か全体的に青いのの胸倉掴んでそう言ってる私はやっぱり性格が悪い。
私が送り込まれたのはブラック企業ならぬブラック本丸。前任者がやりたい放題(意味深)やらかした跡地だそうだ。
やっぱり人型の生物というのはロクなことを起こさない。皆死ねばいいのに。
それを聞いて私は考えた。そうだ、こいつら神様だしこいつらに殺してもらえればいい具合の呪いに昇華出来るんじゃないか?
都合がいいことに相手さんは人間を恨んでいる付喪神。何人もの後任者が殺されたという曰くつきの場所。
やったー!首と胴体さようならで楽に死ねる上に呪いになれるぞ!
そう思ったのになんでだよ!何で殺さないんだよ!!
「殺したいんだろ!?ほら、殺しなさいよ!何人も殺してるんでしょ?もう今更一人増えようが二人増えようが変わらないじゃないの!アンタに殺してもらって私は呪いになるの!そして人型生物を全て抹消するのよ!ほら!さっさと殺せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
がっくんがっくんと青い人が揺れる。
何故動揺しているんだ神様よお!!
「・・・お前は、手入れをさせてくれなどとは、言わぬのか・・・?」
揺らしているせいで言葉は区切れ区切れだがそういった。
「はぁ?何で人間嫌ってる奴らに頭下げて手入れさせてくださいーなんて言わなきゃならんのよ?私はここに来たらすっぱり殺してもらえるっていうから来たのよ?とっとと呪いになってみんなを呪い殺してやるのよ!さぁ殺せ!!」
広間に集まっている刀剣男士やらが動揺したのが分かった。
「お前らも何なのよ!神様なんでしょ!?何動揺してんのよ!!人間なんてクズだぜひゃっはー!とか言いながら斬りかかりなさいよ!殺しなさいよ!」
揺らすの疲れた。青い人の服を放して膝から崩れ落ちる。
「もうやだ。疲れた。何でこいつら私の事殺さないの?何で今までは容赦なくぶった切ってたっていうのに殺さないの?意味わからないんだけど」
頭を抱えて私はきったない廊下にうずくまる。
もうやっぱり人型の生物はこりごりだ。神様?人型してりゃあみんな一緒だこんちくしょう。とっとと殺せって言ってるのに何ためらってんの?あああああああああこれだから男ってやつはいざって時に何もできゃあしない!
心の中で思っていたはずがおもっくそ声に出ていたらしい。
「さ、審神者様・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるのかこれが」
しかしこんのすけは可愛い。私は人型の生物以外なら基本的に好きだ。
蛇とかの爬虫類でも行ける。
「もういいや、今すぐ殺してもらうのは諦める・・・あ、殺してくれるなら私の部屋に来てね」

こんのすけを抱き上げて私は部屋へ向かう。
「ねえ、こんのすけ。さっきの青ダルマはなんていうの?」
「青ダルマって・・・彼は三日月宗近。天下五剣であり一番美しい刀と言われています」
ふーん。美しいとかどうでもいいっすわ。人型の時点で存在がギルティ。

一応言っておくと何故か殺してもらえなかった。解せぬ。

―――

■ブラック本丸にて:小狐丸(+α)の場合

クイックルで縁側のお掃除をしながら死ね死ね団のテーマ曲を歌う私。今日も天気は溌剌。テンションは陰鬱。
「あ?」
「・・・」
そこで白い毛玉みたいなのを見かけたので思わず威圧してしまう。
「・・・なんだっけ、狐?」
あの三日月なんとかと同派の刀で結構血の気が多いらしい。ブラック本丸で後任の審神者さん殺しちゃうランキングでも上位に入るらしい。
それでも本来の・・・小・・・なんだっけ、何とか狐は主大好きっこらしい。しかしこんなデカい毛玉に好かれて何が嬉しいか。
「・・・何をしている、小娘」
「見て分からんか。掃除だ」
君らが殺してくれないから暇で仕方ないんだよ。数日前まできったなかったこの家もピッカピカになったわちくしょう。
死ね死ね団のテーマも歌っちゃうくらい陰鬱な気分だ。
殺してもらえないのであれば仕方ない。自殺に移ろう。
丁度良く大きな桜の樹もある。あれの下で首つるぞ!おー!
「・・・・・・」
狐の目が若干死んだ。私が桜の樹を見つめてにやにやしていたからだろうか。まったく、ここの男どもは本当に男なんだろうか。
出会いがしらに首飛ばすくらいしなさいよ、と言っても困惑するだけなので性質が悪い。
「桜の樹の下には」
「・・・な、なんじゃ」
「死体が埋まってるって言うわよね。あそこで死んだら良い呪いになれるかしら」
狐の目が桜を見て私を見て桜を見て・・・また私に向いた。
「何よ。死体くらいでガタガタ抜かしてんじゃないわよ」
貴様ら刀だろうがよ、死体くらい見慣れてるどころか貴様らが量産してんじゃねぇか。
「それとも何?アンタら本当に男なの!?それでもタマついてんのか!!」

スパッと殺せよ!!!

心からの叫びだ。
しかしまあすっぱり両断してもらえないのであれば仕方があるまいて。
「何だ、掃除か?はっ、関心なことだな」
何だこの上から目線のキューティクル野郎は。中学時代のいじめの主犯格を思い出しギリッとなったせいか手の中のクイックルがばきりと嫌な音を立てた。
キューティクルの視線は私の顔と割れたクイックルを行ったり来たり。
「そりゃあ掃除もするよ」
「お・・・おう」
私の顔は今、きっと死んだように濁っていると思う。

「自分の死に場所だよ?綺麗に整えたいじゃない?」

「く、国広おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

慌てたようにくにひろ?とかいうのを呼ぶキューティクル。こいつらホントにタマついてるのかな?

―――

■ブラック本丸にて:燭台切光忠の場合

「・・・・・・」
「・・・・・・」

何だこの黒い塊。何でダサジャージ着てるのにイケメンオーラ振りまいてるの?だからイケメンって嫌いなんだよね。
っていうのが多分顔に出てたと思う。黒い塊は困ったような顔をする。イケメンだからって何でも許されると思うなよ?
そもそも人型生物の時点で罪としか言いようがねえんだよ、タマ腐って死ね!

「あの、よかったら僕らと一緒にご飯「要らない」・・・あ、うん」

被せ気味に却下する。
「どうせ一緒にご飯食べると見せかけてあっつあつの味噌汁ぶっかけたり足ひっかけて転ばせたりするんでしょ?そうやってこいつ何やってんのプークスクスするつもりでしょ?だからイケメンは嫌いなんだ!!」
「待って、そんなことしないから!」
「触るな人型生物!!」
あああああああああ、人がいるなら台所なんか来るんじゃなかった!餓死するまで部屋引きこもってればばよかった!
「あ、あのさ。何でそんなに死にたがるの?」
「人を滅ぼしたいから」
「・・・・・・」
ダメだこいつみたいな顔するなよ。お前も人間嫌いじゃんかよ。な?私殺せば一石二鳥だぞ?
そう言っても殺してくれないファッキン!
とりあえず自分の食べるものくらいは作らせてもらおう。黒い塊から十分に距離を取っておにぎりをこしらえる。
腹に入れば何でもいい。
「あ、あの、よかったら煮魚「いい」・・・あ、うん」
やめろ、何か私が苛めてるみたいじゃないか。
「あのさ」
「何かな」
「アンタたちって人間嫌いなんでしょ?」
そう尋ねると黒い塊はちょっと困惑したようだった。
「・・・そう、だね」
「じゃあ何で私を殺さないの?アンタたちが嫌いな人間なのに。・・・あ、分かった。嬲り殺しにするつもりか」
痛いのは嫌だなぁ、とつぶやく。
「逆に聞きたいけど、何で死にたいの?そんなに・・・つらいことがあったの?」
「さっきも言ったけど人間嫌いだから。滅ぼしたいから。人間関係拗らせすぎてラック値マイナスぶっちぎってるの。人型生物見るだけで吐きそう気持ち悪い」
人間が差し出した手は全て罠と思え。26年で学んだ私のモットーである。
こいつらは神様らしいが人型だ。罠を張らないとも限らない。信用してはいけない。
満ちた重苦しい空気が政府支給の端末が音を立てたことで吹き飛ぶ。
「はい、もしもし・・・え?本当ですか?やった!いえいえ報告ありがとうございます」
電話を切ってッシャオルアァ!とガッツポーズをとる。
今日はなんて良い日なんだ!
「えーと・・・何が、あったの?」
「私が前に居た会社なんだけど、私の事人身御供にしやがってね。去り際に呪いかけてやるって言ったら経営傾いたって!やったね!!言霊って本当にあるんだなぁ。ああ、早く死んでみんなに呪いをかけてやりたい」
ニコニコ笑顔でおにぎりを量産する私。死んだ目をする黒い塊。今日くらいは多めに食べたっていいだろう。
困惑した黒い塊を置いて私は厨房を後にした。

―――

■ブラック本丸にて:五虎退の場合

今日も今日とて暇なので庭の草むしりを開始する。
どっからか視線は感じているので監視はされてるんだろう。そんなことしてる暇があるなら殺せばいいのによう。
「・・・ん?」
白くてふわふわした・・・何かが居た。
「猫?・・・いや、違う子虎だ」
やっだ虎なんて居たんだ!めちゃくちゃかわいい!しかし怪我をしている。
「お前怪我してるの?大丈夫?」
井戸水で濡らした手拭いでそっと拭いてやる。
「なんだなんだ、可愛いじゃないの」
しかし怪我は痛々しい。審神者通販は頼めばすぐ届くのでパッとモンプチ。
「ほらお食べー」
小さい皿に移してやると子虎はすんすんと匂いを嗅いでいたが直ぐにがっつくように食べ始め・・・増えた。
合計五匹になった。
モンプチ追加購入し、5匹の子虎と戯れる。食べ終わったところで残り四匹の汚れも拭いてやる。
何だこのふわふわパラダイス。
「と、虎さーん。どこですかー?」
「ん?」
何でこんなところで子供の声がするんだ?
声がした方を見たら白い髪の子供と目が合った。
「あ・・・」
「ちょっとアンタ!何でそんな怪我だらけなのよ!」

これはいただけない。

いくら人類抹殺したいと思っていても、子供の怪我は放っておけない。
「え、あ、僕らは短刀なので・・・役に立たないからって・・・手入れとかしてもらえなくて・・・」
白い子はそういうとあ、虎さん!と五匹の虎を見て目を輝かせる。
「よし、手入れするわよ」
「え・・・?」
「手入れ。ああ、いくら人型生物嫌いとは言え子供の怪我なんて見てられないわ!行くわよ!」
肩に俵担ぎをして手入れ部屋へ直行する。
打ち粉とやらでポンポンすると白い子の怪我が消えていく。
「他に子供はいるの?」
「あの、僕たちこれでも子供じゃ・・・」
「いいから、怪我した子は?」
「・・・他にもいます」
今にも泣きそうな顔で白い子が言う。やだ、ちょっと問い詰めすぎたかしら。
何か子供の怪我って自分の子供のころ思い出すからいやなのよね。
「じゃあその子たちも手入れするから連れてきて」
「・・・いいんですか?」
白い子は今度はびっくりした顔になる。いやまぁ確かに殺せ殺せ言ってたのがいきなり手入れするって言いだしたらびっくりするよね。
「・・・アンタたちみたいな子供の怪我は見たくないの、個人的に治させろって言ってるのよ」
分かりました、と白い子と虎たちが駆けていきぞろぞろとやってくる子供たち。
ほんっと人間ってクソみたいな生物ね。
短刀、と呼ばれる種族?種類?の子供たちの手入れが終わるころにはもう日も傾いている。
「さ、後は好きにしていいわよ」
訳分からないぞこの人間という顔をしている子たちの視線を背後に感じながら手入れ部屋を出ていこうとする・・・が誰かに服の裾を掴まれる。
「あ、あの」
白い子だ。
「何?」
「ありがとう、ございました。何か、お礼・・・を・・・」
しかしその手はガクガクと震えている。・・・きっとこの子たちは酷いことをされたんだろう。
「じゃあ今度その虎たちと遊ばせてもらっていい?・・・私人間は嫌いだけどそれ以外の生き物は好きなの」
はい!と白い子が笑った。


短刀達とは何とかやっていけるかもしれないと少し死ぬの延長しようかと思ったら青いのと黒い塊が膝から崩れ落ちてた。何だアレ、やっぱりイケメン怖いわー。人型生物怖いわー。
あ、そういえば私が元居た会社は私が出て行って2週間でもう崖っぷちらしいよ!やったね!





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