終業のチャイムが鳴る。
咲は教科書や筆記用具を鞄にしまっていく。
(どうしようかな)
窓の外を見ると、また雪がちらつき始めている。
「ね、星水さん!」
「あ・・・はい」
慌てて振り返ると、クラスメイトの女子が机の所に駆け寄ってくる所だった。
「今からマックに行って勉強会しようって話になってるんだけど、星水さんもどう?」
「えっ・・・。あ、あの、」

いいんですか?

そう続けようとした所で別の女子が彼女をつつく。
「ダメだよ。星水さんはほら・・・」
そういって窓から校庭を見下ろす。
「あ・・・そっか。ごめんね?」
送迎の車が見える。立っているのはどうやら郷田のようだった。
「あ・・・いえ。その、誘ってくれたことは嬉しいので・・・謝らないで、ください」
段々と語尾がしぼんでいく。誘ってもらえたことが嬉しかっただけに余計に惨めな気持ちになる。
泣きたくなるのを必死にこらえ、笑顔を作る。
「勉強頑張ってください。また明日」
鞄を手に取ると、咲は逃げるように走り出す。
もう1秒もあそこに居たくなかった。

気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。

門まで走っていくと、郷田が車のドアを開ける。
「総理がお呼びですよ」
「・・・はい」
感情を飲み込んで笑顔を作る。
車に飲み込み、沈黙が訪れたとき、咲はようやく安心したように息を吐いた。

見慣れた道を車が走っていく。そのまま総理官邸に着くと、郷田は頭を下げて咲を見送る。
彼に会釈し、重い足取りのまま父親の所へ向かう。
「お父さん。用事って何?」
「昨日千里さんの所に行ってくれただろう?千里さんの様子はどうだった?」
申し訳なさそうに笑う父親を見て、一瞬だけ迷う。
それから、今日何度目かになる作り笑いをすると
「調子良いって言ってたよ」
そう返す。
「そうか、よかった」
ほっとしたような表情になる浩樹を見ると、罪悪感が沸いてくるがそれすら飲み込む。
「咲、今日の夜は時間が空いてるんだ。咲が良ければ一緒に食事はどうだ?」
「・・・いいの?」
もちろんだろう、と笑う浩樹を見てようやく咲の顔に作ったものではない笑顔が浮かぶ。
「じゃあお言葉に甘えて」
「親子なんだから遠慮なんてしなくていいんだ」

(でもわたしは嘘を吐いてばかりだもの)

嬉しそうな顔をする父親に着いていきながらぼんやりと考え事をする。

(・・・桂木さん、居ないのかな)




―――
この連載と本編の大きな違いは桂木さんの感情
公式本編だと最初から好きだったって言ってたけどこの話はまるっきり「警護対象」としか見てないですからね
・・・いや、未成年相手に最初から好きだとか言われたら流石にアレですしね。
主人公はぼんやりと桂木さんが気にかかっているようです




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