「咲さん!」

透さんはいつも、ぎゅっとわたしの手を握る。
「透さん、こんにちは」
今は大丈夫なんですか?と尋ねると透さんはいつものように笑いながら大丈夫ですよ・・・と言いかけて

「お前は何をしているんだ」

石神さんに睨まれてパッとわたしの手を離す。
「何って挨拶ですよ。折角咲さんに会えたのに!」
怒っている石神さんと、怒られている透さんをみて思わず苦笑する。
「石神さんのせいで咲さんに笑われちゃったじゃないですか」
「お前がふざけているせいだろう」
一時はどうなることかと思ったけど、透さんも無事公安に戻れたしよかったなぁ。
「あっ。お仕事中ですよね。ごめんなさい」
石神さんも一緒だし、きっと何かお仕事の途中なんだと思う。
「いいえ、一段落したところですが・・・」
石神さんはちらりと透さんを見た・・・と思ったら一つため息を吐く。
「黒澤。咲さんを駅まで送って」

「分かりました!行きましょう咲さん!」

石神さんの言葉が終わらないうちに透さんはわたしの手を取って走り出した。
「え?ちょっと・・・。あ、石神さん失礼します!」
後ろを向くと石神さんが苦笑しているのが見える。
「ここまでくれば邪魔者は居ませんね」
邪魔者って・・・。
透さんは私の手を握ったまま歩き続ける。

歩きながら透さんは色んな話をしてくれる。
・・・でも石神さんの陰陽師の悪口はバレてるから止めた方がいいんじゃないかな。

「でも」
透さんがちらりとつないだ手に視線を向ける。
「こうしてると普通の恋人!って感じですよね」
「ふふ、そうですね」
それが無性に嬉しくて、繋いだ手に少しだけ力を込めると、透さんも強く握り返してくれる。

でも、楽しい時間はあっという間で。
「咲さん、またメールしますね」
もう駅に着いてしまって少しだけ寂しくなる。
二度と会えなくなるわけじゃない。
メールをすれば返事が返ってくるし、電話をすれば声が聞ける。

でも、少しだけ寂しい。

離れた手を見てちょっとだけ寂しい気分になる。
「咲さん」
ぎゅっと、透さんが手を握る。
「・・・?」
「大丈夫ですよ」

寂しさを見透かされていて、少し気恥ずかしくなる。
「オレはもう何処にも行きませんから」
「・・・そうですね」
繋がれた手を見下ろす。
もう一度、ぎゅっと強く握る。
「今度休みが取れたらまた何処かに行きましょう」
「はい、楽しみにしてます」

透さんは優しくわたしの手を撫でてから離す。

何だか意味深な笑みを浮かべてから、
「学校頑張ってきてくださいね」
と言う。

透さんのが撫でた手の甲を指先で撫でて私は頷いた。




Marking
(俺のっていう印です)



―――
黒澤本編スパエン記念
黒澤が可愛すぎて禿げる



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