*黒澤の過去ねつ造
*やっぱり病んでる




















(欲しい)

最初にそう思ったのはいつだっただろうか。
思い出そうとして、記憶がおぼろげになっていることに気付く。
【彼女】が他の人と居るのを見ると酷く不快になる。



(欲しいなあ)

次にそう思ったのは【彼女】が自分に笑いかけた時だった。
今まで向けられたことのない悪意が一切ない笑顔がただただ眩しく見えたことを覚えている。



「黒澤さん、大丈夫ですか?」

(俺のものにしたい)

そうはっきり思ったのは【彼女】が自分に触れたときだった。
手の傷を見て自分のことのように悲しそうな顔をするのが不思議でならなかった。

「これで大丈夫です!でも後でちゃんと消毒してくださいね」
傷を覆う真っ白なハンカチを見下ろす。
胸の奥がざわつくような感覚。
「咲さんすいません。折角の綺麗なハンカチなのに」
俺なんかのために、という言葉は飲み込む。
目の前の女性はそういう言葉を嫌う人だ。そんな事を言えばきっと咲は悲しい顔をする。

(そんな顔は、咲さんには似合わない)

「何言ってるんですか。ハンカチなんてまた買えばいいんですから」

その瞬間に、胸の内に毒が広がっていく。

「そんなことより傷の方が心配ですよ」
「咲さんって心配性ですよね。俺も一応公安の端くれですよ?」

じわじわと染み出すそれが思考回路を端から徐々に喰らっていく。

「そうですけど・・・でも、それとこれとは話は別です」
咲がふわりと微笑むのを見て、瞬間的な衝動がわき上がる。
それを飲み込んで黒澤はいつもの笑みを浮かべる。
「今度何かお詫びします」
物事には対価が必要で、黒澤にとってそれは当たり前だった。
他人との付き合い方はギブアンドテイク。貸し借りの利害関係でしか成り立たない。
「何言ってるんですか」
けれど、それを壊すように優しさという毒が微笑む。
「お礼なんて要らないですよ。気にしないでください」

猛毒が回りきって指先がしびれる。

まずはどうしようか。

(俺から逃げられないようにしないと)

「ありがとうございます、咲さん」






優しさは最愛の凶器。
(絶対に逃がしたりなんてしませんからね)
(最初に俺を毒したのは貴女なんですから)



―――
ヤンデレ黒澤誕生の話((
個人的に黒澤はヤンデレになっても理性的であってほしい。
ただしその理性はヒロインを自分の側に置いておくためだけに発揮されてほしい。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -