「何だ、今日はやたら機嫌良いんだな」
「あ、海司。お疲れ様ー」
SPルームに戻ってきた海司を出迎えた咲はにこりと微笑む。
「何だ、その本」
「お菓子の本だよ!挑戦してみようと思って」
【誰でも出来る!簡単お菓子作り】というタイトルの本を海司に見せる。
開いていたページに載っていた内容がプリンだというのは若干、いやかなり気になるがツッコみは入れない。
「・・・喜んでもらえるかな」
ポツリ、と呟いた咲の声が少し弾んでいるのに、色々と複雑な気分になる。
「で、今日は何の用事だよ」
「スケジュールの確認だよ。桂木さんが来るのを待ってたの」
本を閉じ鞄の中に仕舞いながら咲は言う。
「班長ならもう少しでくると思うぜ」
「そっか。海司はもうお休み?」
あぁ、とパイプイスに座る。
と、その時咲のケータイがメールの着信を告げる。
「あっ・・・」
一瞬にして、咲の顔が輝く。
嬉しそうな顔のままメールを打ち、そして少しすると返事が返ってくる。
石神か?そう尋ねようとした時、丁度桂木がSPルームに入ってきてそこで会話が終わってしまう。

「・・・と言う予定になっていますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
これからの予定を確認し終えた咲は頷いてからメモ帳を鞄に仕舞う。
「それじゃあ、この後は予定があるので失礼します」
「そうでしたか。待たせてしまい申し訳ありませんでした」
「いえ、お忙しいのは分かってますから気にしないでください」
それからペコリと頭を下げSPルームを後にする。
小走りで廊下を走り、指定された場所へ向かう。
「石神さん!」
パッと顔を輝かせ、咲は石神に走り寄る。
「行き成り呼び出してしまい申し訳ありません」
「いえ!私も来てたので丁度よかったです」
いつもと同じ無愛想な顔に見えるが、口元は優しく笑っている。
「あのですね!わたし、石神さんの誕生日が明日だって教えてもらったんです!」
ピクリ、と眉が動く。
「誰にですか・・・と言いたい所ですが、黒澤ですね?」
「・・・う」
内緒だと言われていたのに早速バレてしまった。
「まぁいいでしょう」
「黒澤さんは悪くないです・・・わたしが無理に聞いたから・・・」
しゅんと肩を落としているとぽんぽんと頭を撫でられ、恐る恐る上を見る。
「怒ってませんよ」
「ホントですか?」
えぇ、と苦笑されてようやく咲は顔を上げる。
「わたし!頑張りますからね!」
「何をする気なんですか」
「秘密です!」
子供のように笑う咲に、楽しみにしていますよ、と石神も微笑を浮かべる。

以前黒澤が春風のようだ、と言ったのは間違っていないと今更ながらに思う。

9月にもなって春風、と言うのもどうかとは思うが。

「石神さん、この後はお仕事ですよね?無理しちゃダメですよ?」
「有り難うございます。咲さん、気をつけて帰ってくださいね。いくら何でも食べ物に釣られる、何てことはないでしょうが」
「もう!石神さんってば!」
すいません、と石神が笑う。
去っていく石神の背を見つめながら咲はふふっと笑う。
踵を返し、咲も帰路につく。
(帰りに材料買って、頑張るんだ・・・!)





―――
石神さんバースデー前日話
石神さんに優しくされたいです




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