1.彼女と蜻蛉が出会ったとき

審神者になって早三ヶ月。
覚える事が多すぎる上に色々と勝手が違う事ばかりで私は気が滅入り始めていた。
こんな時に兄貴に連絡を取れば・・・とも思ったら「何やってんのお前wwwwww」と審神者掲示板風に言えば草を生やされるのが見え見えなのもあって1人部屋でふさぎ込んでいた。
大抵そんな風にしているときは今君や乱ちゃんが私を外に引きずり出すのだがその2人も今は遠征中で本丸にはいない。
まだまだ人手が足りないこの本丸。
いち君や岩ちゃんは実は中々出てこないレアらしいという情報もあったが成り立てほやほやでバタバタしてた私としては「ああ、そうなの」程度のものだった。
岩ちゃんは普通に腹筋触らせてくれた。いい筋肉だった。二の腕も堪能しておいた。有り難うございます。
女の子なら・・・まあ、イケメンは嫌いではないだろう、多分。
ただ好みというものはある。
私は線が細い美少年系よりは筋肉質でがっちりした人の方が好みだ。
初期刀にむっちゃんを選んだ理由? 胸筋ですが何か?

「そうだ、鍛刀しよう」

どこぞのCMのように言って立ち上がる。
今日の近侍はみつ君だ。
「みつ君よ、資材も余裕が出てきたので久しぶりに鍛刀しようと思う」
「本当?じゃあやろうか」
みつ君も久しぶりの鍛刀とあって嬉しそうだ(後私が半日ぶりにようやっと部屋から出てきたからでもあると思うが)。
この人本当に男だよね?お母さん属性とかじゃないよね?とか偶に思う事はあるが戦歴はとてもよろしいので男でいいと思う。
いや・・・男(オカン)か。

「資材配分どうしようかなー」

脳みそが回っていない状態で資材を選んで、鍛冶妖精さんに渡す。
後ろで「主大丈夫!?ねえ!聞いてる!?」というオカンの声が聞こえてきたようなきてないような。

「「3時間・・・」」

思わず声が重なる。
「どうする、主。手伝い札使う?後いい加減適当に資材突っ込むの止めようね」
「んー、そうしようか。大分余ってるし。申し訳ない、今全然頭が回ってないんだ」
手伝い札を妖精さんに渡すとあっという間に鍛刀が終わる。
「槍?うわ、重い・・・」
「槍、か。今この本丸には居ないから戦力としても丁度いいんじゃないかな。それから毎回言ってるけど出来上がった刀剣を持つの止めてね?危ないから」
ういっす、と気のない返事をしてゆっくりと槍を元の位置に戻す。
マジでオカンだこの男。私実の母親にもここまで心配されたことないよ?あの人完全に放任主義だからね。
悪いことしたり喧嘩がヒートアップした時はぶん殴られたけど。
「この槍の名は『蜻蛉切』ですね、主様」
こんのすけの言葉に私は頷いてその槍に手を当てる。
蜻蛉切の名を呼び、霊力を注ぐ・・・そうすることで彼らは人の体を得て顕現する事が出来る。

「ただ今馳せ参じました。蜻蛉切と申します。いつでも出陣の準備は出来ております」

身長は2m近くあるだろうか。私は平均身長並なので物凄く見上げる形になる。
身長と同じかそれよりも長い槍を軽々と持って微笑む男。
目が合った瞬間、どくんと心臓が跳ねた、気がした。
ガシャン、と手に持っていた端末を床に落とす。
「え、ちょ、主大丈夫!?」
みつ君が私の肩を叩く。
「いかがされましたか?主殿、お体の調子が優れないのでしょうか?」
「あ・・・いや、大丈夫」
かがみ込んで目を合わせられると凄く・・・居心地が悪い。さっきから妙に心臓が煩いし、目が合わせられない。
「初めまして。私がここの本丸で審神者をやっているものです。まだ審神者になって三ヶ月しか経っていないので手際の悪さもあると思いますがよろしくお願いします」
端末を拾ってそう挨拶をするとみつ君が僕らの時そんなに丁寧じゃなかったよねとぼやいた。
うるさい黙っとけセルフ視力検査。
「はい、こちらこそ人の世に顕現したばかりでなにとぞご迷惑をかけることと思いますがよろしくお願いします」

彼が穏やかに笑った瞬間、私は叫んでいた。

「私と・・・私と結婚してください!!」


今思えばアレが一目惚れで、初恋だったんだと思う。
それから3ヶ月毎日毎日プロポーズをし続けて、報われる事になることを私はまだ知らない。


2.セクハラ事件

彼らの主は色んな所で男前、というよりは性差というものをあまり理解してない人物だった。
風呂上がりに薄着でうろつき乱と次郎、燭台切に説教をされたり。
人様のエロ本談義に何故か混ざってやっぱり燭台切に説教されたり。
家族構成は父、母、長男、次男、三男、四男、彼女・・・の末っ子長女。
とは言え甘やかされたわけでもなく両親は割と「悪い事しなければオッケー」という放任主義だったらしく、彼女は兄四人と仲むつまじくケンカしながら日々逞しく成長していった。

その結果がこれだ。

短刀たちに対してはまるで弟を可愛がるかのように接しているし、打刀は同年代に近い見た目だからか友人のように接している。太刀は彼女より少し年上くらいだからか燭台切は日々ハラハラしていた。
もう一つ彼女の問題はあった。
それは性癖とも言うべき彼女の好みだった。
・・・好みだけなら問題ない。ただ、彼女は行動力に溢れすぎていた。
陸奥守はもう腹筋を触られる事は諦めた。言っても無駄だと思ったからだ。
岩融は普通に触らせていた。というか面白がっていた。
山伏も面白がっていた。審神者が刺青を怖がらなかったどころか面白がっていたことに笑ってすらいた。山姥切が「ダメだコイツ」という顔になったのは記憶に新しい。
さて問題は最近新しくやってきた太刀だった。
名を同田貫正国。
顔に傷がある強面の男だが審神者は何も気にしてないかった。所か彼女のストライクゾーン(体系的な意味で)だった。
やってきたその日から、彼はセクハラに悩まされる事になった。
見目麗しく、頭が悪いわけでもない彼女の指示は的確だ。
そこは主として認めるべき点だ。武器として使われる事に抵抗もない。

ただ女としてそれはどうなんだ、と。

「やっほー、たぬ君!腹筋とは言わないから二の腕触らせて!」

とりあえずたぬ君呼びとセクハラ発言が頭に来たので殴っておいた。
それ以降呼び方だけは同田貫になったもののセクハラは相変わらずだ。
ある日内番仕事を任されたときの事だった。
相変わらず審神者は部屋着で庭をうろついている。
思わず逃走体勢を取るが、意に反して彼女は「あ、お疲れ様!」と手を上げただけだった。
「わー、美味しそうな野菜。今日の夕飯楽しみだね」
「っつーか何で武器に畑仕事頼ませてんだよ」
彼は武器だ。武器とは戦に使われ、そして人を殺す為のもの。
こんなところでジャージを着て畑を耕す為に存在しているわけではない。
更に愚痴をこぼそうとしたところで、審神者の視線が自分の目を向いていない事に気付いた。
そしてぞっとした。

「ふっきn」

全て言い終える前に、というより言葉を紡ぎ始めた瞬間野菜籠を地面に置いて走り出した。機動バグここに降臨。
しかし彼女は速い。兄弟喧嘩と学生時代の黒歴史により鍛えられた脚力は機動オバケと称されている長谷部並だった。
「待って!」
審神者が同田貫の腕を掴む。
「そうだよね・・・一方的じゃ悪いよね・・・」
「あ?わかりゃいいんだよ・・・一方的?」
何を言ってるんだコイツ、という空気になる。


「腹筋触らせて貰う代わりに胸揉んで良いから!」


容赦なく頭をぶん殴った。
何を言ってるんだコイツは、思うだけじゃなく、思わず口から言葉が漏れた。
「いや・・・私が触らせて貰うだけじゃ対価的に成り立たないかと思って・・・」
頭を摩りながら審神者が言う。結構力強く殴ったつもりだったが無意識に力を抜いてしまったのか、はたまた彼女が頑丈なのか。
「っつーか女がそんな事言うんじゃねえよ!」
「大丈夫だよ!胸なんて所詮脂肪のかたまr」

もう一発殴っておいた。

そこで同田貫は学習した。
コイツが変な発言をしたら、容赦なく殴ろうと。


3.彼の夜

彼の主は非常に見目麗しい女性だ。
少し茶色がかった黒髪に黒い瞳。整った顔立ちは黙って入ればまるで人形のようだった。
・・・そう、黙っていれば。
その美しい見た目に反して彼女はとても行動力に溢れていた。
審神者としての書類仕事だけではなく炊事や掃除などの雑務。
それどころか刀剣たちの内番仕事である畑仕事に紛れ込んで「やったことないから楽しい」と言い出す始末。
自ら刀剣たちと関わる事を選び、半年という短い間で彼女は今居る刀剣たちとの距離を縮めていった。

『私と結婚してください!!』

出会い頭だった。
顔を真っ赤にした彼女から、何故か初対面で求婚を受けた。
その後何故か毎日のように求婚され、それを聞かなかった事にしたりたしなめたり。
それが日課のようになっていた。
彼女は審神者という職に就いている人間で、彼は武器に宿る付喪神。
何もかもが正反対の存在なのだ。
彼女は審神者になってまだ三ヶ月だという。
特殊な環境下できっと疲れているのだろう。
何かの気の迷いなのだろう。
日課になったプロポーズと彼女の笑顔から目を逸らし、蜻蛉切はそう思って、自分の中に生まれ始めた感情に蓋をし始めた。

その頃から、度々同じ夢を見る事があった。
それまでも武器だった頃、かつての主に使われていた頃の夢を浅い意識の中で見た事はあった。
しかしそれとは違う生々しくもおぞましい夢。酷く浅ましくそして醜いとしか言いようのない夢だった。
敬愛すべき主を床に引き倒し、服を裂き、無理矢理に犯していく下卑た夢。
彼女は涙を浮かべて必死に抵抗する。いやだ、やめてと悲鳴をあげる。
しかも、夢の中の自分は下劣ともいえる行為を無理矢理にしていきながら笑っているのだ。
耳に残って仕方のない悲鳴も夢の中では心地が良いと感じている。
それが、非常に恐ろしかった。

「蜻蛉切」

そんな夢も何度か続いてくるときが滅入ってくるものだ。
近侍である以上主である彼女の側に居なければ成らない。
「は、何でしょうか。主殿」
出来る限りあの下卑た夢を隠して彼は笑う。
「今日近侍外れて。そんで手入れ部屋行きなさい」
いつもなら笑っているはずの彼女は、笑みを浮かべては居なかった。
「いえ、怪我は負っていませんが・・・」
しかし彼女の表情は変わらない。
「・・・・・・分かった。怪我してないっていうのは信じる。でも今日は休んで。疲れた顔してるよ」
わかりました、と返事をするとようやく彼女はいつもの笑みをその美しい顔に浮かべる。
「よかった。何か最近疲れてるように見えたから心配してたの」
パッと彼女は駆け出すと燭台切を呼んで彼を近侍に据える。
「蜻蛉切、大丈夫?」
「ええ、申し訳ない。燭台切殿」
そう言えば燭台切は軽い笑い声を上げる。
「気にしないでよ。主、ずっと君が疲れた顔してるーって心配してたからさ、今日くらいはゆっくり休んでよ」
既に姿が見えなくなっている主を燭台切は目で追う。
「・・・あの方はいつもああなのか?」
「ん?主は僕らの事をよく見てくれる人だと思うよ。怪我負おうものなら全速力の彼女に捕まるからね」
その時は大人しく手入れ部屋に入った方が良いよ、と燭台切は笑う。
主は等しく刀剣たちを愛しているのだと燭台切は言う。
それを聞いてあのような下卑た夢を見た事を恥ずかしく思う。

それから数日後、蜻蛉切が近侍に戻った日の事だった。
真夜中の事だ。
空気が一瞬で緊張を孕んだ物へと変化する。
嫌な予感に彼は本体である槍を取り部屋を飛び出す。
同室の御手杵が目を覚ましたような気もしたが違和感を感じる方へ駆けていく。
「主殿・・・!それにあれは・・・」
歴史修正主義者が夜襲をかけてきたらしい。それから逃げ出した彼女が全力で逃げている。
慌てて彼女を抱き留めると恐怖故か彼女の体が震えた。
そして蜻蛉切だということを確認すると震えた声で彼の名前を呼ぶ。
彼女を背に庇い敵襲を知らせれば夜警当番の長谷部が駆け足でやってきて敵の一人を真っ二つにする。
迅速な対応で敵を殲滅させることが出来、ようやく空気が元の平和な本丸のものへと戻っていく。

ただ1つ問題があるとすれば、彼女自らが飛び出して歴史修正主義者を消滅させたことだろうか。
愛されてんだね、とまるで他人事のように言った彼女。
彼女が愛したからこそ、彼らもそれに応えようとする。
ただそれだけの事なのだ。

「すきよ」

その言葉を、彼は聞かなかった事にした。
今までのように明るい様子で言われた言葉ではない。夢うつつで放たれたその言葉はやがて熱になる。
その感情を人の言葉で何というのか、理解してしまった事が辛い。
「それ以上は、いけませんよ。・・・主殿」

返事の返ってこない部屋へ向かって、彼は小さく呟いた。


4.月の言葉

やってしまった。
岩融はニヤリと笑い、同田貫と太郎には憐憫の眼差しを向けられた。
人は、それを『嫉妬』と呼ぶ。
審神者は初期刀の陸奥守や同田貫へのセクハラは多いが蜻蛉切にはそれがほとんどない。
それも・・・今の冷ややかな対応へ繋がってしまった。
「ま、頑張れや」
同田貫が肩を叩くのがとても居たたまれなかった。
その夜やってきたのが審神者からの『何か欲しい物やして欲しいことは無いか』という発言。
どうやらその前にも飲んでいたのか、審神者の頬はほんのりと赤く染まっている。
その言葉に遠征の時に土産として甘味を渡したいと伝えると審神者はパッと顔を明るくさせ、お酒も取ってくると駆け出していく。
深い溜息を吐く。

以前風呂で加州清光と鉢合わせしたときもそうだが、審神者には絶対的に危機感が足りていない。
自覚をしてしまえば部屋で2人きりという状況がどれだけ拷問のようなものなのか。
生殺し以外の何物でもないが、彼女は主で彼は臣下。
彼女は人間で、彼は付喪神。
2人の間にある壁は高く険しい。
「何だ、入ってればよかったのに」
やはり危機感が足りていない。先日のやりとりもすっかり忘れているようだ。
2人きりで月を眺めながら団子をかじる。
酒が進んできたのか審神者がうつらうつらとし始める。
蜻蛉切が寝た方がいいと言ってもだだっ子のように足をばたばたさせる始末。
彼は苦笑を浮かべると

「・・・それでしたら、また、お付き合いいただけますか?」

そう、ゆっくりと審神者に告げる。
審神者の嬉しそうに笑う顔が嬉しい。そして、愛おしいと、そう思ってしまった。
あやすようにゆっくりと頭を撫でる。
すぅ、という審神者の寝息だけが室内に響く。

「貴女は分かっていない」

審神者のさらさらとした髪を撫でながら彼は独りごちる。
付喪神と言えど男の姿をとっている彼らも劣情は持つ。
審神者に対し抱いてしまった気持ちを思うと、彼女を隠してしまえたらとすら思ってしまう。
「貴女はいつも、自分を優しい人だと仰る。・・・自分は、優しい人などではありません」
夢とは言え主を犯し、あまつさえそれを受け入れてしまう自分がいるのだ。
そんな男が優しいなどとは到底言えないだろう。
畳で寝込んでしまった審神者を抱き上げて布団に寝かしつける。

夢を現実にしてしまえ、と囁く何かを振り払って彼は立ち上がって部屋を後にした。


5.風呂場の話

「「あ・・・」」

ここは本丸に一つしかない大浴場の脱衣所。
とある男と女の声が重なる。

男はこれから風呂に入るつもりなのか上半身裸。下脱いでなくてよかったね!
女は仕事着が泥らだけなのでそれを落としに来たのだろう。顔にも泥がついている。

「ギネちゃんってさ」
「え、何」
「結構いい筋肉してるよね」

女が言った瞬間、男は叫んだ。
あっという間に刀剣たちに囲まれて正座をさせられる女はこの本丸の主である審神者。
上半身見られた男は御手杵。しくしく泣きながら顔を覆って部屋の隅で体育座りしている。
薬研が「ドンマイ」と言わんばかりの表情で彼の肩をたたいている。

説教の内容は「女の子なんだからもうちょっと自覚しなさい」という本丸始まって以来何度目かも数えるのも面倒になる議題だ。
一回反省しても次の日には忘れているから性質が悪い。

「もういっそ鍵でもつけたらいいんじゃないかな」

乱の独り言にすかさず「それだ!!」という空気になる。
すぐにこんのすけが呼ばれ設備の増築の話になる。
審神者はというと「わざとじゃないのにぃ」と口をとがらせているのでお母さん(燭台切)が雷を落としておいた。

男女問わず風呂に入るときは必ず鍵をかけること。

本丸にまた一つ約束事ができた日だった。
(ちなみにめそめそしていた御手杵には審神者が「そんなんじゃ脱童貞できないぞ☆」などと発言して更にオカンに雷を落とされていた)


6.女の子とたわむれたい

「女の子が足りない」
審神者になって二か月。
圧倒的に女の子が足りていない。
短刀達はある程度集まり、太刀もやってきてくれた。奇跡的にレア太刀と呼ばれる一期一振もやってきた。
しかし審神者とて女の子(という年齢も若干過ぎた感はあるが)。たまには女の子と遊びたいことだってある。
女子会したいんだよ女子会、という気持ちでいっぱいだった。
「ってわけで乱ちゃんを近侍にして女子会してきます」
「今日は僕が主を独り占めー」
そう言って抱き合う二人は完全に女子だ、見た目は。
片方はセクハラ娘、片方は男の娘だけれど。
本日の本丸業務はお休み!みんなも休め!と審神者が若干錯乱気味に叫んだため急な休みだ。
確かに若い娘がいきなりこんなところに放り込まれて休みもなしに戦い続けろというのも酷な話だ。
そんな事情も理解できるので燭台切は何か労わりのための料理を作ろうと厨へ向かう。
一期はお茶を二人分汲んで審神者の部屋へ向かう。

『女子会すんぞー!』
『おー!』

と主と弟が大はしゃぎしていたのでお茶くらいは、と思ったのだ。
「主、失礼いたします。お茶をお入れしました」
入っていいよーと部屋の主から許可が入ったので障子をあける。

「・・・何をしているんですか、主」
「見て分からないかいち君、膝枕だ」

乱が審神者を膝枕していた。
何の光景だこれは。落としかけたお盆を持ち直す。
「10分交代で膝枕し合ってるの。いち兄、主の膝ね、すっごく柔らかかかった!」

うん、その情報は今は要らなかったかな。

机に湯呑を二人分置いておく。
このまま放置しておいてもいいのだろうか、これ。
確かに乱は見た目は愛らしい女の子だ。しかし男だ。
「あー・・・なんかこのままだと寝そうで怖い・・・」
しかも審神者ときたら若干うつらうつらし始めてる。
「眠いなら寝ちゃってもいいよ☆」
「じゃあお言葉に甘えて・・・」

「お休みでしたら布団に入ってください」

流石にツッコんだ。というよりこの状況に耐えきれなかった。
いくら乱の見た目が女の子だからと言って男女が同室で寝るべきではないだろう。
「んー、分かった。起きる。よっしゃ、いち君も一緒にトランプやろうぜ!」

結局女子会(という名の短刀達とのトランプ大会)になっただけだが審神者が楽しそうなので何も言わないでおく心優しい一期だった。



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