「ケーキ作ったんですけど食べますか?」

ある昼下がりの食堂で、ニコリと笑みを浮かべた咲が言う。
「ケーキ!?いいのか?」
それに答えたのは彼女の恋人である佑。
嬉しそうな顔で一人分に切られたケーキの乗った皿を受け取る。
咲は食堂のテーブルに両肘をつき、手のひらに顎を乗せるような形で足をぶらぶらさせながら美味しそうにケーキを食べる佑を眺める。
「・・・いつも思いますけど、本当に美味しそうに食べますよね」
そう言ってから咲はフォークを手に取り、弄ぶ。
「そりゃ、咲が作るのは美味しいからなー」
「そうですか、それは良かったです」
先ほどと同じく笑みを浮かべると、自分用に切ったケーキにフォークを刺す。一口分を切って口に運ぶと程よい甘さが広がる。

「・・・で、もしかして何かいいことでもあったのか?」

唐突にそう尋ねられ、咲は首を傾げる。
「特に変わった面白いことはありませんでしたが?」
「でも、咲がケーキ作るのっていいことがあったときだけだろ?」
その言葉に、胸の奥が暖かくなるような感じがして思わず口元に笑みが浮かぶ。
行動を理解してくれているという事がとても『嬉しい』。

「『誕生日じゃない日』、もしくは『何でもない日』」

そう言ってケーキを口にする。
「何だそれ」
本気で分からないらしい。
ポカンとした表情を浮かべる佑を見て咲はクスクスと笑う。
「知りませんか?不思議の国のアリス」
イカレ帽子屋と三月ウサギ。

「ただ、何となく・・・『何でもない日』を祝ってみたかったんです」

毎日同じように流れている時間の中で、少しだけ違うことをしてみたかった。
好きを伝えること、抱きしめること、手をつなぐこと、キスをすること。
何気なくしていることが無性に愛おしくなった。
「佑、ありがとうございます。好きですよ」
目を閉じて囁くように言う。
伝えても伝えても、きっと自分の気持ちは伝えきれない。
無理に言葉にしようとすればそうするほどにゆがんでいくような気がして。
だからこそ、『ありがとう』と『好き』という2つの単語に気持ちを乗せようとする。

「咲!」
名前を呼ばれた瞬間に柔らかく暖かい熱が咲を包み込む。
抱きしめられたのだと気づいたのはたっぷり数十秒経ってからだ。
「こっちこそありがとうな」
「いいえ、どういたしまして」
至近距離で見つめ合い、ほとんど同じタイミングで微笑み合う。




【特別】を名付けて
(何でもない日はきっと特別)


―――
159000Hitのキリリクです
まゆたんこと茉侑さんへの捧げ物です。
佑夢で甘いのとのことだったんですけど難しいよ!佑難しい!好きなんだけど!
好きと書きやすいはきっと別問題なんだよね・・・orz

茉侑さんのみ保存転載可です。名前は好きに変えて転載してください



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