1人部屋のベッドでごろごろしながら、猫の形をした抱き枕を抱きしめる。
「クリスマスかー」
デートに誘われたのが嬉しくて顔が緩みっぱなしになる。
抱き枕に顔を押しつけてどうしようもなくにやけてしまう顔を隠す。

別にクリスマスがどうっていう訳じゃないけれど、啓一郎が考えていてくれたのが凄く嬉しい。

当日は2学期の最終日だし、さっさと寮に帰って準備をしよう。
時間もあんまりなさそうだし・・・。終業式とか長引かなければいいけど。

寮の奴らに「無駄に機嫌が良い」と言われて数日を過ごして、クリスマス当日。


「なんっでこうなった」


目の前の書類の山を見て盛大なため息を吐く。
冴島先生は私になんか恨みでもあるんだろうか。
頼むなら暇そうなのに頼んでよ。何で寄りによって私なの。
いや・・・恨み言言ってるくらいだったらとっとと運んで帰ろう。

書類の山を一束持とうとすると、途端に上から持ち去られる。

「・・・啓一郎」
「また冴島先生か?」

うん、と頷く。
「化学準備室まで運べって」
相変わらずだな、と苦笑したのが気配で分かる。

「白斗」
「ん」
「とっとと終わらせるか」
「そだね」

啓一郎と並んで廊下を歩き、書類を全部運び終えると、既に日が沈み始めている。

「じゃあ」

ため息を吐きそうになった私の手を啓一郎が取る。
「・・・行くか」
「え、でも・・・」
今から行って帰ってきたら確実に遅くなる。
・・・梅さん怒ると怖いよ!?

でも、


「・・・・・・いこっか」


帰ったら賑やかになっちゃうから。
クリスマスだし、今日くらい少し我が儘言ってもいいかな、って。
ぎゅっと手を少しだけ握ると、啓一郎は自分で言ったくせに驚いた顔をする。

(なんだろ)

何だか、胸の辺りがぎゅーっとする。
凄く言葉にしたいのにこの気持ちを表現できる言葉が見当たらなくて、私は啓一郎の腕にしがみつく。

「後で一緒に怒られようか」
「・・・確実に外出禁止出されるな」

後の事は後で考えればいいよ。
灰色の空から舞い降り始めた雪を眺めながら私はそう言う。





白と光に溺れよう




―――
去年が恋人前での話だったので今年は恋人設定で。
無自覚でいちゃついてればいいのに



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