「さっむ」

昼休みの教室、ぽつりと呟く。
まだ12月に入ったばかりなのに寒い。兎に角寒い。

この寒い中屋上に行く藤堂はある意味勇者だと思う。

小さいカイロだけじゃ体は温まらない。
鈍い痛みが寒さのせいで増した気がする。

「・・・大丈夫か?」

私が顔をしかめたのを見たのか、隣に居た啓一郎が箸を止める。

「ああ、ううん。何でもないから。ちょっと寒いだけ」

・・・生理痛、だなんて言えないし。
曖昧に笑って返す。
帰ったら大人しく寝ればいいか。

啓一郎は納得してないような顔をしたが、無理はするなよ?といつもみたいに心配してくれる。
頷いて、お箸を再度手に取る。
何でこう、学校は寒いんだ。
息吐いたら白くなりそうだもん。

思うように動いてくれない体に鞭打って何とか午後の授業も乗り切る。

人がまだらになった教室で鞄の中に荷物を詰めて、さっさと立ち上がる。

「さて、帰るか」

貧血まで出てるのか、立ち上がるとぐらりと視界が揺れる。
・・・幸いにも誰にもそれは気付かれていない。

(早く帰ろう)

鞄を手に持って歩き出す。
じわじわと浸食するような痛みが気持ち悪い。
はぁ、とため息を吐いて足を踏み出した瞬間に、また視界が揺れる。

「あ・・・」

踏み出した足が空を切る。
やばい、落ちる。
やけに冷静にそう思う。

(落ちたら痛いだろうなぁ)

むしろこんな状況だからか、のんきにそう、思って、ふいに誰かに腕を捕まれる。

「・・・啓一郎、ありがと」

歪んでよく見えない視界の中、お礼を言うけれど・・・背後からは何だか怒っているような気配がしてくる。

「白斗」
「・・・はい」

あ、怒ってるわこれ。
声がいつもより低い。
何を言われるのかと思っていると、ため息が聞こえてくる。

「今日一日、ずっと具合悪かったんだろ?頼むから、あんまり無理をするんじゃない」
「・・・・・・うん、ごめん。・・・今すっごい気持ち悪い」

気が抜けると一気に具合の悪さに襲われてくる。

「立てるか?」
「ん、大丈夫」

啓一郎は私の手を取って立ち上がらせてくれる。
帰るぞ、と言って私の手を引いて歩き始める。




その、小さな温かさ
(半歩後ろを歩きながら、繋いだ手に少しだけ力を込めてみたら、直ぐに握り替えしてくれた)






―――
生理痛が辛くてむしゃくしゃしてやった。
冬場は更に辛い・・・。
隠してても啓一郎なら具合悪いの分かってくれるって信じてる。



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